青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

最近のこと(2026/10/15~10/26)

10月15日木曜日

秋らしくなってきました。Elis Regina『Elis&Tom』やNara Leao『Meu Primeiro Amor』を聞いた。ブラジル音楽は夏に聞くほうが涼し気でハマるような気がするけども、わたしの中ではなぜか秋のイメージ。お昼に「らーめん一作」という大阪の北摂を中心に数店舗展開しているらーめん屋で、“こってりらーめん“を食べる。つい先日、茨木の店舗が建物の老朽化で約40年の歴史に幕を閉じたらしい。同じくこってりらーめんで全国展開している「天下一品」が1971年創業であるから、「らーめん一作」もさして変わらぬ長い歴史を有しているのです。鶏と(たぶん)野菜の旨味が凝縮された食べごたえのある一皿で、たいへん美味しかった。ちなみに、”ラーメン“表記よりも”らーめん“のほうが、なんとなく美味しそうに感じる。


夜はジムへ。筋トレをして、ニューヨークのYouTubeチャンネルのヤッホイ出演回を見ながら、有酸素運動。ヤッホイ永井の政治家志望という前情報に胡散臭さを感じていたが、反差別デモに参加する人権派の童貞と知り、一気に好きになってしまった。泉はいくらなんでもわかりやすくメロすぎると思う。勝手に166cmくらいの身長かと思っていたのだけど、176㎝あるらしい。ヤッホイへの改名前のコンビ名「ドローム」というセンスがニューヨークの2人に捕まるも、「(シン)ドローム」が由来と聞き、「なら、いいじゃん」となるくだりが最高。しかし、筋トレは疲れる、ウォーキングも疲れる。やめたい。こってりラーメンを食べて、ジムに行くとか無意味すぎやしないか。


ひうち棚『見てないとしょうちしないよ』1巻をもう一度ゆっくり読み直す。『急がなくてもいいことを』も素晴らしかったが、今作の作画の手間の入りようは圧巻で、かけがないのない瞬間を絶対に形にして残すのだ、という執念を感じる。辻惟雄の名著『奇想の系譜 又兵衛-国芳』を読み進めているのだけど、これがめちゃくちゃおもしろい。日本美術における異端たちを、“奇想”という切り口で結び直していく。ちくま文庫版で読んでいるのだけど、取り上げられている画をしっかりカラーで観たいので、大判を買えばよかった。


10月16日金曜日

Fontaines D.C.のニューアルバムがリリースされた。シンセの音が好みでヘビーローテーションの予感。あと、先週リリースされたCameron Winterのライブ盤もよく聞いている。更新された『岡野陽一の肉の塊』を聞いたら、フライデーでのタイパンツの件を釈明していた。みなみかわさんも鈴木もぐらも岡野さんのタイパンツの臭みを逃がさない。


金曜日の保育園へのお迎えはいつもより1時間遅いので、この季節は空がすっかり暗くなっている。帰宅して、ブックオフにて200円で買ったディズニーランドのガイドブック(2023年版)を娘と眺める。行く予定があるわけでもないのに。わたしも小さい頃、ディズニーランドのガイドブックをひたすらに読み込んでいて特に「カリブの海賊」のアトラクション写真などにウットリしていたのを思い出したのだ。娘も案の定ガイドブックの虜で、ミニーちゃんと写真を撮るとか、ミッキーの形のアイスキャンディーを食べるとか、プランを考えている。あとトイ・ストーリーのホテルに泊まるらしい。めちゃくちゃ高そうだ。それにしても、この歳の娘と行くディズニーランド、夢みたいに楽しそうだ。娘は忘れてしまうのだろうけど、親が行きたいのだ、この娘と。


中島歩が出演している『あさイチ』を録画にて鑑賞。NHKの朝ドラや大河の映像をふんだんに使用できるのがいいですね。中島歩がスピッツの「夜を駆ける」が好きという情報。『ハヤブサ』とか『三日月ロック』は高校生の頃のリリースで、お小遣いで買ったCDなのでわたしの中でも思い入れが強い。奥寺佐渡子×塚原あゆ子×新井順子の金曜ドラマ『LOST10』1話、おもしろい。撮影もキャスティングも豪華なのだけど、劇半があまりにもうるさい。うるさいので音量を下げると台詞が聞き取れなくて不快だった。


マユリカ阪本主演のCook DoのWeb CMがたいへん良くて、何回もリピートして涙ぐむ。チョロいのですが、阪本さんのことがより好きになってしまった。この1分くらいの動画に、どれくらい言葉を費やせるか試してみようとブログを更新した。こういう時が1番楽しい。


10月17日土曜日

妻は仕事だったので、娘と2人、自転車で出かける。パン屋に寄って、お昼に公園で食べた。池の鯉に餌をあげる。100円で買った鯉の餌は、最中の中に入っていて、その最中も餌としてあげられるエコ仕様。公園に、忍者の恰好をしているコスプレイヤーのお姉さんがいた。「忍者だ!」と興奮している子どもに、「あれは本物の忍者ではなくて、恰好を真似しているだけだよ」と諭しているお母さんがいて、笑ってしまった。別に忍者ってことでいいのに。娘は「あれは忍者じゃなくて、忍たまだよねぇ」と、よくわからない角度ながら、たぶん合っている持論を展開していた。珈琲屋に寄って、豆を買う。娘は店主にラムネがもらえたので、ご満悦。娘は、ラムネの恩を忘れないので、「あの店に珈琲を買いに行こう」としつこく提案してくることだろう。


帰宅して、娘にテレビ鑑賞の権利を交渉し、『キングオブコント』の敗者復活戦を見させてもらった。芸人審査の雰囲気、楽しい。スパイシーガーリック、そいつどいつ、江戸川ジャンクジャンク、破壊ありがとうが特に好き。あと、しずるはいつだってすばらしい。あと、破壊ありがとうのYouTubeチャンネルがおもしろいですよ。田中机の顔、すごくどこかで見たことがあるタイプのハンサム。『キングオブコント』の本編は娘を寝かしつけてから追いかけ再生で観たのだけど、せっかくの祭りの日なので夕飯にはピザを注文した。妻の帰宅まで時間があるので、自販機にコーラを買いに行こうと、娘と散歩。公園でブランコやすべり台で遊ぶ。いつの間にかブランコの立ち漕ぎができるようになっていた。感慨深くなり、「スクスクと元気に育ってくれてありがとうねぇ」と語りかけたら、「野菜じゃないんだからさぁ」と言われた。ツッコミのセンスを持ち合わせている。コカ・コーラの自販機見つからず、サントリーの自販機でペプシコーラを買おうと思ったら入っておらず(そんなことあるの)、泣く泣くギルティ炭酸NOPEを買う。我が家の宅配ピザはピザーラ派。明太もちピザとカレーモントレーが人気です。NOPEは不味くて2口くらいでギブアップした。そもそも、“NOPE”はもはやジョーダン・ピールのものだろ。


『キングオブコント2026』はジェラードンの圧勝。2本ともおもしろかった。蛙亭もヤッホイもめちゃ笑いました。ヤッホイは「お医者さんパスタ」に続いてAztec Camera使い(「Pillar to Post」)。Aztec Cameraのイントロがおもしろいだなんて、まったく気付かなかった。こういう編集のセンスこそが創作のすべてでは、とさえ思う。後輩から「ヤッホイの2本目ってどこかおもしろいんですか?」とLINEが来ていた。知らん、と返しておいた。相性はいいよね、はじめて観たのですが、松竹芸能の波動を感じる。というか、さらば青春の光とうしろシティっぽさ。しかし、サンミュージック所属らしい。ダウ90000がよくわからない叩かれ方をしていた。8人の顔見せは終わったので、次はバチバチの5分ネタを作り上げて黙らせて欲しい。「園田君の髪型がおもしろかった」という堂前さんの審査コメントおもしろすぎ。そして、岩崎う大審査員はなぜ実現しないのでしょうか。


