青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

バカリズム×オークラ『住住』

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バカリズムとオークラが脚本を手掛け、バカリズム、オードリー若林正恭二階堂ふみの3人が本人役で出演。もしも、3人が同じマンションの同じ階に住んでいたら・・・を描くシチュエーションドラマだ。主題歌はなんと我らがEnjoy Music Club「そんな夜」だ。今回も当然のように名曲。ヒップホップマナーに倣うのであれば、Three Is a Magic Numberであるからして、仮に続編があろうとも、ゲストなどは出さずに、この3人の小さな物語として終息して頂くと、大変ありがたいものです。


Huluにて、2話まで鑑賞しましたが、これがおもしろい。悔しいけども、まんまとおもしろい。シットコムの最果てのようなドラマである。本人役という事で、現実とフィクションをあえて不明瞭にすることで、本来観ることのできないはずのものを覗き見するような感覚を視聴者に植え付けているのが巧い。炬燵を囲んで、ダラーっと続くボンクラトークと自意識のもて遊びは、ある種の人々の心の機微を強く刺激する事でしょう。人との距離の詰め方だとか小腹が空いた時の対処法だとか、本来ならば言葉にならないはずのものがずーっと垂れ流しされているような作品で、ある種、坂元裕二のドラマのようにと言えなくもない(勿論全然違うけど)。


この番組を流して「これ何チャン?」と聞いたら100人中90人は「テレ東」と応えると思うんですが、まさかの日テレ制作だった。いやいや、そう言われてみればバナナマン×おぎやはぎ×オークラによる伝説のシットコム『epoch TV square』

バナナマン&おぎやはぎ epoch TV square Vol.1 [DVD]

バナナマン&おぎやはぎ epoch TV square Vol.1 [DVD]

BS日テレでの放送でありました。今作は明確にあの作品を意識していると思う。なんせマンションの1階にはコンビニがあるのです!*1EMCの「そんな夜」は当然、現代版「楽しい夜更かし」(大瀧詠一)であります。しかし、『epoch TV square』の放送が2003年であるから、当時のバナナマンらが29~31歳。対して、現在バカリズムが41歳、若林が38歳でありまして、あの”終わらない青春”感を期待するのは少し厳しい面もあるのですが(住んでるマンションが豪華過ぎんだよなー)、今回のドラマのようなメソッドがはまる芸人が他に見当たらないので仕方あるまい。三四郎世代の奮闘を祈ります。チャンピオンのスウェットにアディダスのジャージを合わせているバカリズムが最高。ブランド着てるやつ もう Good nightって感じ。しかし、二階堂ふみは憎たらしいほど巧い。ぎこちない感じを2周くらい回った感じで演じている。最高だ。
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*1:エンジェルマートのタチバナちゃんって響きだけで懐かしくて涙腺が緩みますね

大童澄瞳『映像研には手を出すな』1巻

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『映像研には手を出すな』は抜群に面白い漫画である。こちらがデビュー作という大童澄瞳はなんと若干23歳。まさに「新星、現る」である。

浅草みどりはアニメ制作がやりたいが、一人では心細くって一歩が踏み出せない。
そんな折、同級生のカリスマ読者モデル、水崎ツバメと出会い、実は水崎もアニメーター志望なことが判明し・・・!?
金儲け大好きな旧友の金森さやかも加わって、「最強の世界」を実現すべく電撃3人娘の快進撃が始まる!!!

アニメーション制作×女子高生、となると今井哲也ハックス!』(2008)

ハックス!(1) (アフタヌーンKC)

ハックス!(1) (アフタヌーンKC)

という傑作が既にあるわけですが、負けず劣らずの文化系青春活劇の誕生の予感。浅草みどりのイマジネーションによって、日常がシームレスに"最強の世界"に切り替わる。その跳躍のダイナミズムが最大の魅力だ。かと言って、アニメーションが退屈な日常からの逃避、というような描かれてかたはしていなくて、主役3人がしっかりと学生生活を謳歌しているのもいい。


