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猫の集まる空き地に土管、鯨井先輩の歌声が「ボエー」(ジャイアンオマージュ)くらいのレベルのものは並の作家でもやれる事だからいいとして、例えばここらへん。



伝わるだろうか、これらのコマに描かれた風景や仕種に散りばめられたFリスペクトが。この家の塀とか下水溝とか、絶対にのび太達が歩いてきた道なのだ。躁鬱の落差の激しい仕草は初期の『ドラえもん』を彷彿とさせる。そもそもこのフルットという猫が美しい丸みを持っているという時点で「ドラえも〜〜〜ん」と飛び付きたくなるわけです。しかも、半飼い主である鯨井先輩はグータラ無職だ。フルットは秘密道具を出せないが、代わりにこの魔導師のような人(?)が結構な頻度で登場し、不思議な道具を授けます。

別に鯨井先輩を助けたりするわけではないのですが。フルットのドラ性の、極め付けはここ。


決して同じ構図とか台詞で書いているわけではないのですが、ここに『ドラえもん』の「さようならドラえもん」 における、のび太とジャイアンの決闘のオマージュを見る。前直接的ではなく何というか記憶レベルでのオマージュ。これ見よがしでない所に、石黒正数のF先生への強い愛を感じる。小さい頃からF作品を浴びてきた呼吸レベルの“F”なのである。かねてより、藤子・F・不二雄の後継者は、その日常とSFの境界なき融合のセンスをして、小田扉と石黒正数に他ならない、と考えていたわけだが、『木曜日のフルット』でもって石黒正数がその椅子を更に近づけたように思う。