Hi,how are you?の8cm短冊シングル『バンホーテン』がリリースされました。3曲入り800円。ジャケットもかわいくて最高の出来栄えなのですが、とにもかくも表題曲「バンホーテン」が名曲。2曲入りカセットテープ『MINISTOPDIARY』ではまだおぼろげにしか見えてこなかった2人の音楽的才能が堪能できる。原田君は自分だけのメロディーを持っている。音色のセンスが抜群なのだ。イントロのギターの音だけで飯が食えます。歌とギターと鉄琴のみのビートレス編成から生まれてしまうリズムが心地よい。クリスマスソングだというのに、煌びやかな街には目を向けず、ひたすら部屋の描写に終始している。そこに宿る等身大のメロウネスときたら。これが本当にジャストでいつまでも聞いていられます。とりあえず来年のクリスマスまでは聞き続けよう。歌詞がね、素晴らしいな。もう思いきって全部引用したい。
バンホーテン、冬。
粉の味
ペコちゃんのマグカップぺとぺと
日めくりカレンダー
めくれずにまた年の瀬ちゅーばっか毛むくじゃら
火燵と万年床
低温やけど 白い息
霜やけ ボンネット
指でなぞった我愛你
二十四に明石家サンタとTELEPHONE LOVE
真夜中のふたりごと
靴下のなかにはプレゼント
あなたがわたしにくれたもの
ピートタウンゼント
七面鳥もツリーもない
いつものクリスマス
わたしがあなたにあげたもの
かたちにならないクリスマスバンホーテン、冬。
クリスマスソングに「明石家サンタ」を出してくるセンスには、やられた！という感じですね。他にも峯田とイノマー、曽我部恵一、昆虫キッズ、jitterin'jinnなどが言葉のみならずメロディーまで飛び出す後半のサンプリングセンスも楽しいのですが、名詞の羅列でイメージの点を繋ぎ叙景を紡ぎ出す前半が最高ではないか。確かな才能です。言葉とメロディーの差し引き加減に俳句などにおける取捨選択の美学のようなものすら感じます。とりあえず天才の一言です。
2曲目「シャ・ラ・ラ」はサザンオールスターズのカバー。個人的にはオリジナル版より奥田民生とつじあやののデュエットの印象が強いです。世代的にハイハワの原田君もそうかもしれませんね。民生がとても気持ちよさそうに歌っていたのがとてもいいのだよな。このハイハワの「シャ・ラ・ラ」を聞いていると、学生時代、クラスメイトとのカラオケ大会にて女の子に「ねぇ、一緒に歌おうよ！」と思いきって声をかけてデュエットした事を思い出します。その子の歌が意外とたどたどしく下手っぴで「何だかすっごくかわいいぞ」とうれしくなったのでした。要は馬渕さんの歌声サイコーという事です。
3曲目はユニコーンの大名曲「雪が降る町」のカバー。こちらを聞いていると、初めて行ったカラオケで、「ゆっくりしたテンポだし、歌いやすいだろう」と入れたこの曲が、想像以上の高音で全く歌えず恥をかいた事を思い出します。とても大好きな曲です。ハイハワ版もキーを落とさず苦しそうな所、いいですね。このカバーの原田君の血管の浮かび上がりそうな熱唱を聞いていると、初めてハイハワを聞いた時（http://d.hatena.ne.jp/hiko1985/20130502/p1）同様に、友人マツナガ君が布団をかぶってラジカセで録った音源を思い出します。ローファイに宿る青春。本当に好きな2曲をカバーしたという感じもありますが、桑田圭佑、奥田民生というオルタナティブな感性で日本語ロック・ポップスを更新した重要アーティストの楽曲をしっかり選曲してありますね。メロディーと言葉の乗っかり方におきまして、Hi,how are you?もまた日本語ポップスの宝であります。でも、「雪が降る町」ってずっと12/29〜30あたりの年末休みの歌だと思っていた。クリスマスソングだったのか。
書き終えてみて、何だか違和感があったので、記憶を掘り起こしてみた所、僕には女の子とカラオケでデュエットした思い出などこれっぽっちもありませんでした。カラオケで思い出す色っぽいピソードなんて、ニッチェみたいな髪型をした娘に「一緒に加藤ミリヤと清水翔太のやつ歌おうよ！」と言われて「え、嫌だよ」と断った、ってのくらいかなー。このエピソードの色っぽさは加藤ミリヤが担っています。「雪が降る町」が歌えなくて恥をかいたのは本当です。しかし、ありもしない淡い思い出を呼び起こしてくれるなんて、Hi,how are you?おそるべしです。これがポップソングの魔法というものでしょうか。年明けに出るというアルバムにも期待大。とにもかくにも、ザ・なつやすみバンド『サマーゾンビー』とHi, how are you?『バンホーテン』、この2枚の短冊シングルをゲットしておけば2013年の夏と冬のポップソングは問題なしでございますね。