絵柄、キャラクター、コマ割り、あらすじ展開、センス溢れる台詞廻し、メカや美術の細部の異様なまでの緻密な描き込み(メカの図解ページも楽しい!!)etc・・・あらゆる点に魅力があって、どこから褒めればいいのか困るほどである。しかし、何と言ってもずば抜けた空間把握能力だろう。1コマ1コマに奥行きある世界が広がっていて、その連なりが世界をより豊潤なものに変容させていく。

学校へ繋がる橋!
経緯不明の高低差!
水上に建てられた校舎!
度重なる増改築によって校内は複雑怪奇!
まさに公立ダンジョン。

というような豊かな立体感覚を持った校舎(ぜひコミックスを手にとって目撃して欲しい)を、浅草みどりと金森さやかの2人の女子高生が双眼鏡で見つめている。何やらまるでカリオストロ城を見定めるルパンと次元のようだな、などと思っていると、そこに黒服に追われる財閥令嬢嬢が現れ、冒険が始まっていくわけだから、やはりここには『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)の息づかいが潜んでいる。単行本の帯には

ドラえもん宮崎駿、そしてザリガニが好きな人、集まれ!!

と大胆に表記するほどで、大童澄瞳は宮崎駿という巨人への敬意を微塵も隠そうとしない。
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例えば、この浅草みどりがイマジンする"最強の世界"の一枚絵はどうだろう。気持ちいいほどに、宮崎駿のフェチズムを継承していやしないか。劇中において、主人公が初めて「アニメを作る人」を意識した作品として、『未来少年コナン

未来少年コナン 1 [DVD]

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を登場させるほどの、衒いのないまっすぐな愛がここにはある。新しい世代の到来、という感じだ。それは決して上辺だけのジブリ愛ではない。例えば、アクションの連鎖で語っていくあの宮崎駿の話法が、大童澄瞳の筆に落とし込まれているのが伝わってくる。作者が描きたい画(もしくはアクション)に向けて、物語が突き動かされていく。それが今作に通底する快楽性の秘密だろう。


それでいて、部設立承認の為の教師との駆け引きや、部室の掃除に補修(ジブリ!)、部費獲得の為の生徒会との対決、など文化系青春ドラマの王道のツボもしっかりと押さえてあります。絶対的にオススメ!

映像研には手を出すな! 1 (ビッグコミックス)

映像研には手を出すな! 1 (ビッグコミックス)

ナカゴー『ベネディクトたち』

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超人ベネディクトとその周辺の人々との摩擦の話で60分。ちょっとどうかしているほどにおもしろい。物語の話法にしろ、ぶち込まれるギャグの発想・発話にしろ、他の何ものにも似ていない”笑い”がここにある。というよりも、あらゆる笑いの文法がパッチワークでまとめあげられている。鋭いセンスの言葉の応酬もあれば、フィジカルを使った一発ギャグもあるし、演劇の構造を逆手にとったようなメタ視線のギャグもある。更に、時事ネタ、芸能人ネタ、差別ネタ、あるあるネタに何でもござれだ。技のデパートである。鎌田順也は”人間のおもしろさ”の貪欲な観察者だ。


ただし、下品で粗野でノイジ―で、圧倒的にバカバカしい。そういうものに苦手意識がある方にはオススメしない。しかし、ナカゴー鎌田順也はそのくだらない笑いでもって、この現実に蔓延するダーティな側面を的確に作劇に落とし込む。小さなコミュニティの崩壊を描くことで、”社会”というものを見事に描き切っているし、神話というのはこういう風に成り立っていったんじゃないか、というようなハッタリ感もある。ナカゴーはバカ演劇、というイメージが強いが、私の中ではこれでもかというほどに社会派劇団だ。人と超人は、いや人と人は、どこまでもとことん、わかりあえない。その滑稽さを笑い飛ばそう。


ナカゴーは再演の多い劇団だが、その中でもこの『ベネディクトたち』は(おそらく)1番多く上演されている代表作だ。今回は2010年の初演時のメンバーが集結という事で、篠原正明、髙畑遊、日野早希子、鈴木潤子という劇団が誇るスター役者が揃い踏み。篠原正明が『ゴッドタン』やEテレ『シャキーン!』などで活躍目覚ましいわけですが、ナカゴーが凄いのは、彼のワンマン劇団じゃない所だろう。全員が全員同等の凄味がある。そして、コンラッド役は板橋駿谷(ロロ)だ。1枚画としての強烈さが増し増し。半裸ブリーフのマッチョ2人が、ファンタグレープとファンタオレンジの置かれたテーブルを囲んでいる、その導入の画力の強さ。絶対面白い演劇が始まるに決まっているのだ。ぜひとも劇場に駆けつけたし。

