青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

『マユリカのうなげろりん!!』の”成長しない”って約束じゃん


ラジオ関西制作のPodcastマユリカのうなげろりん!!』は聞かれておりますでしょうか。2021年の放送開始から5年前を数え、放送回数は200回を突破、各種サブスクリプションではPodcast視聴ランキングの上位に連ね、初期に発売した水着写真集『Perfect!!』は重版を繰り返し7500部突破、イベントを開催すると配信のチケット販売枚数が20000枚を超える、という完全なるモンスターラジオなのである。


番組はコーナーなし、リスナーからのハガキなし、2人のフリートークだけで30分を突っ切るストロングスタイル。やや色物に見られがちなマユリカであるが、2人だけの濃密な空間を立ち上げ続けるトークの地力は、もっと正統に評価されてもいいだろう。番組開始から抜群におもしろく、「#2 小僧解体新書」や「#4 マユリカ聖地巡礼」あたりを聞けば一発で虜になること間違いなしなのですが、最近の回じゃないと聞く気がしないという方のために、ここ1年間ほどのオススメ回を挙げておきます。2024年であれば、「#124 その手で」「#130 お前、ほんまに垢抜けへんよな?」「#131 ナルトの同期」「#133 風まかせ」「#145 88000」「#146 オレハシアワセ」「#165 さゆり」「#166異論は認めん」「#168 チェリッチェリ」「#170脂まかせ」「#174 おめでとう」あたりでしょうか。中谷が阪本にマウントを取ろうとして返り討ちに合う定番のシリーズに、阪本が中谷の誕生日にプレゼントしたラブドールさゆりの怪談シリーズ、阪本の結婚報告会など。個人的にベストは「#168 チェリッチェリ」で、2人が学生時代にアニメ『けいおん!*1ハロプロアイドル、メイド喫茶に熱中していたキモダチエピソードが最高にキュートな上に、「あの頃の熱狂を取り戻したい」と中谷がキャバクラ通いを始め、今年の5月まで続く“キャバ嬢サーガ”のきっかけとなる回であります。2025年に入っても、「#182 お前なんで脱毛せぇへんの?」「#184 恋愛スカシ」「#187 パソコン」「#188 想像のスライドショー」「#189 冨島桜」「#190 耐えうらん」「#192 ときめき」「#195 付き合ってくれてありがとう」「#197生まれてきてくれてありがとうなぁ」など、前述のキャバ嬢サーガや中谷号泣シリーズなど充実が止まらない。


番組開始当初は大阪よしもと所属、まだまだ知る人ぞ知る芸人だったマユリカは今や、『M-1グランプリ』決勝に2回登りつめ、『ラヴィット!!』といった朝の番組でも見かける売れっ子中の売れっ子。であるにも関わらず、ラジオのおもしろさが擦り減っていない。これはなかなかに異常事態なのである。2025年3月8日配信の『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』にて以下のような指摘が行われている。

川北:これは本当にその、難しい問題になってくるんだけど、
   空気階段のラジオがやっぱ売れてからおもんなくなったというか
ガク:ああ、そう?
川北:関係なくなったなって
ガク:川北が個人的にね
川北:いや、でもわかるでしょ?関係なくなるのよ
ガク:まぁね、そうね
川北:うん、芸能人のラジオになっちゃうから
ガク:遠いものになっちゃう

個人的には『空気階段の踊り場』は今もおもしろいラジオだと思うけども、この指摘は非常に的を射ていて、リスナーとの“親密さ”というものと密接なラジオというフォーマットは、パーソナリティのライフステージがリスナーとかけ離れてしまうと、そこに綻びが生じやすい。まさに、川北の言うころの「関係なくなってしまう」という感覚だ。そして、二律背反であるのだが、パーソナリティのステージが上がっていくさまをリスナーが共に楽しんでいくところにも芸人ラジオの醍醐味がある。『オードリーのオールナイトニッポン』などは“大河ラジオ”なんて呼ばれ方もするほどに、オードリーの芸人として、人間としての成長ドキュメンタリーであって、それが大きな熱狂を生み出している。『オードリーのオールナイトニッポン』はラジオとして破格の存在であるからして(それこそ東京ドームでのラジオイベントの配信はライブビューイングと合わせて15万枚である!!)、川北の指摘を乗り越えるパワーを持っているのだけども、そんなコンテンツは稀、ほとんどの芸人ラジオが川北の指摘に殺されてしまうだろう。


マユリカの2人はこの“関係なくなってしまう”といいう危険に自覚的であり、『マユリカのうなげろりん!!』において、仕事の話は極力しないというルールを自らに課している。『水曜日のダウンタウン』や『ラビット!!』など話題になった番組の裏側がどうだったとか、ジュースごくごく倶楽部やZiDol(新曲の「リバプールママレードボーイ」、大名曲!!)の活動への想いとか聞いてみたいような気もするのだけど、そういった話は一切しない。それこそ、前述の2人だけの世界を立ち上げられるトークへの自信に裏づいていた選択なのだろうけど、これが実にクレバーな判断で、マユリカがどんなに芸能界のステージが上がっていこうとも、ずっと変わらない“あの頃”の2人で居続けられる。「俺ってなんで彼女できないのかなぁ」というような学生時代から幾度も続けてきたのであろう駄弁り、さらには幼稚園からの幼馴染にである2人は、「肛門・ウンコ・チンコ」というようなチャイルディッシュな下ネタを永遠におもしろがり、転がり続けている。成長しない、だからマユリカのラジオには感動はないのだけど、繰り返し聞くことのできる安心感と耐久度がある。この国のビジネス業界に蔓延している“成長”神話の息苦しさからの逃避としても『マユリカのうなげろりん!!』は機能しているのかもしれませんね。


マユリカの2人はラジオの中での成長を放棄することで、リスナーに精神の安寧と笑いを与え続ける“日常系”のキャラクターになったのだ。前述のとおり、マユリカの2人が京都アニメーションの『けいおん!』に夢中になり、

まじで、あの娘ら(『けいおん!』のキャラクター達)
ほんまにこの現実世界におってくれへんかなぁ

と話し合っていたことも示唆的だ。そう思えば、『M-1グランプリ』における、“ずっとキモダチ”というキャッチコピーも秀逸なものに思えてくる。キモダチ、“変わらず”に居続けてくれるもの。川本真琴の「愛の才能」という楽曲にこんなフレーズがある。

「成長しない」って約束じゃん
冗談だらけで 猛ダッシュしてよ

まさに『マユリカのうなげろりん!!』について歌っているようである。マユリカよ、“成長しない”という約束を守り、冗談を撒き散らし、笑わせ続けて欲しい。

*1:『うなげろりん!!』の”!”って『けいおん!』由来なのですか