10月18日日曜曜日

朝、起きてきた娘にヤッホイの1本目とジェラードの2本目を見せてあげる。「チャーシュー麵、チャーシュー12倍!?」と「今君は何を思う?」をさっそく習得していた。強いネタには強いフレーズがある。ヤーレンズがジェラードンの「今君は何を思う?」のエコーをかけるという発想は劇場のある吉本じゃないと出てこないよなぁ、という旨のことをラジオで喋っていて、テクノロジー環境がネタの質を規定していくのかと、興味深かった。


車に乗って芋掘りに出かける。茨木の山のほうに行き、芋を掘る。芋堀り場はけっこう賑わっている。芋を掘る人達はなぜかみんな善良に見えるな。百姓信仰がわたしの中にも刻まれているのかな。あと、芋堀りにくると、ランジャタイの改名前“おいもほったーず”を思い出す。そして、彼らは『星のカービィ』よろしく、“スーパーおいもほったーず”、“スーパーおいもほったーずDX”に改名したらしい。芋堀り場におにぎりとおでんが売っていたので、それをお昼ご飯とする。10月だけども、日差しが強く汗ばむ気候で、“おでんにうってつけの日”ではなかった。道の駅に寄り、味噌のジェラードを娘と分け合って食べた。一旦帰宅して、再び車に乗り込み、家族で銭湯へ出かける。ひさしぶりの大きなお風呂で、娘も喜んでいた。サウナに入ると、これまで入ってきた全国各地のサウナと繋がるような感覚になり、旅情を刺激される。あと、その当時の思い出も付随して思い出されていく。そこが好き。サウナ効果か、めちゃくちゃ眠くなり、娘と一緒に21時前に寝てしまう。


10月19日月曜日

月曜の朝に営業所に出勤する時だけ、缶コーヒーではなく「ドトール」でアイスコーヒーS(300円)を飲むことを自分に許している。ドトールのアイスコーヒーはSでもミチミチに注いでくれるので満足いく量なのです。職場近くのドトールの朝の時間帯の店員さん、わたしが大阪に来てからずっと変わっていない気がする。少しニッチェに似ている。


溜まっていた内務処理をして、外回り。車でポッドキャスト『はちくちダブルヒガシ』を聞いた。最近のお気に入り。マユリカのラジオのディレクターや金魚番長のラジオの作家が入っている。そして、ダブルヒガシの2人の圧倒的なおしゃべり力はずっと聞いていられる。内容はまったくと言っていいほどないのだけど、おもしろく、その軽さが魅力だ。わたしは東のことが妙に好き。最新回ではアインシュタイン河井ゆずるが来て大騒ぎで、たいへん楽しかった。河井ゆずるさんには最終的には大阪のローカルでMCとして君臨してほしいと思っています。ときに、なんでコンビ名はアインシュタインなんだ。そんなストレートに人名なことあります?2011年結成なので、“相対性理論”はもうバンドのほうにとられて空いてなかったからでしょうか。


仕事の後に歯医者へ。虫歯になりにくい歯質だけど歯石はつきやすいらしく、なんかめちゃくちゃ鋭利そうな器具でガリガリとられた。そういえば“歯質”って言葉、はじめて聞いたな。音だけで聞いたので、もしかしたらわたしが“虫歯になりにくい資質“を持ち合わせている、という可能性もありますが。歯医者のあと、ジム。めちゃくちゃ混んでいたので、ウォーキングマシンが開かかず、バイクを漕いだ。バイクのほうが楽な気がするのだけど、汗はウォーキングよりかく。『トキトケトーク』の松尾スズキがゲスト回を聞いた。松尾さんの話聞けるのありがたいな。寝る前にスーザン・ソンタグ『反解釈』を読む。批評は、内容の解釈でなく形式を語るべき、と声高に宣言する1960年代の名著なのですが、表題作と「キャンプについて」以外は、批評や引用している対象がわからなすぎて難しかった。形式を語るのはとても難しいのだけど、書かれていた「内容への考察を形式への考察の中に溶解せよ」というのは、これから書くものの指針になりえると思った。『キングオブコント』の堂前さんのダウ90000への審査コメントで園田の髪型を持ち出すというのも、スーザン・ソンタグ的と言えるのかもしれない。


10月20日火曜日

仕事の移動中にポッドキャスト『速水健朗のこれはニュースではない』を聞いた。「ミセス供給多すぎ問題。大森元貴はなぜ出し惜しみをしないのか」と「チープ革命と日本語の壁」がたいへんおもしろかった。山下達郎がライブ後に、その日の出来やミスをエクセルで記録しているという話、達郎さんらしさが出過ぎていて好き


妻が遅番だったので、ワンオペで寝かしつけまで。Cook Doの豚バラ大根を作ったのだけど、一口くらいしか食べてくれなかった。たしかに15分で作れるのに、大根も柔らかく味が染み、美味しい。豚バラじゃなくて、鶏肉でもいい気がする。しかし、味つけは濃いので、とても喉が渇きます。


TBS火曜22時の今期は『いろはの恋は時をかける』ですが、向井康二(Snow Man)が好演している。普段と発声をしっかり変えていて、驚いた。あと、彼は骨格がとても美しいのだ。脚本は『らんまん』の長田郁恵。タイムスリップもので、名作になる予感あり。今期は『虎に翼』の吉田恵里香も『もうパパ!』を書いているが、あっちは1話で視聴が止まってしまっている。


10月21日水曜日

昨夜は9時過ぎには娘と一緒に寝てしまったので、10時間近く寝た。たくさん夢を見る。その中での1つで、Taiko Super Kicksというバンドとイベントをするという夢を見た。彼らがライブをして、わたしがトークをする2部構成。お客さんの予約が2人しかこなかったので、なんとか中止にできないかとアワアワする嫌な夢だった。Taiko Super Kicksと面識があるわけではなく顔も知らないので、夢にはメンバーは登場しなかった。


90年代のSEIKOの中古時計をメルカリで買った。安かったので、本当に動くのか心配だったが、ちゃんと作動している。平成の時代のなんの変哲もない普通のステンレスの時計なのですが、なんだか愛おしい。曜日の表示が、土曜日と日曜日だけ色が変わるのが凝っていて、かわいいです。


気圧で耳が詰まる感じがして、一日中ダルかった。移動中はReverend Baron『Daniel』を聞いた。心地良いギターの調べ。明日はプロ野球のドラフト会議なので、ネット情報と『週刊ベースボール』にて予習。ヤクルトスワローズにどんな選手が入ってくれるのか楽しみだ。二刀流の菰田を指名するという説が濃厚だが、スワローズに育成できる未来が見えない。とりあえずホームランを打てる選手をとってほしい。


10月22日木曜日

急遽パソコンでの作業が必要となり、マクドナルドへ。店内放送のゲストが浜崎あゆみだった。あゆがマクドナルド行く時に聞きたい自分の曲は「Boys & Girls」とのこと。わかる。と思いきや、strongboiやKidsont$aints.などのゴリゴリのインディーミュージックが流れてきて、マクドナルドにいると気分が分裂してくる、と思った。作業に集中したいので、店内の音を遮るため、イヤフォンをつけてポーランドのピアニストSławek Jaskułkeの『Rain Forest River』を耳に流し込む。環境音と溶け込むピアノアンビエント。約3時間ありますので、作業のお供にピッタリ。あと『Park.Live』(2020)もおすすめです。