最近のこと(2017/01/12~)

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東京メトロの広告、1月は石原さとみがホームズ的な探偵の格好をしていて、大変良い。しかも、舞台は中野ブロードウェイ小原愼司の『菫画報』的だ。1月ということで、部屋が寒い。暖房が苦手なのでコタツから出れません。なんでも今の時期が寒さの底であるらしい。と言いつつも、東京の寒さなんてものははたかが知れているし、寒いのはそんなに嫌いではない。またしても間が空いて、どこから記していいかわからないので、とりあえず先々週の後半から振り返りたい。



木曜日は、仕事後に大久保へ。昨年12月にオープンしたばかりという「spicy curry魯珈」というお店で食事。
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インドカレーと魯肉飯のミックスに酔いしれる。インドと台湾の折衷でエキゾ過ぎる。店主は『エリックサウス』で働いていたらしく、あちらに倣い、口直しとしてシュガ―コーティングされたフェンネルが置いてある。あれ、好き。店を出て大久保駅とは逆に歩くと、すぐに職安通りと小滝橋通りにぶつかる。大久保と新宿の地理関係が初めてスッと頭に入ってきた気がする。ロフトプラスワンでAマッソのトークライブを観た。なんと男性客が8割。お笑い芸人のイベントでは異例だ。ライブ自体はまぁまぁ。それなりに面白かったけども、もっとピリっとしていてもいい気がする。加納さんのクレバーさは勿論、村上さんのナチュラルボーンクレイジーな感じがテレビでのいじりシロが多そうで、売れる画しか見えないです。3月には単独ライブもあるので、とても楽しみ。ときに「harman/kardon」の定価5万円のスピーカーが、メルカリなどで5,000~6,000円で手に入るのをご存じだろうか。
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ソフトバンクが契約更新の為に無料でばらまいたらしく、値崩れ&供給過多に。一応、ベンツやBMWにも採用されている名門スピーカーブランドだし、ちょうどbluetooth対応のスピーカーを探していたので、思い切って購入したら、大変良かった。見た目はスターウォーズみたいだし、起動音がR2-D2みたいでかわいい。低音が綺麗に出るので、田中フミヤの『Unknown Possibilities Vol.2』

unknown possibility vol.2

unknown possibility vol.2

を流したら、凄かったです。ものすごいペニオク感のある記述になっていますが、純粋にお得だからオススメしたいだけなのです。



金曜日。帰宅して、豚バラ肉と白菜ともやしを日本酒で蒸して食べた。簡単なので最近はこればっか食べてる。ポン酢とかラー油とか調味料のバリエーションが広いので飽きないのです。阿部サダヲ×深田恭子の『下剋上受験』を観た。脚本が『お金がない!』の両沢和幸という事で期待していたのだけども、1話を観るかぎりちょっとしんどいかもしれない。せっかく風間俊介も出ているのにな。ドラマ脚本界に、クドカンが3人くらいいて欲しい、と思うことが最近よくある。テレ東の松井大悟による『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』は設定とキャスティングは面白いけども、それ以上のものは今のところ。断然、松重豊推しである。Twitterで知ったのですが、松重さんは向井秀徳ファンで、かつ息子と一緒にceroとかD.A.Nを聞くらしい。好き…。『水曜どうでしょう』をDVDでガンガン観る。SMAPなき今、国民的5人組という位置にTEAM NACSが登り詰めてくれればいいのにな、と想った。すると、ミスターがジャニーさんだ。『山田孝之のカンヌ映画祭』での成長した芦田愛菜ちゃん、すっかり陰のある感じになっていて、とてもいい。



