青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

欅坂46『初ワンマンライブin有明コロシアム』


欅坂46の初の単独ライブの2日目を有明コロシアムにて目撃!これがもう”夢”のような楽しさで、ステージが終幕に従うに連れ、その”夢”から現実に引き戻される寂しさには思わず落涙を禁じえないほどでした。素晴らしい芸術というのは、そういった”寂しさ”を必ずや付随している。アイドルのライブの感想に際して、いささか大袈裟であろうか。しかし、あの有明コロシアムにおける強烈なパッションの発露と瑞々しい身体、そして表情の躍動、その強烈さは”夢”としか表現しえない。おまけに「サイレントマジョリティー」「二人セゾン」・・・2016年の最良と呼ぶことに何ら躊躇を覚えぬ突出したいくつかのポップミュージックがその夢には流れているのである。



「大人は信じてくれない」「語るなら未来を・・・」というダーティなプロダクションと美術・照明の元にアグレッシブで逸脱したダンスを繰り広げる冒頭の2曲。ここでもう欅坂46独自のカラーのようなものを完全に魅せつけられた想いである。タイトル引用元であるフランソワ・トリュフォー大人は判ってくれない』のアントワーヌ・ドワネルの孤独と反抗、そして疾走。つまりは「僕は息を切らして走るけど、さぁ、君はどうする?」という問いかけの眼差し。欅坂46のダンスは、観る者にアクションを誘発させる。


自戒と自虐を込めて書くが、こういった大袈裟なサブカル的な感性でもって寄せるグループへの期待は、いずれ彼女達にとって大きな足枷になるだろう。既に『ロッキングオン』や『クイックジャパン』といった媒体がすり寄り、”革命”、”反抗”、”天才”といった劇薬のような単語でグループを煽っている。勿論、それは運営側の戦略・思惑とも一致しているし、平手友梨奈という才能を前にして、そういった言葉をペンから放たずにはいられない欲求もおおいに理解できる。「大人達に支配されるな」というメッセージを、完全にプロデュースされたアイドルが歌う矛盾を成立させてしまうのは、大人の想像、企みというのをいともに簡単に超えてくる平手友梨奈の表現力に他ならない。しかし、

不安と孤独を主旋律にしながらオーディエンスと濃く純度の高いコミュニケーションを紡ぐ初のアイドルだということが、今日の初ワンマンを観てよくわかった。

というような書き方どうだろう。その点においては、欅坂46だけが特別なわけではない。アイドルは当然として、10代の少年少女を題材した芸術作品は、どれもが等しく不安や孤独を基本コードとしながら、それを見つめる者と強い交感を果たしてきた。文学、映画、演劇、アニメーション、ポップミュージックといった表現が紡いできた連綿と続く文脈を、その最先端で引き継ぎ、最も美しい出力でそれを放っているのが、2016年の欅坂46というアイドルグループなのだ。


また「大人や社会への少女達のレジスタンス」というレジュメは大いに魅力的ではあるが、そのようにまとめてしまうことで零れ落ちてしまう欅坂46の魅力はあまりに多い。例えば、長濱ねるの存在はどうだ。名前から顔の形から体型まで、全てにおいて美しい丸みを帯びた彼女が発する古き良き往年のアイドル像が呼び起こす歌謡性。「乗り遅れたバス」「また会ってください」という名曲を君は聞いたか。

「青空が違う」で一斉に揃った志田愛佳菅井友香守屋茜渡辺梨加渡邉理佐の5人の瞳を潰さんばかりの絶対的美貌。そして、あの幸福感に満ちたサンタクロースコスチュームを纏ったメンバー総出のラインダンスはどうだ!?それらには、反抗や革命といった文脈は何ら意味をなさない。グループアイドルの魅力というのは、簡単にレジュメできない多様性にこそ支えられているはず。


さて、ここからは雑感。今回のライブに加えて、twitterにもブログにも書いてなかった欅坂への想いを、いい機会なのでバーっと書き散らしたい。もう我ながら、ほんと五月蠅いし、長いので畳もう。

・メンバーの成長と意志の強さに涙


・メンバー全員が同じ方向に目掛けて前進している。その共同体としての美しさは、今の乃木坂46ではもう味わえないものかもしれない。


・セットリストがいい。シングル3枚しかリリースしていない為、ようは全曲ライブなのだけど、曲順が凝っている。シングル3曲をラストをもってくる(時系列とは逆に!)のもしかり、「渋谷からPARCOが消えた日」から「渋谷川」、「夕陽1/3」から「制服と太陽」などいちいち流れに気が効いている。


・平手無双と長濱無双。ルックスは勿論、声が抜群にいい。選ばれた声。あの2人が「夕陽1/3」において、1つのマイクを分けあって歌うシーンときたら、全UKロックファンが涙。ねるのソロ曲の素晴らしさに比べると、てちソロ曲はちょっと惜しい。方向性はバッチリなのだけど、あと少しだけフックが足りないように想う。