娘を迎えに行っている途中でドラフトの1位指名が追わっていた。ヤクルトスワローズは社会人No.1打者という評価の東京ガスの藤澤を単独指名。さらに2位でも外野の強打者である佐藤を指名。4位まで野手で固めるという、意志の見えるドラフトだった。投手の補強メドはついているのでしょうか。青木GMを信じます。妻が「ドラフト緊急生特番!お母さんありがとう」を見ようと言ってきたので、「もう中居がいないから、そんな番組もないねん」と適当に返したが、調べたら名称は変わっていたが、去年も今年も放送していた!勝手になくなったものと思っていた。見届け人は去年が小泉孝太郎、今年は有働由美子でした。


夜はジムへ。空いていたので快適。TBS系列のポッドキャスト『となりのパパはどうしている?』を聞いた。小池徹平とアルコ&ピース酒井による育児についての番組なのだけど、めちゃくちゃおもしろい。わたしにはパパ友がいないので、参考になる。小池さん、同じ学年だし。ウエンツ瑛士とのユニットWatのデビュー曲「僕のキモチ」は大好きで、学生時代、カラオケでもよく歌いました。どっちが小池さんのパートを歌うか喧嘩になったものですよ。あれ、いい曲なんですが、作詞・作曲もWatが手掛けているんですよね。そして、番組を聞いていると、小池徹平さんの子育てへの意識の高さと愛情の深さ、聡明さに感銘を受けます。酒井ちゃんはあいからずラジオスター。


10月23日金曜日

朝から取引先の陳列応援で肉体労働の日。隣で作業していた同業他メーカーのおじさんが現役のサーファーで、家では鳥を12羽飼っていて、休日はその12羽に順々に水浴びをさせるのが楽しみなのだ、という話を聞いた。いろんな人生があるな、としみじみする。ちなみに、そのおじさんは名脇役・酒向芳に似ている。お昼は、1000円が支給され、それを握りしめ定食屋へ。自分で小鉢などを取っていくタイプの店で計算が難しい。お財布を置いてきていたので、なんとか1000円以内に収めないとならない。本当は注文してから焼いてくれる卵焼きや秋刀魚などを食べたかったが、それだけで500円くらいかかるので、比較的安かったイワシの梅煮とアジフライ、それにライス(小)とみそ汁で900円。危ないところでした。定食屋のテレビで巨人の監督に松井秀喜が就任のニュース。応援しているチームではないが、さすがにテンションが上がる。最初に触れた国民的スーパースターの野球選手なので。当時はパ・リーグの試合を観るのが難しかったので、やっぱりイチローより松井なんだよな。松井は下敷きやサインボールのレプリカも持っていました。


帰り道に聞いた斎藤京子のソロデビュー曲「元気にしてた?」がすばらしくて感動。


ここ最近聞いたJ-POPで1番好きかも。アイドルじゃないほうのストーンズの新曲「Who You Callin’ Crazy」がフレッシュで最高でした。LISA(BLACK PINK)のシングル「Tarantino」というのは、あのタランティーノ?そういえば、タランティーノの自伝本『おれの映画人生』読みたかったんだよな。Clairoの盟友Claudのニューアルバム『Me and the Music』がリリースされた。これも良い。


夜は『ミュージックステーション』の2時間スペシャルを観た。adieuの正体が上白石萌歌だと知り、妻が驚いていた。別にadieuは正体を隠していないのに。STARTO社のKEY TO LITがデビュー。期待しているのだけど、キテレツという名前で、そのまま奇天烈な曲と衣装というのは、ちょっと冴えないなと思った。デビュー前に出ていた音楽番組でシックな衣装でSMAPの「華麗なる逆襲」をカバーして披露していて、それはすごく恰好よかった。曲が圧倒的にいい、というのもありますが。


10月24日土曜日

妻は美容院に出かける。昨夜、眠る前に「ケント(『パウパトロール』)の髪型にしてよー」と娘がねだり、寝ぼけ眼の妻が「わかった、わかった」と適当に答え、それを真に受けた娘がめちゃくちゃ楽しみにしている。「早く美容院、行きなよー」とむやみにせかしている。妻が髪を切り終え、帰ってくるとなった時も、わざわざマンションの下まで迎えに行き、ニヤケが止まらないらしく手で口を押え、ワクワクしながら待ち構えていた。であるから、なんらケントの髪型になっていない妻の登場に号泣。かわいそうだけど、笑ってしまった。ちなみにケントは前髪をツンツンに立ち上げた、サイドツーブロックです。


泣き止んだ娘を連れて、イオンタウンに行き、本屋を覗き、スーパーで買い物。店内も秋冬仕様に変わっている。シチューのルーの棚シェアが増えている。わたしはクリームシチューがあまり好きではないのだけど、10年前にハウス食品から出た「シチューオンザライス」にはまだ可能性を見ている。さらに改良して、白米に合うクリームシチューを完成させてほしい。たぶんニンニクを入れまくればいいのだけど、そうするとハウス食品っぽくないのだろう。


レイトショーで山戸結希監督の『ママがもうこの世界にいなくても』を観に行く。地方都市の撮影がとても良い。終始映画を走り続ける黄色いVolvoも良かった。川口春奈も良かったが、母親役の小林聡美の佇まいが良くて、涙。父親役の役者が見たことありまくるのに誰か思い出せなかったのだけど、クレジットで確認したらデヴィ伊東だった。森田望智が熱演していたのだけど、山戸監督のあの手触り(言語化できない)が、わたしはちょっと肌に合わないのだった。しかし、いい映画だった。同じような映画で、2014年の塩田明彦『抱きしめたい-真実の物語-』を思い出した。あちらも名作だったな。


10月25日日曜日

三重へ1泊2日の旅行。台風の影響で、朝から大雨でしたが、この日のために購入しておいた山下達郎『JOY 2』を流して、ご機嫌にドライブしました。すっごい鳴りでビックリする。名盤。わたしの大好きな「ターナーの汽罐車」が収録されていてうれしい。『ARTUSAN』からの曲が多めですね。


ドライブの途中で、「診療所のレストラン」という看板を見つけた。それってたぶん「お医者さんパスタ」じゃん、と興奮する。お昼はお目当てのトンテキのお店がお休みだったので、四日市にある農場レストラン「こぶたの家」というお店でとんかつを食べた。そして、お目当ての伝説的な子どもの本専門店「メリーゴーランド」へ。店主の増田喜昭は河合隼雄、長新太、五味太郎(お店の看板も手掛けている)などとも親交があったらしい。すべてがあるぞ、というような素晴らしい品揃えと店の佇まい。店主と五味太郎の対談本『本屋は回る』、『子どもを描く 林明子の世界』、妻は福音館書店の『おせち』を購入。娘は『おもちのおふろ』という絵本を選んだ。あと、『たくさんのふしぎ』の“ひま”特集を購入。素晴らしいテーマだ。さらに、絵はマンガ家のスケラッコ。妻は長新太デザインのTシャツも購入していた。「岩嶋屋」という和菓子屋で薄皮饅頭を買って食べる。


ちょうど雨が止んだので、日本一という御在所ロープウェイへ。とても長くて、15分も乗れる。雨上がりだったからか、猿がたくさん山から降りてきており、娘が大興奮。ホテルはなかなかにボロく、娘に「オバケ猿屋敷」と名付けれていた。しかし、とても気にいったらしく、「また来よう」と言っていた。ボロいし、大浴場も辛気臭かったけども、屋上に展望台があって、夜景が綺麗でした。御在所にお越しの際はぜひ。夕食を食べて、お風呂に入った後、売店でハーゲンダッツのバニラ味を買った。500円もするけど、歯を食いしばって買った。わたしも小さい頃にホテルの自販機でハーゲンダッツを買ってもらい、それが甘美な思い出となっているので。娘は「えー!?ごはんの後にアイスを食べていいの?特別だぁ」と踊っていた。ひょうきんだ。部屋の広縁に座って食べる。はじめてのハーゲンダッツ、どんな反応をするかなと期待していたら、第一声は「固い」だった。


