青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

最近のこと(2020/06/13)

Gamble and Huff という作曲チームのフィラデルフィアソウルのコンピレーションを聞きながら気持ちと荷物を整え、お世話になったホテルを後にする。オープンと同時に京橋駅にある不動産屋に駆け込み、契約したマンションの鍵を受け取る。内見の時に打ち解けたはずの担当者がなんだか冷たい目をしているな、と思ったらワイヤレスイヤフォンを耳につけたままなことに気づく。音を消していたのでつけていることすら忘れていた。「あぁ!すいません」と慌てて外すと、担当者に笑顔が戻った。鍵を受け取りマンションまで歩いて向かっていると、雨が降ってきた。ローソンに駆け込み、ビニール傘を買う。引越しはあいにくの雨模様の中での作業になりそうだ。契約した部屋に入ってみると、「ここで暮らしていくのか」と武者震いのようなものを覚える。7年ぶり2度目の引越しなので、この感覚をすっかり忘れていた。

お昼ご飯を食べようと近所を散策する。周りには素敵そうな飲食店がたくさんあるのだけど、余所者気分で気後れしてしまい、結局「餃子の王将」に入ってしまった。"オムカレー炒飯"というバカみたいな店舗オリジナルメニューがあったのでそれを単品で頼み、追加で餃子を一人前。大阪の街を外回りをしていると、とにかく「餃子の王将」と「大阪王将」の看板が目に入る。さすがに営業マンが昼からニンニクを摂取するわけにはいかないのでずっと我慢していたので、パンパンになった餃子欲をゆっくりと満たす。帰り際に大阪のスパイスカレー界で名高い「Columbia 8」を見かけた。途切れそうにない行列だったが、こんなに近所ならすぐにでも食べに行きたい。

引越し屋、レンタル家具屋、ガス会社、ネット接続などに対応しているとあっという間に日が暮れていた。インターネットが開通するのは2週間後ということで、MacBookiPadが無用の長物に。NetflixDAZNが観られないし、ブログを更新するにもiPhoneで文字を打ち込まないといけなくなる。携帯からだと文章のグルーヴ、というと偉そうだけども、なにかこうトーンのようなものを整えるのが難しい。

メルカリで購入したミスタードーナツの灰皿が届いていた。たまたま見つけて、安かったのもあり、煙草は吸わないのについ買ってしまった。本当かどうかはわからないけども、昭和期のモデルらしい。表面には「World's best coffee&Fresh Donuts」と刻印されていて、味わい深い。一つは玄関の鍵置きとして使い、もう一つは喫煙家の友人が家に遊びに来たらサッと差し出そう。昔のミスドは煙がモクモクと立ち込めていたイメージだけども、ミスドで煙草屋吸うなんていうのはもはや幻の出来事のようだ。一通りの部屋の尺を測って、「京阪シティモール」にて生活必需品を買い揃える。雨の中何往復もしてヘトヘトに。ネットで購入したソファーやテーブルはしばらく届きそうにないので、段ボールを机代わりにする日々が続きそうだ。

ダンボールだらけから幕開けた日々は
想像よりも少しだけ忙しく過ぎていってる
片付くことを知らない この部屋はなんだか
他の誰かの暮らしから借りてきたみたいだ

と歌われるofficial髭音ism「パラボラ」が実に気分だ。生活の中でフッと頭の中に流れて心情に混ざっていく男性ボーカルのJ-POPって槇原敬之以来かもしれない。

ときに会社がレンタルしてくれた冷蔵庫がとにかく小さくて、2リットルの飲料ペットボトルを入れるともう窮屈。マヨネーズもケチャップも立てて置くことができない。これで自炊は難しそうだ。在宅勤務でムクムクと芽生え始めていた自炊欲が勢いよく萎んでいく。夜になってシャンプーリンスやボディソープを買っていないことに気づいて、雨の中をドラッグストアへと歩いた。店に着いて、食器用洗剤や浴場洗剤も必要なことを思い出す。もろもろを適当に見繕い、ついでに店頭で発見したペヤングを一つ買う。ペヤングは関東ローカルと聞いていたが、大阪でも手に入るのだな、としみじみした。湿気が凄まじい夜でエアコンでドライを入れる。これぞクーラーという匂いで部屋が満たされ、わたしはあの夏へとトリップした。見知らぬ部屋で居心地は悪いが、ベッドは東京の家で使っていた馴染みのものなので、安心に包まれて眠ることができた。