土曜日。朝起きて、まずベットの中でコリン・ブランストーンの『一年間』とザ・ゾンビーズを聞いた。そんな素敵な休日の始まり方ってあるでしょうか。朝ごはん食べて、洗濯をして、自転車で高円寺に出掛ける。自転車で風を切ると、寒さで耳がひきちぎれそうだ。高円寺にある「小杉の湯」という銭湯で開催された『フォークバンケット』というイベントを観ました。江本祐介と原田晃行のツーマンライブである。客入れのBGMでコリン・ブランストーンが流れていた。前座に井手健介が登場し、岡村靖幸の「ターザン ボーイ」と「カルアミルク」を披露。「ターザン ボーイ」はAメロまでは井手のオリジナル曲なのだと思っていて、信じられないほどいい歌詞書く人なんだな、と感心していた。岡村靖幸はまじで凄い。弾き語りで聞くと、楽曲が本当によくできているのだと痛感しました。もちろん、ホワイトのスウェットがよくお似合い井手さんの歌声も素晴らしかったです。江本祐介はハイハワ、高田渡、EMC、フリッパーズギターなどのカバー曲も光りましたが、中盤に披露したオリジナル曲(タイトル不明)がもうとにかく素晴らしくて、ちょっと泣きそうになるほどでした。なんて曲が書ける人なのでしょうか。「ライトブルー」はやりませんでした、やりませんでした、やりませんでした。イエモンかよ、と突っ込んでみてください。「今度対バンしようぜ、負けねえよ」と返します。何を言ってるかよくわからない、という人は「イエモン レディオヘッド ライナーノーツ」とかなんとか検索してみて下さいね。さて、トリは原田晃行。何度も書いているが、原田くんのギターは凄い。本当に凄い。なんかこう心に”くる”のだ。大好きな「メロンパン」がこの日も聞けた。とても大切に歌っている曲なのでしょう。名唱、名プレイだった。アンコール的な感じで出演者全員でゆずやら猿岩石やらのカバー大会が始まったのには、さすがにカラオケ感が否めず。しかし、最後に江本×原田で披露したTWO NICE BOYSの「恋のトライアングル大作戦」が抜群に良くって、これですよ!という気持ち。名曲だ。早く音源化して欲しいですね。
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高円寺で、なんかこう刑事みたいな名前のカレー屋さんで食事したんですけど、舌に合わなかったなー。というか、信じられないくらい酸っぱい匂いのするご飯が出てきて、どう考えても腐っていた。店主には鼻がないのか。お米が腐っていると、やばい時はまじでやばいらしいので、いつか大変なことになるぞ。なんであんな店がメディアに取り上げられまくっているのか謎である。ちなみに、私の高円寺のベスト思い出は、深夜に商店街に放置された自転車を1人で黙々と整列しているゾマホンを見かけたことです。



日曜日。近所の銭湯で朝風呂&朝サウナ。身体がとても軽くなった。最高だ。店主のおばちゃんも好きな感じのファンキー感。こんなにいい銭湯を、この街に住んで5年間も気付かずにいたとは。恵比寿に電車で出かけて、写真美術館でホセ・ルイス・ゲリンの映画を短編含めて3本鑑賞。新作の『ミューズ・アカデミー』面白いです。
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誰かの香水なのか、館内にずっとウィスキーモルトのような匂いがしていて、酔いしれてしまいました。写真美術館の売店で、メモ帳と増補したという蓮實重彥『監督 小津安二郎』のちくま文庫版を買う。

ガーデンプレイスファミリーマートは何故か「ファミマ!」という表記で、商品の種類が豊富な上、カフェのようなイートインスペースまであって楽しい。恵比寿から東京駅に移動して、八重洲地下街の「エリックサウス」でチキンビリヤニミールスを食べる。
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絶品。舌が楽しすぎることです。チキンビリヤニをMではなく、Lサイズにすればよかった、と後悔。ビリヤニって、口に入れれば入れるほどどんどん美味しくなる感じありませんか?サウナとスパイスで毛穴開きまくりの1日でした。



月曜日。仕事後、本屋に寄り、こだま『夫のちんぽが入らない』を購入。ちょっとだけ恥ずかしい気がして、もう1冊何か、と探してマーク・トウェインハックルベリー・フィンの冒険』の文庫を一緒に買った。