10月26日月曜日

朝から再び大雨。ホテルの朝ごはんはうれしい。『冬のなんかさ、春のなんかね』というドラマで杉咲花演じる主人公が、旅館に泊まっておきながら朝ごはんを食べないと言い出し、彼氏であるところの成田凌も珈琲だけでいいとキャンセルしていて、「違う世界の話すぎる・・・」と驚愕してたのだけど、フードエッセイストの平野紗季子も「信じられない」と言っていて、安心しました。ホテルって朝飯食いに行くところだよなぁ。


「日の出製菓」へ行き、お土産に炭酸せんべいを買う。素朴でとても美味しい。缶のデザインもかわいい。お昼は「そば切り 石垣」という店へ。寒かったので、ざる蕎麦ではなく、温かい鴨と三葉の蕎麦を食べた。しみじみと美味しい。「アクアイグニス」という施設にある100%源泉かけ流しの「片岡温泉」で風呂に入る。綺麗で広く、温泉もヌルっとしていて気持ちいい。水風呂がなかったので、冷水を身体に当てて、温冷交代浴とした。身体がポカポカになる。


帰り道に滋賀県の東近江市を通っていると、道路に現れる無数の「飛び出し坊や」に娘が喜ぶ。そう、東近江市は「飛び出し坊や」発祥の地で、100m置きに設置されているくらいにめちゃいるのだ。「飛び出し坊や」のデザインは本当に素晴らしいので、キーホルダーが欲しくなり、ネットで調べてみると道の駅に売っているとのことなので訪ねてみると、ノートしか置いていなかった。「久田工芸」という飛び出し坊やを製造している工房を訪ねてみるも、ステッカーのみで、キーホルダーは置いていない。しかし、作っている様子を見学させてくれた。なんでも全国から「飛び出し坊や」のファンがこの工房に訪ねてくるらしい。「飛び出し坊や」は依頼すれば2万円しないくらいで作ってもらえるらしい。製造現場を見て、そのデザインの美しさに改めて感銘を受け、いよいよどうしても欲しくなってしまい調べに調べたところ、アウトレットに併設されている「湖の駅 滋賀うれしや」にあるとの情報を得て、向かうことに。そこには、本当に「飛び出し坊や」のグッズが大量に販売していた。キーホルダーに3Dフィギュアにステッカーにノートに靴下にクッキーやラングドシャまであった。その中から木型のキーホルダーとメモクリップを購入。「飛び出し坊や」は看板であるので、アクリル製より木型がふさわしい。


満足感に包まれ高速で帰路に着き、夜ご飯は「丸源ラーメン」に寄った。『1日外出録ハンチョウ』18巻に収録されている「帰路」という傑作エピソードにインスパイアを受けて。川越旅行を楽しんだハンチョウ一行だったが、帰り道に寄ったロードサイドのラーメン屋(完全に「丸源ラーメン」を模している)のラーメン・チャーハン・餃子の三点セットが結局のところ旅での1番美味しい食事だった、というお話。改めて、『1日外出録ハンチョウ』の着眼点は素晴らしい。なにより「丸源ラーメン」は子連れの味方だ。座敷でのびのびと食事を楽しみました。家に着く直前にカーステレオでCDを流して聞いたSMAP「どんないいこと」「しようよ」があまりにも良くて、「泣くほどにいい曲だね」と妻に伝えたら、感極まって本当に涙ぐんでしまった。SMAPについて喋ろうとするとすぐ泣いてしまう。

「Cook Do® きょうの大皿®」WEB CM『きょうのおいしい味方』の素晴らしさについて

なんか最近
ごめんばっかり言ってる

良い。あまりに良いので、30回くらい観てしまった。わずか1分という尺の短い動画に、ここまで感動できるなんて。まず、マユリカ阪本の発する「ごめん」の声色のバリエーション。なんて謝罪の似合う男なのだろう。このCMに限らず、カメラが捉える阪本の身体性は、「なんか、(おってしまって)ごめんさない」という存在論的な罪悪感のようなものを放っている。シュッとしているし、俳優顔(若い頃の森田順平に似ている)なのだけど、クネクネしていて、どこか所在ない。いるだけで切ない、それは阪本のお笑い芸人としてのチャームでもある。そんな切ない男が、幸福な家族の風景に溶け込んでいるさまがたまらなく涙を誘う(実際の阪本も立派な新米パパであるのだけど)。『M-1グランプリ』のキャッチコピー「ずっとキモダチ」とあるように、永遠の青春性を称えていたマユリカの芸風が成熟へと進み出したわけで、相方の中谷でなくても涙を禁じ得まい。また、「パパだって、やだ!やだ!やだ!やだ!」という感情と身体の爆発、あまりに阪本の“ニン”に合っていて、マユリカファンであればニヤリとしてしまうだろう。そして、なんと言っても阪本の声の良さ。マユリカのラジオがおもしろいのって、やっぱり2人とも声がいいからなのだ。ナレーションにおける阪本の発するトーンの柔らかさは、“命の温かさ”そのもののようにすら感じる。


衣装や美術も作り込まれていて、登場人物たちが暮らしていることへの説得力になっている。部屋に散らばるぬいぐるみや図鑑から、息子は恐竜が好きなのだろうな、などが伝わってくる。1分の動画に対しての、キャラクターの作り込みが凄い。息子を演じた久保田薫くんは演技が上手すぎる。余談になりますが、『Tシャツが乾くまで』にて中島歩の息子を演じたことでもおなじみですが、おかげでマユリカ阪本が国民的スター中島歩とイコールで結ばれました。また、狙いすまされた絶妙なあるある。掃除中にルンバにぶつかるとか、保育園に迎えを担当した父親がスーツ姿で子どものリュックを肩掛けしている、といった細部のリアリティを詰めていくことは、生きることの充実を描くことと同義だ。音楽と同期したカットチェンジのリズムが小気味よく、1分の尺の中で挿入される住居や街並みのロングショットも贅沢。監督や撮影のクレジットは見当たらないのだけども、本当に素晴らしい仕事のように思います。


CM全体を貫く「ごめんね」という感覚は、子どもに割く時間や手間が少ないのでは、という共働きの夫婦が抱える罪悪感に結びつく。しかし、“Cook Do”という少しの罪悪感を内包した時短料理が、家族のシアワセな時間を増やしてくれるのだという反転が巻き起こり、観る者に心地よい救済の感触を残します。今度スーパーに寄ったら、CookDoを買って、豚バラ大根を15分で作ろう、と素直に思えた。完璧な広告動画ではないでしょうか。

最近のこと(2026/10/1~10/5)


今年は1回も「最近のこと」を更新できていなかったので書く。10月分の思い出を全部書こうと思ったけども、仕事が忙しかった中盤は記憶がほとんど残っていなかったので、はじめの5日間だけ書いてみようと思う。その前に少しだけ、今年を振り返りたい。


