森は生きているというバンドがいる。現役大学生を含む(というか中心人物としてデーンといる)20代のヤングなバンドだ。自らを
ある意味何回も死んでる人達なので…(笑)
(ototoyインタビューより)
と自嘲しながら、亡霊のように過去の音楽に偏執し、自らのバンド名に「死(moriはラテン語で死を意味する)は生きている」なんて意味を想って喜んでいる、そんなナイスな男の子達なのです。8月22日、彼らの1stアルバム『森は生きている』

- アーティスト: 森は生きている
- 出版社/メーカー: Pヴァイン・レコード
- 発売日: 2013/08/21
- メディア: CD
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インタビューにおいて作詞を担当しているDrの増村和彦が今回のアルバムのテーマを「夢」と明言している。
夢の断片的なものを並べていって、「日々の泡沫」で包み込むようなイメージでしたね
なるほど、ほぼ全ての楽曲で夢のモチーフが描かれ、それらが繋がっている。アルバムの冒頭を飾る「昼下がりの夢」と2曲目「雨上がりの通り」は曲の繋がりが不明瞭で1つの組曲のよう。夢と夢が繋がっていくアルバムだ。バンド名の由来になぞらえて『ドラえもん』で語るならば、「夢はしご」(てんとう虫コミックス28巻に登場する夢と夢の間を行き来できる秘密道具)だろうか。各曲の詩に目を向けてみても、昼下がり、雲、雨、光、影、日傘、少女といった単語でもって、薄らとした繋がりを形成しながら並んでいる。いや、並んでいるというより、回っている。まるでアルバムジャケットに映る観覧車の回転のように。「日々の泡沫」で包みこまれた夢達が緩やかに回転している。また、アルバムのハイライトと言っていい楽曲が”回旋”の意味を持つ「ロンド」というタイトルである事からも、このアルバムの夢の回転には”循環”の意味が込められているように思う。そして、その循環の運動と浪漫は、レコード(もしくはCD)のその回転に託される。つまりは音楽だ。そして、「循環する」という事は「元に戻る」という事である。このアルバムは、いくつかの夢で美しい円を描きながら、また現実の街に戻っていく。
(てんこう虫コミックス『ドラえもん』26巻「森は生きている」より)
どこか、パラレルワールドをアルバム1枚で描き、エンドトラック「わたしのすがた」で現実に戻ったcero『MY LOST CITY』を想わせる。

- アーティスト: cero
- 出版社/メーカー: カクバリズム
- 発売日: 2012/10/24
- メディア: CD
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輪郭を失った 四次元の町では
何も始まらず 何も終わらない
退屈も喧騒も 初対面の顔で
人見知りして 通り過ぎていく
森は生きている「ロンド」
はっぴいえんどの「風街」という概念が撒いたその種は約40年を経て、2012年に『MY LOST CITY』、そして本年、もう1枚の傑作アルバムの花を咲かせた