ハックルベリ・フィンの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)

ハックルベリ・フィンの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)

よく考えると、冒険心を忘れないエロ親父みたいなラインナップで、逆に気持ち悪い。帰宅してお風呂で『夫のちんぽが入らない』を一気に読んでしまった。のぼせたからかもしれないが、本当にクラクラした。掛け値なしに名作だ。
hiko1985.hatenablog.com
まったく新しい文学という感じがした。しかし、親族に身バレしたらどうなってしまうのか、他人事ながら心配だ。録画しておいたキムタク主演ドラマ『A LIFE~愛しき人~』1話を観た。結構面白くて安心。木村拓哉×浅野忠信なら、もうどんな出来でもお釣りがくる。キムタクがちゃんとキムタクでした。しかし、キムタクの野球部っぽくなさよ。松山ケンイチのネクタイがどれもかわいい。木村綾乃は嘘みたいに顔が小さく、竹内結子黒沢清効果で、どうにも気が触れている人に見えてくる。そして、連ドラの1話目で死ぬことに定評のある柄本明が無事生き延びて、本当によかったなと思いました。ちなみに2話まで観たら、もうすぐさま飽きてきました。あまりに展開が予定調和なのと台詞回しが退屈で・・・
mikiki.tokyo.jp
Mikikiに掲載されていた北沢夏音さんによるシャムキャッツのインタビュー読む。良い。北沢夏音さんへの憧れむちゃ強いです。夏目くんはそろそろ黒髪も見たい。



火曜日。いよいよ坂元裕二の新作ドラマ『カルテット』のオンエアー日である。万全を期して観ました。”ながら見”厳禁な骨太の会話劇。文句なしに、むちゃおもしろいではないか。これは『最高の離婚』以来の感触だ。唐揚げにレモン、ってのは最初ちょっとありきたり過ぎるのでは、と想ったけのだども、高橋一生があまりに抜群なのと、唐揚げにレモンからイメージがどんどん拡がっていくのに痺れた。高橋一生、ほんと素晴らしい。松田龍平の着ている服もおぼっちゃまという感じでかわいい。世界的指揮者の孫。そういう感じのおぼっちゃまが1人いたような・・・満島ひかり松たか子の『四月物語』を100回観たって話、愛しい。あと、八木亜希子さん、何故か昔から無性に好きだし、サンドウィッチマンの冨澤さんも勿論大好きなので、うれしい。サンドウィッチマンの東北ローカル番組が観れないのって大きな損失だなと思う。代わりはいくらでもいる、という老害三村さんの言説に則り、さまぁ~ずの番組枠をサンドウィッチマンに譲って欲しいものです。狩野さんの穴は小宮さんがバチボコ埋めるはず。



水曜日。昆虫キッズの髙橋翔が新たに組んだバンドELMERのデビューアルバムが出たぞい。The XXのニューアルバムと一緒に買いました。ELMERのアルバムのリード曲、好き。
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高橋翔が照れずにかっこつけていて、ちゃんとかっこいいと思う。The XXも抜群にいいですね。CINRAに載っていた宇野さんによるインタビュー、仲が良すぎるメンバーがむちゃくちゃかわいい。しかし、仲いい感をビジネスに持っていこうとしている嵐のビールのCMとかはなんか嫌だ。自販機で缶の午後の紅茶を買った。缶で飲む午後の紅茶は純文学の匂いがするって知ってました?味はレモンティーにした。缶のレモンティーを飲むと、いつも『名探偵コナン』の初期エピソードを思い出す。うろ覚えだけども、新一と蘭の中学の時かなんかの音楽の先生が、結婚式直前に新郎を缶のレモンティーに化成ソーダを入れて殺そうとする事件。手術の結果、一命を取り留めて、なんやかんやで結局、先生はその新郎と結婚するというアクロバティックなハッピーエンドで、小学生ながらモヤっとしたものだ。ちなみに私が初めて買ったコナンは9巻です。たしか10巻で初めてコナンが新一に戻るものだから、むちゃくちゃ盛り上がっていた記憶あります。『東京タラレバ娘』と『スーパーサラリーマン左江内氏』の1話を観た。どちらも大変苦手な出来栄え。とりわけ、『スーパーサラリーマン左江内氏』の福田雄一演出が、とにかく肌に合わなかった。最近のユーモアっていうのはああいうのなのか。小泉今日子がなんであんなもんに出演する必要があるのだ。『東京タラレバ娘』に関してはそもそも原作があまり好きじゃないのですが、せっかく『逃げ恥』が提示したもが『東京タラレバ娘』に無化されてしまう~と焦っていたら、無化されていたのは『東京タラレバ娘』のほうだった。キャラクターの年齢設定を下げているのとかも、何もかもわかってない感じだ。『カルテット』の感想書かなくては!とうなされたので、夜中に机に向かって書いた。