娘は春から保育園に通いだし、社会性を帯び、より人間らしくなってきた。保育園へのお迎えをして、家に帰るまでの道のりが涼しくなりだいぶ快適になってきた。夏は本当に疲弊した。しかし、3歳の娘と手を繋いで歩いて帰る時間、「過ぎ去ってみれば・・・」とかではなく、現在進行形で尊さがゴオゴオと押し寄せている。踊ったり、歌ったりしながら歩くし。風に揺れる木々を見て、「葉っぱが喋っているねー」とか普通に言うし。これくらいの年齢の子どもの言語感覚は最高だ。昼寝をさせようと頭から布団をかけると、「わー、夜に包まれたぁ!」と言う。「親にハマろうとして、さすがにやりすぎてないか?」と、わたしの中の岩崎う大(かもめんたる)が顔を覗かせるくらいに良い。う大さんと言えば、9月に放送された『マツコ&有吉 かりそめ天国』のファミリーロケが最高に楽しくて、家族エッセイ『家族コント』も読んでみたのだけど、これまた素晴らしかった。子どもが1から5歳くらいまでの時期を一生ありがたがって余生を過ごすのかな、とか思っていたのだけど、なんだかずっと楽しそうだぞ、と思わせてくれた。”家族“へのカウンターカルチャーが多すぎるので、まっとうに「家族っておもしれー」という表現もあってもいいように思う。あと、娘が星野源にハマっている。特に好きなのは、「時よ」「フィルム」「Family Song」「異世界混合大舞踏会」です。車で「Family Song」を家族3人で熱唱して、さすがに幸せなのでは、と思った。「好き」のMVを一緒に見ていたら、藤井隆と飯尾和樹に対して「この2人好きだなー」と言っていた。いい趣味している。続けて、藤井隆の「ナンダカンダ」を見せてあげたら、爆笑していた。


この夏といえば、ドラマ『Tシャツが乾くまで』だった。いや、なによりも中島歩だった。ドラマの後半は作家の伝えたいことが前景化しすぎ、破綻しているように感じてちょっとついていけなかった。作家の思考は、形式の中で勝手に零れ落ちてしまうくらいが好みです。5話で、蒼井優が机に粉チーズをぶちまけてしまうあたりや6話の回想編の松山ケンイチの佇まいが最高に良かった。なにはともあれ、毎週金曜日を楽しみに過ごせたので、いい思い出です。そして、中島歩だ。元々好きでしたが、時代とチャンネルが合っていく感じにゾクゾクした。異常な量のメディア露出を追いかけまくりました。これが推しというやつか。『人生最高レストラン』とか『日曜日の初耳学』とかはじめて観ました。いっぱい出てましたが、やはり『爆笑問題日曜日サンデー』『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』『中島歩のオールナイトニッポンZERO』のラジオ3本が格別によかったですね。雑誌とかチェックしてしまっていて、どんな服も似合うし、音楽の趣味もかっけー。最近はJeff PerkerやNils Petter Molvaerなどを愛聴しているらしい。あと、細野晴臣の「Close To You」のカバー(『Heavenly Music』収録)!わたしもなぜかこの夏めちゃくちゃ聞いた。あとは、北村英治『ハッピー・クッキング』とか鈴木弘『キャット』などの日本のジャズやカーネーションやBad Bunnyをよく聞いてしました。『バッハの音楽的宇宙』という本を読んだので、バッハを演奏している名盤とされているものをたくさん聞いた。



今年は9月になるとかなり秋らしくなった。暑かったけども、ここ数年の残暑が酷すぎて、“秋らしさ”のハードルが下がっている。月見バーガーと秋刀魚があれば秋。あと、白茄子をはじめて食べたのですが、美味しくて驚いた。トロットロのジュワジュワ。じっくり焼いて、ポン酢・バター・にんくに・かつお節を適当にかけて食べるのがおすすめです。9月は『ブレイキング・バッド』と『いつか、無重力の宙で』をチビチビと観ていたのと、山田稔明『pilgrim』がサブスク解禁されたのでたくさん聞きました。あと、『爆笑問題カーボーイ』がずっとおもしろくてうれしい。太田夫妻がカラオケ行く話、好きです。飲茶楼のCM曲「飲茶楼で、めちゃうまかろう」(少年ナイフ)が太田さんの作詞とは知りませんでした。わたしの中では飲茶楼と言えば、モーニング娘。で、ノベルティでキーホルダーがついてくるから、めちゃくちゃ集めていました。『有吉クイズ』(大好き)でこたけ正義感が、2000年公開のモーニング娘。主演の映画のタイトルは?というクイズを出題していて、誰も答えられていなかった。こたけ正義感、同世代だな。ピンチランナーじゃん!なっちが「わたし、走る!」って叫ぶ予告たくさん見かけたじゃん。押尾学も出ていたじゃん。



娘は『ブルーイ』と『おさるのジョージ』を観過ぎてやや飽きてきて、今は『パンどろぼう』と『パウパトロール』に夢中だ。『ブルーイ』は一緒になって楽しめたというか、親のほうがハマっていたくらいなのですが、『パウパトロール』のおもしろさはまだよくわかっていない。娘はスカイが好きらしいです。カラーがピンクなので。関西弁喋っているラブルというブルドッグのキャラがいるのだけど、オリジナルではどういう扱いなのだろう。ときに、「犬のおまわりさん」って日本の童謡だけども、世界的にも“動物の警察”は犬なのだろうか。警察といえば、『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』には本当にビックリさせられた。真に腰が抜けるほどつまらないのはこっちだろ。連ドラ版(最高!)から映画4本を全部観直して挑んで、さすがに14年ぶりならそれなりにエモく、おもしろくなっているかなと思ったら、しっかりと裏切られた。映画公開にあたって、織田裕二主演の『お金がない!』がFODやTVerで観られるようにあったのはうれしかった。わたしはあのドラマの織田裕二が歌う主題歌「OVER THE TROUBLE」がとても好きなのだ。あと、カップリング曲の「ひたすらな君だった」もなかなか良いです。作詞は戸田暢美。織田裕二の狭い歌唱音域を愛している。



読んだ本でおもしろかったもの。上田信治『成分表/偽マキロン・哀しみについて』、直江政広『甘い泡のような記憶』、川北省吾『親書 世界現代史-なぜ「力こそ正義」はよみがえったのか』、半藤利一と宮崎駿『腰抜け愛国談義』、岩松了『岩松了戯曲集』、若林正恭『青天』、若林正恭×國分巧一朗『帳の向こう』、鶴見俊輔『太夫才蔵伝 漫才をつらぬくもの』、益田ミリ『ツユクサナツコの一生』、清野とおる『壇蜜』1~3巻、近藤聡乃『ニューヨークで考え中』5巻、三栄版の水島新司『ドカベン』16巻(最高!!)、ひうち棚『見てないと しょうちしないよ』1巻、荒川弘『鋼の錬金術師』『黄泉のツガイ』あたり。忘れているものありそうですが、全部おもしろかった。あと、宮沢賢治と江戸川乱歩と村上春樹を何冊か読み直した。『夏帆』も読みました。『木村伊兵衛のパリ』とか『桑原甲子雄 東京昭和十一年』とか昔の写真集も何冊か買った。そして、買って積んだままになっている本が無数に。



あと夏くらいからジムに通い出した。かつての自意識であれば、絶対に無理だったのですが、もうおじさんなので平気でした。最初は週3くらいのいいペースで通えていたけども、ここ最近は週1~2回をウロウロしている。筋トレ中や有酸素運動中に音楽とかラジオを集中して聞けるので、けっこういい。身体に変化は特に感じていませんが、健康診断で去年悪かった数値が全部改善していました。でも、それは毎朝サバ缶の水煮を食べていたおかげな気がします。わたしのSNSはサバ缶と筋トレの情報しか出てこないのですが。「Xの“おすすめタグ”が邪悪過ぎて見てられない!」って怒っている人をよく見かけたけども、あれって自分の写し鏡なんですよね。


