青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

最近のこと(2020/06/07)


www.youtube.com
朝早くやってきた引越し屋さんに荷物を引き渡し、東京での最終日が始まった。そんな日の日記に貼るにふさわしい音楽はなんだろう。KAN「東京ライフ」と迷いながらも、大好きな槇原敬之の「東京DAYS」を選んだ。

家具屋でみつけた緑色の
1人がけの大きなイス
自分の部屋に置くとしたら
どこがいいか考えてた

そうしていつか1人分を
自然に選んでることに
少し淋しくもなったりしたけど
悪い気分じゃないんだよ<<
日常の何気ない所作や思考、その解像度の高さ。そして、より良い自分でありたいと願う”切実さ”が彼の歌には常に横たわっている。槇原敬之というポップシンガーは圧倒的なメロディセンス、コード感覚、歌唱力の持ち主であると共に、類稀なる文筆家なのだ。

起きてから引越し屋が来るまでの時間、radikoで『さらば青春の光がTaダ、Baカ、Saワギ』(TBSラジオ)を聞いた。「勝ち抜き!東ブクロの嫁決定戦」があまりにおもしろかったので、引越し屋のお兄さん達にも聞かせてあげたいくらいだった。森田と東ブクロの性欲はプロの性欲という感じがして、もはや演芸だ。下衆さも極地までいくと清らかにすら感じる。あと、最近聞き逃せないのはGERA放送局の『錦鯉の人生五十年』『ランジャタイのサンバイザー』と『モダンタイムスの家なしブサイクラジオ』の3本。これぞノンフィクション芸人という感じで生命力の凄みすら感じる。GERA放送局はランキングにおいてもラランドが絶対王者で、たしかに2人の話芸は素晴らしいのだけど、スタッフやリスナーを含め彼女たちを取り巻くすべてのノリがちょっと苦手だなと感じ始めています。スタッフが手叩いて笑うのとかも嫌なんだよな。

お昼を食べに下板橋という池袋にほど近いマイナー駅で営業している「八仙花」というカレー屋さんへ。ポークビンダルとオクラとナスのキーマの2種盛り。しばらく食べられないので、贅沢にうずらのピクルスもトッピングしてみた。

めちゃくちゃ美味しい。東京の美味しいカレー屋はどこも並ぶし、土日は営業していないところが多いのだけど、ここは土日も営業しているし、場所のせいか並ぶことは一切ない。オススメのお店です。一口噛むごとに弾けるスパイスで脳内が覚醒してしまい、ハイな気分のままに30℃近い気候の中を歩いて帰ることにした。しばしのお別れとなる東京の風景を素敵なものとして記憶したかったので、Mayer Hawthorne『A Strange Arrangement』を聞きながら歩いた。あと、宇多田ヒカルの新曲「誰にも言わない」がとてもエッチで素敵な音楽だった。「罪を覚えるより/君に教わりたい/今夜のことは誰にも言わない」である。今はどうかわからないのだけど、歌人穂村弘のサイン会は、相手をジッと見つめた後に彼の作品の中からサインに一首添えてくれるというシステムだった。大学生の頃に2回ほど参加したことがあるのだけど、そこで選んでもらった短歌が

罪の定義は任せるよセメダインの香に包まれし模型帆船

「写真、1枚もないんだ、ごめんね」とチューインガムの匂いの夜に

というどこか意地が悪くてエッチな歌だったのが、なんだかうれしかったのを思い出しました。

途中あまりの暑さに、コンビニで「ガリガリ君リッチチョコミント」を買って食べる。家に着くとクタクタになってしまい、ソファに横になってプロ野球の練習試合の中継を見ていたら、そのまま眠りに落ちる。目が覚めると夕方になっていて、東京最終日にかこつけて近所の銭湯のサウナに入りに行った。なんてことないビル型銭湯で情緒も何もないのだけど、サウナが110℃と熱々で、水風呂の地下水っぽい柔らかさが気に入っているホーム銭湯。あいかわらず客層は柄が悪く、浴場の半数が刺青入りだった。板橋区の銭湯は”TATOOあり“なのだ。柄は悪いが、礼儀作法が悪いわけではないのでまったく問題ない。数ヶ月ぶりのサウナと水風呂は、はじめてサウナを体験した時のように身体中の血が蠢くような感覚に襲われて昇天。銭湯を出ると、夕暮れの風が火照ってた身体にあまりに気持ちよく、家までの帰路ですっかり精神がととのってしまう。

東京での最終夜だ。なにかもっとこうやりたいことはあるはずなのだけど、少し荷物の空くなった部屋、起きていると寂しくなってしまいそうなので、いつもより早めにベッドに入った。