・完全に暫定キャプテンな菅井友香さん、好き。異様なまでにMCの負荷がでかい。しかし、ちゃんと喋れている。ポンコツなのも愛らしく、正しき坂道グループのキャプテンの系譜だ。


・ゆいちゃんずが四畳半フォークを復権させる。曲と声さえ優れていれば、まだまだああいうフォークも聞けるものだ。


小林由依渡邉理佐のどちらが西野七瀬的な存在に化けるのかが楽しみなのだ


今泉佑唯の小柄ながらも、躍動感のあるダンスが素晴らしい。タカナシシンゴによる個人PV「落ちてきた天使」は傑作。『二人セゾン』個人PVのベストだ。これぞ、『少年サンデー』的ラブコメ。短編ながら、細かい台詞や設定も充実していて、1クール観たくなった。何よりずーみんを抜群にかわいく撮っている。推したい。


・サンタ衣装のフードがどうしても外れないずーみん(今泉佑唯)を見て、対のフォーメーションであるてち(平手友梨奈)が瞬時に自分も外さない、という判断を叩き出し、難を凌いだ叡智。夕方の部では、フードが外れず、1人デロデロな衣装で踊っているべりか(渡辺梨加)がいるとこも含めてよかった。


・タオルを掲げるファンに気づかない長沢菜々香の身体をグイっとして、「ほら、あそこ」と笑顔で教えてあげる尾関梨香。あいつ絶対いいやつ。MCのよくわからない所で泣く織田奈那もよかった。彼女達が報われる世界であって欲しい。


・どんどん存在感を増していくサトシ(佐藤詩織)もいい。整った顔立ちと底ぬけな明るさは、この日のライブでの髪型も相まって、乃木坂46桜井玲香の姿を重ねてしまった。


渡辺梨加を推しメンに決めたい。最初はそのあまりの何もできなさに(喋れなさ)に、苛立ってすらいたのだけど、内に秘めたポテンシャルを見るにつけ、気持ちを改めた。どうしても上手くやれない。いつてだってそんな風に想いながら生きている私のような人間が、祈りみたいなものを注ぐ対象としてあまりに適任ではないか。何でもあれほどの美貌を持ちながら就活で50社全て落ちたそうな。うう(涙)バラエティやライブではほとんど喋れない彼女だが、個人PVやドラマなどの映像作品で魅せる演技や佇まいはいつも完璧。個人PVも常にトップ3に入る素晴らしさだ。


・「僕たちの戦争」がライブで観ると大変よかった。まるで現代アートみたいなフォーメーション。
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・そして、私の隠れた推しメンは米谷奈々未である。これまでの3枚のシングルでは最後列に甘んじているが、いずれチャンスは回ってくるはず。なんといっても笑顔が飛び抜けていい。人に何かを与えることのできる笑顔。ライブにおいてもファンへの指差しパフォーマンスが抜群。番組収録においても、いつも1番楽しそうで好感を持ちます。まだ16歳ながら肝は座っているし、非常にクレバーさも感じる。「B型だよなぁ」という感じも好き。脇坂侑希による個人PV「yu-dachi megami」も大変良かった。
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この表情!録音とラストの「少年よ大志を抱け」という台詞がもう少し別の何かであれば、文句なしの傑作だったはず。


けやき坂46の素晴らしさ。当初は悪手だなぁ、と思っていたが、ひたすら謝罪したい。「ひらがなけやき」「誰よりも高く跳べ!」という名曲をありがとう。乃木坂46の「ぐるぐるカーテン」~「走れ!Bicycle」の幸福感がここにはある。アマチュアが芸術に飛躍してしまう瞬間みたいなものが。欅坂46がデビュー曲からあまりにもトップギアで駆け抜けていってしまい、少し寂しく思っていたのだけど、けやき坂46をして「こういうのが観たかったんや!」と思わず叫んだ。「誰よりも高く跳べ!」はMVも含め、今年度ベスト級だ。
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振り付けが素晴らしい。そして、アイドルの概念を覆す井口眞緒があまりに凄い。


柿崎芽実という逸材。けやき坂46で長濱ねると共にセンターを任されている15歳の新星。斎藤飛鳥級のアイドルに育つ予感に満ち満ちています。映像で観る以上に素晴らしい。ダンスも上手。名字はカ行に満ち、名はマ行のみで構成されている。なんたる新しい響きだ。君の名は希望である。


・アンコールで披露した新曲「W-KEYAKIZAKAの詩」は賛否両論らしいが(確かにタイトルはださい)、名曲だと思いました。メロディーも練られているし、歌詞も気合が入っている。「願いや祈りに支えられるのも悪くない」というリリックに射抜かれた。