10月1日木曜日

『路傍のフジイ』の完結巻をもう一度読み直す。フジイとの別れにしっかり寂しくなって、出会えてよかったと思えた。誰も漫画にしてこなかった領域を普遍的に仕上げていて、わたしの中で、永遠のマスターピースとなりました。いくらでも続けられそうなのに、スパっと終わらせたのもかっこいい。『路傍のフジイ』を読むと中村一義が聞きたくなる。『金字塔』を聞いてから、その影響元であろうTony MacaulayによるEdison LighthouseやFlying Machineなどの楽曲を聞いた。Tony Macaulay、大好き。生活の設計の新曲「週末にたどりついて」が最高だ。往年のSMAP(それこそ戸田暢美が作詞の)の都市生活者のくたびれと喜びを描いたようなフィーリングがある。生活の設計は春先に京都でライブがあって聞きに行ったのだけど、ナイスなライブバンドぶりでした。名盤『長いカーブを曲がるために』のアナログも買いました。


この日は妻が遅番だったので、夜は娘と2人。保育園に迎えに行き、ごはんを食べさせ、お風呂に入り、寝かしつけ。


ヤッホイのコント「お医者さんパスタ」を流しすぎていて、わたしが「お医者さんパスタ」とつぶやくと、「お医者さんが家で作るパスタ」と娘がかぶせてくれるようになった。「お医者さんパスタ」はAztec Camera「All I Need Is Everthing」にイントロを流し続けているのが最高におもしろいのだけど、ヤッホイは出囃子にも「Oblivious」を使用しているらしく、心に“Knife”を忍ばせてやがる。わたしもいまだにThe BEACH BOYS『Pet Sounds』、Prefab Sprout 、Aztec Cameraを頭の中に住まわせている人間なので、断然応援である。


10月2日金曜日

Spotifyでニューリリースをチェック。佐野元春「シグナル-名前のない混沌」、aiko「あなたの花の色」に魂を揺さぶられる。佐野元春はいつだったわたしのアイドルだ。森七菜の新曲「カフェ・オ・レ」が、クレジットを確認しなくても、わかる濃すぎる“あいみょん”印で笑ってしまった。AIにあいみょんの音源を学習させて作ったみたいな曲。もちろん、いい曲ですが。「これ、AIじゃね?」に疲れている。エンタメ系の感想がAI文法そのまま投稿されていることへの嫌悪感が強い。人間の生の思考と文章で抗っていきたいけど、それすらも食われていくのだろうか。でも、職場でAIに傾倒して、生成画像ではしゃいでいるのってほとんど40オーバーのおじさんなのだけど、AIって本当に流行っているのでしょうか。


仕事の移動中はヘビーローテーション中のTinashe『Popstar』とリリースされたばかりのThe Beatles『Rubber Soul』の2026mixを聞いた。空気階段の水川かたまりが子の生まれた喜びを表すために「In My Life」をラジオで流していたことを、聞くたびに思い出す。あと、更新されたばかりの『岡野陽一の肉の塊』をチェック。このラジオは妻が最も愛聴している番組で、ステッカーが欲しいので送るメールを考えてくれと頼まれているのだけども、そういったものを生み出す筋力がわたしにはない。そもそも、わたしは肉ではないし。異様にこの番組に入れ込んでいるので、妻はたぶん肉。岡野さんがジュリエットと『Friday』に撮られていた。なんかおしゃれなパンツ履いていてショックでした。


妻が通院で遅くなるので、今夜も娘と2人。金曜日のお迎えは遅い時間になってしまうので、帰りにスーパーに寄って、お惣菜を買う。揚げ物が好きな娘にはコロッケを買おうと思っていたのだけど、「この串に刺さっているのがいい!」と強く主張してくるので、彼女にとって人生初の焼き鳥。焼き鳥はとても気に入ったらしく、残さずに食べた。コロッケと言えば、『おかあさんといっしょ』の10月の歌「コロッケこれっきゃない!」は素晴らしい。折坂悠太のペンなのだけど、姫田真武(天才)っぽさも感じる。娘は家族3人でいる時より、父と2人きりののほうが素直で聞き分けがよくなる。気を使ってくれているのだと思う。寝る前に「ちょっとふざけていい?」と聞いて、ひとしきりベッドで飛び跳ねたり、歌ったりするのがおもしろいです。


10月3日土曜日

週明けに東京で会議があるので、妻に交渉し、土曜日からの東京入りの許可を得た。ひさしぶりのたっぷりとした一人時間にウキウキしてしまう。新大阪駅の売店で「水了軒」の八角弁当を買い、ホームで新幹線コーヒーを購入。浮かれている。八角弁当は大阪名物の駅弁で、中島みゆきの好物と聞く。「大阪でのコンサートを終えた後、水了軒のお弁当をホテルの自室で食べるのが楽しみ」とMCで発言したらしい。大観衆のステージを降り、ホテルで静かに慎ましいお弁当をつまむ中島みゆきの姿を想像するとなにかグッとくるものがあって、八角弁当に地位を高まっている。八角弁当は煮物中心の地味なお弁当で、若い頃の自分であれば「煮物で米が食えるか!」とちゃぶ台をひっくり返していたと思うのだけど、歳を重ねた今はたいへん染みます。大阪駅で駅弁買うなら、「御菓子司 絹笠」のおこわ“とん蝶”もオススメです。


新幹線に揺られながら、江國香織『落下する夕方』を読み進めた。三宅香帆のYouTubeチャンネルに加藤千恵が出演していて、オススメしていたので。大学生の頃に江國香織の小説はけっこう読んだので、『落下する夕方』も読んだような気がするのだけど、あまり覚えておらず。あらすじも読ませるけども、なによりディティールの描写が良い。執拗に登場するセブンアップとか。ポッドキャスト『朝井リョウ・加藤知恵 信頼できない語り手』を愛聴しているのだけど、まだ両者の著作を手にしたことがないのが気にかかっているのですが、その距離感もおもしろいので、もうしばらく温めてみようと思う。


昼過ぎに東京駅に着き、そのままスーツケースを引きずりながら実家へ。わたしのスーツケースにはダウ90000の事務所「カニバブル」のステッカーが貼ってあります。最寄り駅のファミリーマートで、Tシャツと靴下を買った。わたしはファミマのコンビニエンスウェアを愛用している。TシャツはXLを洗濯・乾燥を重ねて縮ませると快適なサイズ感になります。靴下はお馴染みのラインソックスではなく、ショートソックスが好き。おろしたての靴下を履く気持ち良さは、気持ちいいことランキングでもかなり上位に入ります。実家に荷物を置き、母親の自転車を借りて街へ繰り出す。まずは高円寺に出向き、古本屋や古着屋を回った。新しくできていた「ダムブックス」という古本屋が品揃も良いし、リーズナブルな値付け。小島信夫『アメリカン・スクール』、高橋源一郎『ペンギン村に陽は落ちて』の文庫(それぞれ200円くらい)、と鈴木惣一朗が聞き手の細野晴臣『とまっていた時計がまたうごきはじめた』を買う。古着屋では、NIKE GOLFのナイロンアノラックを買った。ネイビーとベージュの切り替えしの配色がかわいかった。18時に飯田橋駅で待ち合わせて友人たちとごはんを食べる約束をしていて、まだまだ時間があるので世田谷方面まで自転車を走らせていたら、電動自転車のバッテリーがなくなってしまった。一気に鉄の塊と化す自転車。Googleマップによると、ここから電車で飯田橋へ向かうと50分、自転車で向かうと60分とのだったので、頑張ってそのまま漕ぎ続けることにした。絶対に誤った選択だとわかりながら。桜新町→駒沢→三軒茶屋→渋谷→青山→皇居→市ヶ谷→飯田橋と大都会を鉄の塊で横断。道玄坂や皇居の坂道はさすがに無理で、自転車を降りて推し進める。風の冷たい気持ちいい気候だったが、汗だくになった。結局到着まで80分くらいかかってしまう。しかし、無事に飯田橋駅で友人と落ち合うことができ、「おけ以」で餃子を食べ、「南印度料理 TOKYO BHAVAN」へ梯子。たっぷりの有酸素運動で腹ペコだったので無限に食べられた。「おけ以」の餃子もうまかったが、とにかく「南印度料理 TOKYO BHAVAN」が衝撃的でした。イチジクにヨーグルトチーズをかけた前菜からマサラドーサ、ナンもライスも何を食べても旨かったが、なによりバワンマトンマサラの強烈な旨味に感動。「今まで食べたマトンのカレーで1番美味しかったです」と店員さんに伝えるほどに。人見知りのわたしが!食後に、夜のデニーズでひとしきりダべる。20年以上の付き合いの友人たちと、いまさら「好きな果物」の話をしてしまった。最近のわたしは断トツでイチジクが1位なのですが、「それはかっこうをつけすぎている」と言われます。「好き果物」の話は、わりと盛り上がるのでたまにするのだけど、6割の人が桃か梨と答える印象があります。ファミレスを出て、再び鉄の塊を漕ぎながら実家に帰った。帰宅が遅くなり、いい歳して母親から怒られた。10代、20代の頃にやっていたようなことを、ひさしぶりに全力でやれてうれしい。しかし、東京はどこまで行っても、人に溢れていてすごいです。


