テレビ朝日のバラエティ番組『有吉クイズ』において5月終盤の第1弾から、はやくも第2弾が放送中の新企画「有吉と行くメモドライブ」、これはギャラクシー賞ものの大ヒットではないだろう。ヒコロヒーの言葉を借りるのであれば、“発明的な企画”というやつだ。内容としては、普段あまり交流のないメンバーでドライブロケをしながら、お互いに気になったことをスマートフォンなどにメモし合うという至極シンプルなもの。第1弾のロケメンバーが有吉弘行・河井(アインシュタイン)、小宮(三四郎)、兎( ロングコートダディ)、水川かたまり(空気階段)、第2弾が有吉弘行、水田信二、奥田(ガクテンソク)、中谷(マユリカ)、草薙(宮下草薙)という、ややこしい自意識が交錯するあまりにも絶妙なバランス感覚のメンバーチョイスに舌を巻く。ドライブ中の座席の位置によって、役割が固定されていき、各々の個性が際立っていくという建付けも見事だ。あと、企画の本筋とまったく関係ない第1弾における、夢を見ているかのように奇天烈なさくら楽曲の車内アカペラ熱唱も最高。第2弾で言えば、中谷のエンドレストランポリン。即興で異様な世界観を立ち上げられる有吉の采配力が光ります。
スタジオでロケVTRを眺めるヒコロヒーと霜降り明星せいやが漏らす。
テレビで観れないタイプの陰湿な企画
まじで『あいのり』みたい、なんか
この対極にあるような感想が同列してしまうのがこの企画の凄みだ。本来であれば、口には出さないような言葉が画面上に次々と浮かび上がっていく快楽性は、まるで“世界そのもの”が立ち上がっていくように感じるからだろうか。暮らしの中で、口をつぐんでしまうような悪態や文句。たとえば、ドリンクの飲み口を持って渡されたことや他人の運転のブレーキが強すぎることに対して苛立つ卑小さ。そしてそれを自覚しているからこそ我々は口をつぐみ、ロケメンバーはメモにしたためる。もしくは、恥ずかしくて口にできない誉め言葉。ピザの注文に悪戦苦闘する草薙に他のメンバーが呆れる中、「草薙も随分立派になったな、ちゃんとピザの段取りできてるわ」とメモする有吉の隠されていた父性になどには、思わずホロリ。そして、「楽しいな」「嬉しかった」「怖いな」「いい匂いしたな」「緊張するな」という口に出すまでもない些細な感想・・・このVTRには、本来であれば、発声されないすべての感情が可視化されている!!
ロケ自体の中身は薄くても、本当にたくさんのメモが飛び出す。良いことも、悪いことも、人って本当にたくさんのことを思考するのだな、と思う。番組が進むにつれてスタジオから「かわいい」というワードが頻出していくことにも証左だが、生活の中では必死に取り繕っているわたしたちは、本来はこんなにも複雑でこんがらがっていて、その“本当の姿”はとても可笑しく、かわいいのだ。