木曜日。本屋で『映像研には手を出すな』1巻を購入。

映像研には手を出すな! 1 (ビッグコミックス)

映像研には手を出すな! 1 (ビッグコミックス)

超おもしろ。大童澄瞳は23歳の新鋭。天才。電車を一駅手前で降りてイトーヨーカドーで買い物して帰る。1パックのグラム数のバリエーションが豊富でうれしい。安いバラ肉が買えたので、おまけで惣菜コーナーで値引されていたたらの芽の天ぷらを買った。ご飯を食べながら、京アニの新作『小林さんちのメイドラゴン』2話まで観ました。
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かわいくて、面白い。カンナちゃんがまんまとかわいい。録画してあったノイタミナ枠の『クズの本懐』は視聴断念。ノイタミナは早く『町でうわさの天狗の子』をアニメ化してくれい。『リトルウィッチアカデミア』はひじょーに面白い。
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往年の夕方のアニメのような黄金律がある。1話で一気に主要3人のことが大好きになってしまった。OPもEDも曲よし。



金曜日。大寒波。昼間はチラホラと雪が降っていた。帰宅して、近所のシネコンのレイトショーでディズニーの『ピートと秘密の友達』を観る。
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凄くよかった。ドラゴンを見上げる憧憬のまなざしに涙腺を刺激される。この質感はスピルバーグジュブナイルだ。宣伝の扱いが悪過ぎて、ひっそり昨年末に始まり、もう上映を終えようとしている。いい作品なのに、不憫だ。お腹が空いたのでマルちゃんの焼きそばを作って食べました。



土曜日。昼過ぎに浅草へ。『サウスパーク』という南インド料理屋で、ランチ。ビリヤニが美味しい。
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初詣を済ませていなかったので、浅草寺に参る。幸せに暮らせますように、スワローズが優勝しますように、と抽象と具体を混ぜ合わせた願いごとをしてしまった。色々、散歩して腹ごなしの後、街中に佇む「蛇骨湯」という銭湯へ。
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小さい銭湯なのだけども、むちゃんこ混んでいた。諸外国の観光客も多い。サウナは6人ほどで満員なのだけど、常に満席。湯船もギュウギュウに満員。さすがにちょっと、という感じなのだけども、露天に設置された水風呂が抜群にいい。15℃な上に温泉を使用しているのだ!外気浴用の椅子もあって、池の鯉を観ながらととのえる。ちなみにシャワーから出るお湯も温泉。サウナのテレビは大相撲中継で、普段じっくり観ることがないのだけども、いきなり稀勢の里が初優勝するところを目撃してしまった。サウナ、というか銭湯全体が大騒ぎでした。サウナを出て、「亀十」でどら焼きと最中を購入し、あさくさ劇亭でナカゴー『ベネディクトたち』を鑑賞。何度も再演されている代表作だが、初演メンバーが集結ということで、篠原正明と板橋駿谷の肉弾戦が!いやー素晴らしかった。まっじで観たほうがいいです。