10月4日日曜日

朝起きて散歩。涼しかったので、この旅行のために買ったOutilのバスクシャツを着る。着慣れた服で出かけるほうがいいと思うのだけど、旅先では新しい服を着たくなってしまう。ブラウンとアシッドライムのボーダーバスクシャツで、とても派手だ。アシッドライムなんて普段は買わないのだけど、Charil XCX『Brat』の気分を引きずっているのです。『Music,Fashion,Film』も好きですが。散歩のままに喫茶店に行き、パソコンで沖田修一監督の『さとこはいつも』について書いた。とても好きな映画だ。恐るべき新人・姫野花春、最高。黒田大輔と宮部純子の夫婦も良かったな。折坂悠太と柴田聡子による主題歌「シミレ」も素晴らしい。沖田作品の『おらおらでひとりいくも』と『子供はわかってあげない』も観直した。『Tシャツが乾くまで』を観て、蒼井優は田中裕子みたいな女優になれるのでは、と思ったのだけども、『おらおらでひとりいくも』ですでに田中裕子の若い頃を演じていたのだった。ブログを書き終えて、昨日買った『とまっていた時計がまたうごきはじめた』を読む。おもしろい。大滝詠一が亡くなった時期の対話集なのだけど、大滝くんとアルバムを作るのを手伝いたかったと言っていて、泣く。あと、大滝詠一が『A LONG VACATION』を出す前に、細野家に車でやってきて、今度は俺がメインストリームに行くぞ、と宣言しに来たという話もグッときた。


昨夜引退試合をしたヤクルトスワローズ石川投手のセレモニー動画を観て、涙腺爆発。わたしにとって石川はヤクルトスワローズとイコールである。とても寂しいが、必ずやスワローズのユニフォームに再び袖を通してくれると信じて。2026年のスワローズは、前半は1位の時期もありましが、最終的にはドラゴンズと最下位争いの5位でした。山野の覚醒と奥川の復活はうれしかったし、来年は澤井、西村、田中、松下、ニキータがスタメンに常駐してほしい。それでも結局、山田哲人が好きなわたし。


この日は実家を離れ、池袋「サウナかるまる」を宿とする。荷物の出し入れをしたかったので、カプセルタイプではなく、ホテルタイプのコンパクトシングルにした。広くはないが、清潔で快適。チェックインしたついでにサウナに入る。蒸サウナと薪サウナ、最高。昨夜の疲れを癒し、神保町に出かけた。「ミロンガ」か「ラドリオ」で珈琲でも飲もうと思ったが、行列していたので諦める。何軒か古本屋を覗き、なぜか一大観光スポットと化している「矢口書店」で、倉本聰のテレビドラマ脚本集『うちのホンカン』『6羽のかもめ』『前略おふくろ様』の3冊セットを買う。めちゃくちゃに重たい。幡谷駅に移動して、「Equal」でフレンチクルーラーを買う。高くて美味しいフレンチクルーラー。でも、わたしはミスタードーナツではフレンチクルーラーはあまり注文しない。2個頼むということであれば、オールドファッションorシナモンオールドファッションとハニーチュロもしくはエンゼルクリームです。学生時代からの友人たちと「タイ料理 ミャオミャオ」でディナー。小さなお店だけど、人気でとても混雑している。どの料理も美味しかったけど、ドリンク注文催促がしつこくて、その印象が強く残った。軽くサウナに入ってから寝る。熟睡。


10月5日月曜日

少し早めに起きて、朝風呂に入ってから営業所へ。「サウナかるまる」での宿泊、正解。ビジネスホテルに泊まるより安いのに、サウナ入り放題でぐっすり眠れる。お昼に東池袋「バロッサ」のチキンカレーを食べる。スープタイプのカレーはあまり好まないのだけど、ここの本当に美味しい。パスタやハンバーグも美味しいらいしのだけど、いつもこのチキンカレーを頼んでしまう。長丁場の会議を終えて、駅に向かっていると芸人さんがライブの呼び込みをしていて、なんとなくチラシを受け取ったら、元・浜口浜村の浜村凡平太だった。浜口浜村は誰も観たことのない漫才を発明し続ける大好きな漫才師だった。2014年頃にやっていた『三四郎・浜口浜村・ドリーマーズの3組のライブ(仮)』はたぶん全部の回に通った。思わず「浜村さんですよね!」と声をかけてしまった。とても驚かれていた。


家族の大好きな鳩サブレを買うために、西武百貨店に寄る。なんかしばらく見ないうちに変わっしまったというか、ほとんど電気屋になっていて、迷った。鳩サブレが『VIVANT』 とコラボした商品を出していて、素朴でかわいいのがミソなはずなのに、ブランディングを間違っていやしないかと思ったけども、保守的なお菓子ということなのでしょうか。会社の人と『VIVANT』の話をすると時、わざと“ヴィヴァント”って言ってしまう。西武のBENTOステーションで「津多屋」ののり弁を買った。めちゃくちゃひさしぶりに食べたけども、全部のおかずがしみじみと美味い。茶色くて地味なのだけど、わたしの中でNo.1お弁当。池袋駅にパンどろぼうがいた。帰ったら、娘に自慢しよう。新幹線では適当にパソコンを叩いたり、本を読んだりして、過ごす。疲労困憊だ。

沖田修一『さとこはいつも』


とびきりにチャーミングでユーモアに溢れている。沖田修一の映画はいつも、素晴らしい。スクリーンに大写しにされる役者陣の顔。有村架純の目の情報量は改めてすごいし、石田ひかりに今なお宿る少女性にも驚かされるが、新人・姫野花春の顔の力にとにかく魅入ってしまう。若さが、命が弾けている。彼女たちの顔に宿る“書くこと”の恍惚。「書いては直し、書いては直し」といった作業の快楽を、端的に表現した音(シャーペン、タイピング、鉛筆)のありかたに涙腺を刺激される。そして、誰もが書くべき“物語”を人生に内包しているということ。それはなんらかの形で放出されるべきであるということ。 



 とても不思議な映画でもある。“さとこ”という同じ響きの名前を持つ、前述の3人が演じる年代の異なる女性が映し撮られていくのだけども、“美しさ”と呼んでいいであろう各々の輝かしい個性を描いていきながら、あたかも3人は“さとこ”という1人の女性なのではないか、と観客に錯覚させるような構造になっている。この感覚は、沖田作品には頻出していて、『おらおらでひとりいくも』(2020)で、桃子という女性を田中裕子と蒼井優と浅田芭路が年代別で演じ、さらには彼女が内包する“さびしさ”や“諦念”を宮藤官九郎、青木、濱田岳、六角精児らが演じていて、あれもまた不思議な映画であった。『さかなのこ』(2022)では、さかなクンの半生映画の主役ミー坊役に女優の“のん”を起用し、さらにミー坊に大きな影響を与える“ギョギョおじさん”という役にさかなクンを起用するなど、1人の人物を複数の役者で分裂させてしまうというのは、沖田監督の癖のようなものなのかもしれない。『さとこはいつも』に話を戻すと、聡子(姫野花春)に決定的な影響を与える寺尾先生(吉田羊)が、なにやら沙都子(有村架純)の記憶にも存在しているようだし、その寺尾先生は里子(石田ひかり)がまだ書き上げる前であるはずの物語を、出版された本として読み耽っている。1人の“さとこ”の半生を3人の女優で描いているのかと思い始めると、聡子と里子、沙都子と里子が同じ画面に収まり、あきらかに他者として会話を始める。観ていると混乱してしまうのだけど、この伏線や考察を嘲笑うような、自由な感覚が心地良い。  


とにかく『さとこはいつも』は、時空を超えて、影響を及ぼし合う歪で緩い円環構造を持っている。そして、その感覚は画面にも落とし込まれていて、この映画のあまりにもキュートなオープニングを思い出せば、聡子がネブライザーを鼻から吸い、口から“霧”を吐き出すシークエンスであった。そして、聡子は寺尾先生が吸って吐き出す煙草の“煙”に魅入られる。どちらも、見事な循環構造を持ったモチーフだ。この霧や煙という“流動体”はフワフワと漂い、思いもよらぬ人の元に届き、混ざり合う。人が他人の人生に残していく痕跡のようなもの。それこそが沖田修一が20年の映画監督人生で撮り続けているもののように思う。『南国料理人』(2009)、『横道世之介』(2013)、『子供はわかってあげない』(2021)、『さかなの子』(2022)といった作品を例に挙げるまでもなく、「ほんの一瞬のようであっても、ともに過ごした時間は、誰かにの人生に確かな影響を及ぼすのだ」ということを、沖田作品は常に描いている。“さとこ”たちが、あたかも1人の女性であるように思えるのは、彼女たちは互いの人生を「ドラマよりドラマよ」「物語みたい」と何気ない一言で称え、“書く”という行為を後押しした存在だったからだろう。それだけで、お互いの人生に強く混ざり合ってしまう。  


沖田修一が撮るのは流動体だ。であるから、この映画において、窓やカーテンは開け放たれ、揺れている。*1“風”が通り抜けるように、“小鳥”が自由に飛べるように。知られざる“わたしたち”の物語が、どこかの見知らぬ誰かに届き、影響を及ぼしますようにと。 映画のラスト、3人の“さとこ”がはじめて画面に一同に介する時、窓の外ではそれを祝福するかのように風が吹き、木々揺れ、彼女たちの髪を優しく撫でている。

*1:沙都子パートでは、その開いた窓から中村優子演じる侵入者が顔を覗かせている、という素晴らしく笑えるシーンが撮られている

ダウ90000蓮見翔『ある午後の野原夫婦だゾ!』


ダウ90000蓮見翔が脚本を手掛けた「ある午後の野原夫婦だゾ!」が賛否両論らしい。たしかに「お笑い流行ってない」を持ちギャグとして無双している蓮見翔が書く『クレヨンしんちゃん』ということで、ゲラゲラと腹を抱えて笑い転げるようなものを期待していたとすると、肩透かしだったのかもれない。でも、これが脚本家のクレジットを伏せて放送されていたら、狂気回!斬新すぎ!とか言って祭り上げられていたような気もするのだけど。大人向けであるのはたしかで、小さい子ども達からすると退屈だったかもしれない。しかし、年を重ねてから、「なんか昔、めっちゃ変なクレヨンしんちゃんの回あったよな?」とかファミレスで語り合う時間が生まれるのならば、それはとても尊いではないか。


献立案としてのカレー、クレヨン、ヒロシの靴下の色・・・と“黄色”というモチーフで繋ぎながら会話を横滑りさせ、画面には映らない“匂い”を立ち上げていくという手法は演劇的すぎたか。センスの押し付けでしたでしょうか。個人的にはとても興奮しましたが。

ひろし:ウエットティッシュどこ?
みさえ:そんなでいちいち使わないでよ、もったいない

みたいな会話はどうでしょうか。演劇的というよりも、これまであまり書かれてこなかったけども、いや、書くまでもないことかもしれないけども、たしかに日々に存在する営みのあるある。この絶妙な領域のあるあるを、コントロール良く投げ込んでくる蓮見翔の筆致には、いつもグッときてしまう。「ひろしの靴下の色を描くために、しんのすけのクレヨンは黄色から先になくなっていく」という愛の描き方もすばらしいですね。*1


同棲カップルの会話のようで、“夫婦”というものへの解像度が低いという批判を目にしたのだけども、果たしてそうだろうか。通常回のみさえよりも女の子っぽかったのはたしかだろう。みさえは29歳で、2人の子持ちのママ。しかし、10代の女学生のみさえや、ヒロシと出会ったばかりのハタチ過ぎみさえというのもかつてたしかに存在していて、それらは消えてしまったのではなく、29歳のみさえに内包されていて、今も時々顔を出すのである。たとえば、しんのすけやひまわりもいない夫婦2人だけの昼下がりに。この感じというのが、夫婦の会話にも落とし込まれている。


ひろし:てぇか、クレヨンってくせぇな
みさえ:は?
ひろし:くさくないか?クレヨン
みさえ:そんな言うほどじゃないでしょ
ひろし:なんか独特っていうか、図工室の匂いっていうか
みさえ:図工室ぅ?
ひろし:こんな感じだったろぉ?図工室
みさえ:えー図工室は違うでしょう
ひろし:違うってなんだよぉ
みさき:だって図工室の匂いの中に、クレヨンの匂いが入っているんだから、
    たとえになってないでしょぉ?
ひろし:えぇ?クレヨンは図工室にないだろぉ
みさえ:あったわよぉ
ひろし:みんな図工の時間の時に、自分のクレヨンを持っててたじゃん?
みさえ:じゃあ、あるじゃない
ひろし:え?
みさえ:いつもは置いてなくもて、持っていって使ってたんなら、
    その瞬間にはあるでしょ

クレヨンはいつも図工室に置いてあるわけではないけれど、たしかに図工室の匂いを構成する一部である、ということを喋っている。ひろしとみさえは父と母であるけども、同棲カップルのような時間がかつてあって、その親密さは今でもたまに顔を覗かせる。それらはいつも表面化しているわけではないけど、見えないところにたしかにあって、ひろしとみさえという2人を形作るものなのだ。


ゴチャゴチャ書いてしまったが、ひろしとみさえという国民的な夫婦の、誰にも知られることのない親密な時間を描くというアイデアがシンプルに良かった。ワンシチュエーションでほぼワンカット。カメラをほぼ固定し、アクションや芝居を抑制しながらも、ひろしとみさえというキャラクターの世界観を拡張させている。しんのすけを登場させないのというのをはじめ、『クレヨンしんちゃん』という作品が積み上げてきた財産に制限をかけながらも、作品の枠を広げていくというのが粋でした。

*1:『おかあさんといっしょ』でおなじみの坂田おさむ「どんな色がすき」じゃん!