日曜日。掃除、洗濯、買い物を済まして、引き籠もり『ゲーム・オブ・スローンズ』1シーズンを観終える。
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まっじで面白過ぎる。ここからどんどん面白くなるってまじなのか。シーズン1はロブがどんどん立派になってくれて、涙でした。夕方になって、自転車で銭湯へ。とても辺鄙な住宅街にあるのだけども、ここのサウナは凄い。温度100℃越えのストロングサウナで、香りにも気を使っていて、汗どばどばかつウットリ。テレビはないのもよくて、その代わりに有線で90年代のJ-POPがずっと流れている。SMAP、SPEED、スピッツエレカシUAウルフルズetc・・・ととのいまくり。とりわけ涙がちょちょ切れてしまったのが小泉今日子の「優しい雨」です。名曲。帰って餃子食べて、眠る。

坂元裕二『カルテット』1話

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坂元裕二が脚本を手掛ける新作ドラマ『カルテット』の放送が開始された。『問題のあるレストラン』(2015)にしても『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2016)にしても意欲作であり、充分に我々の琴線を揺さぶってきたわけであるから、こういった言葉を用いるのは少々憚れるのであるが、あえてぶちまけよう。坂元裕二、完全復活!これは面白いですよ。謎が謎を呼ぶミステリーであり、まさに新機軸。しかし、本心を隠しあった人間が集まり、“本当のこと”を周到に隠しながら上滑りの会話をしていくというそのミステリーのありかたは、”わかりえなさ”を前提に掲げた坂元ドラマの本質を捉えた形式のようにも思える。ここ数作では控え目であった、あのつんのめるように脱臼した会話劇が、全幅の信頼を寄せるに値する役者の集結によって、復活。発話や会話のリアリティもさることながら、「唐揚げにレモン」だとかいう、物語には到底なりえないはずの言葉が、瑞々しく躍動し、複雑な感情が描写されていく、その筆致に震えてしまう。そして、唐揚げにレモンという議論から、”時の不可逆性”にまでサラっと論理を展開させてしまうドライブ感。坂元ドラマに流れているのは、本来であれば、言葉にならないはずの想いだ。私達がグッと飲み込み堪えてきた言葉や感情を、とびきりのユーモアとペーソスで解放する。上質な物語というのにはそういった救済の力がある。


そして、一流の会話劇であると共に、その台詞が止んだ時、静かに交わされる疑いのまなざしの視線劇でもある。喋る言葉が全てではない。人々の背景には目に見えない様々な思惑や感情が蠢いている。場に流れる不穏な空気を視線や仕草だけで悟り合い、突然「しょうがないじゃないですか」と切り出すのには大変驚かされた。そして、コーン茶を淹れる、という動作を軸に登場人物が入れ替わりに本音を語り出す。こういった会話と動線の引き方はもはや演劇の戯曲である。完全に視聴者の”ながら見”というやつを拒否している。前枠の『逃げるは恥だが役に立つ』はSNSでみんなで盛り上がれる”隙”を作ったことが、高視聴率の一要因であると思うのだけども、そこに一切媚びてこない。過去のインタビューを読むに、こういったドラマの作り方が広く受け入れられない事を当然、坂元裕二も自認している。

坂元:間違いなく言えるのは、わかりやすくしないと視聴率は取れないですよね。テレビはやっぱり“説明説明説明”で、水戸黄門的に予定調和な。それが馬鹿にしてるかというと、逆に誠意を尽くしてる思いです。


我孫子:馬鹿にしてるというか、これくらいしないとわからないんだろう? という思い込みは。


坂元:わかりやすくする、ということにものすごい労力を傾けている状況はありますね。今のバラエティにしてもドラマもにしてもそうですけど、昔に比べたら遥かにたいへんな作業をしてるわけです。昔はもっとゆるく企画して、ゆるく台本作って、簡単に撮っていたのが、今はもう「ここまでしないといけないのか」というくらい、あの手この手で伝えようと。ヒットしたドラマが途方もない労力の上で作られてることは間違いない。

それでもあえて自分の信念(のようなもの)を貫くブレなさ、そして、前枠に大きな成功体験がありながらも、坂元のやり方を容認するTBS。痺れてしまうぜ。



世吹すずめ(満島ひかり)が路上でチェロの演奏をしている。道行く人の中に、彼女の音に耳を傾ける者はいない。このオープニングショットで、このドラマがどういう人を描こうとしているのかが生々しく浮かび上がってくる。社会と上手に接続できない、しかし、それでもなんとか繋がろうと懸命になる者達だ。そんな彼女に金銭をちらつかせ近付き、妙な依頼を持ちかける老婆(もたいまさこ)が現れる。

この女性と友達になって欲しい

実に怪しい依頼だが、”仕事”と”金”と”人の繫がり”が全て揃ったその依頼を、彼女を当然、飲み込むことだろう。ちなみに、すずめが飲んでいる三角パックのコーヒー牛乳。『カルテット』なのに三角・・・と一瞬思うわけだが、正式名称を「テトラ・クラシック」と言い、”正四面体”である。三角形に気をとられ、底の一面に気づかない。このドラマの本質を突くような巧妙なメタファーがこの小道具に託されている。


次に、降りしきる雨の中、まるで喪に服しているかのようなモノトーンで身を固めた巻真紀(松たか子)が映し出される。薄暗い画面の中で、巻の”赤い”スーツケースだけが妙に鮮明だ。流れているのは雨なのか、”血”なのか。別府司(松田龍平)が彼女を車に乗せ、次にまるでヒッチハイカーを拾うかのように家森諭高(高橋一生)を乗せ、舞台となる冬の軽井沢の別荘地へ。このミニバンに次々にキャラクターが乗り合わせる感覚はまさに『ドラゴンクエスト』的であろう(そして、スーパーでドラクエのテーマの演奏に繋がる)。


別荘に入館するやいなや、巻が叫び声を上げる。テーブルの下に死体が!やはり、あのスーツケースの”赤”は血であるのか。いや、しかし、死体のように思われたのは、どこでも寝てしまうすずめちゃんであった。ここまではまさに”ミステリー”という感じの導入。すると老婆に依頼されて別荘地に潜入したすずめはさしずめ探偵(明智小五郎)である。
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実際どうだろう、彼女は有能な探偵である。執拗に問いただし、巻に”夫の失踪”を告白させ、家森が"隠し"持ってるいる高級ティッシュペーパーを暴きしてみせる。更には、そのティッシュが剥がされていく様を

追いつめられた連続殺人犯みたいですね

と暗喩して、巻を静かに追いたてる。しかし、

青空より曇った空が好きです

と容疑者である巻と共鳴してみせたりする。すずめと巻の”雲”が覆い隠しているのは一体何なのだろうか。



まだ謎が謎を呼ぶ状態で、細かく言及していくのは難しいのだけども、おそらく今話限りのゲストであろうベンジャミン瀧田(イッセ―尾形)にはついては何か語れよう。

別府:まじか・・・家森さん、気づきました?
家森:ああ、気づいた
別府:『あしたのジョー』の帽子でしたね!
家森:『あしたのジョー』の帽子だったねぇ

で、「イェーイ」と松田龍平と髙橋一生がはしゃぐシーンは個人的にハイライト級に好きなのですが、注目するはやはりベンジャミンさんがかぶり続けるあの赤い帽子だ。”余命9ヶ月”という嘘を巻に暴かれ、レストランでのパフォーマンスを解雇されたその帰り道、ベンジャミンさんの帽子が風邪で吹き飛ぶ。スローモーションで、印象的にカメラに収められたあのシーンに託された意味。あの帽子というのは、『あしたのジョー』の帽子であったわけで、つまりは、ベンジャミンさんの”あした“が吹き飛んでいってしまったということだ。そして、歩いていた道を外れ、退場していく。その様子を見て、心を痛めた様子の4人。それは、巻が指摘するように、ただ同情したからではない。「あの人に未来の自分達を見た」からだ。音楽という夢を追い、それに押しつぶされたベンジャミンさんは未来の、いや”あしたの”自分達かもしれないのだ。


メンバーに夫の失踪を告白する巻(その告白を果たした後、巻はそれまでのモノトーンとはかけ離れた、実に鮮やかな”赤”の洋服を着る)、何やらカルテットの立ち位置通りに矢印が向いているらしい4人の”片想い”の連鎖、いかにも借金取り然としたMummy-D(from RHYMESTER)、”ドーナッツの穴”というメタファー、ラジオが伝える池から浮かび上がる死体、まったく、面白くなっていく予感しかしないじゃないか。



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