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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

松本壮史×三浦直之『デリバリーお姉さんNEO』1話

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TVKテレビ神奈川)とGyaoにて放映が開始されたドラマ『デリバリーお姉さんNEO』は必見の作品である。なんたって制作陣が凄い。メインの監督がTHE DIRECTORS FARMの松本壮史(Enjoy Music Club)、脚本は三浦直之(ロロ)と大歳倫弘(ヨーロッパ企画)!!更に劇伴&テーマ曲は江本祐介(Enjoy Music Club)、オープニングアニメーションはサヌキナオヤ!レギュラーに板橋駿谷(ロロ)、1話ゲストには島田桃子(ロロ)と田中佑弥(中野成樹+フランケンズ)。今後もロロ周辺のメンバーが続々と登板予定らしい。なんてワクワクする布陣でしょうか。「いやいや、1人も知らないよ!」という方も勿論いるかもしれない。彼らはポップカルチャー界の新しい波である。停滞気味のテレビドラマに一石を投じてくれるに違いありません。もちろん、ローカル局とネット配信ではありますが、”新しさ”はいつだってアンダーグラウンドからやってくるのです。


“デリバリーお姉さん”というややいかがわしいタイトルでありますが、お色気はなし。お母様もぜひお子さんにすすめて上げてください(©エキセントリック少年ボーイ)。しかし、ひと昔前にこんなタイトルを中学生男子が聞きつけようものなら、それはもう大変だっただろう。眠い目をこすりながら夜をやり過ごし、家族が寝静まったリビングで音量をできる限り小さくしながらの鑑賞を試みる。なかなか始まらないウッフンな展開にイラつき、リモコン投げつけそうになりながらも、気がつけば得体の知れぬ感動に包まれてしまう。そんな素晴らしき誤配が巻き起こったに違いない。『デリバリーお姉さんNEO』はそれくらいの力がある作品だ。ちなみに私の場合は『THEわれめDEポン』であった。新聞のラテ欄から、めざとくその番組名を発見し、「これは絶対間違いない!」と興奮を抑えながら真夜中に息を潜め、こっそりとチャンネルを合わせたものです。すると、画面にはガダルカナル・タカが登場。世の中の下品な番組は全てガダルカナル・タカがMCをしていた時代なので、膨らんだ期待は確信に変わる。しかし、結果はご存知の通り。和田アキ子が麻雀を楽しむ姿を延々に見せられる羽目になり、本気でリモコンを投げつけました。麻雀=脱衣麻雀という思考回路であったので、一抹の希望を捨てきれず最後まで視聴してしまったのが、敗因でありましょう。そもそもタイトルから期待した通りの番組であるならば、地上波で放送できるわけないのだけども、そういった冷静な判断ができないのが中学生という時期である。あぁ、なんて美しい思い出。誰でもいつでもすぐに検索し、全容を把握できてしまう時代は、少し侘しい。


話が逸れすぎました。『デリバリーお姉さんNEO』は”便利屋稼業”を題材にした青春バディものなのです。便利屋という大枠の受け皿が広いので、あらゆるテーマや展開を受け止めてくれることでしょう。楽しみです。記念すべき第1話は松本壮史×三浦直之のコンビが担当。『ドラゴン青年団』(2012)、『こえ恋』(2016)など既にいくつかの深夜テレビドラマの脚本を手掛けている三浦直之ですが、今作はいよいよ本領発揮と言えます。ロロの「いつ高」シリーズに通ずるような他愛のない(しかし、充実した)お喋りが話をコロコロと転がしていく。板橋駿谷は当然として、主演の岩井堂聖子と木竜麻生のナチュラルな演技も好感。カメラワークや照明も凝っている。岩井堂聖子と島田桃子がベッドに寝そべるシーンには、『カルテット』3話における満島ひかり吉岡里帆の見つめ合いの構図のオマージュを発見して思わずニヤリ。
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猫探しの依頼のお礼として、ニシンのパイが登場しての「あたしこのパイ嫌いなのよね」なんて台詞が飛び出すジブリ作品へのリスペクトにも『カルテット』との共鳴を覚えるだろう。


徐々に「三浦直之、ここにあり!」と言わんばかりの、強烈ピュアネスな”LOVE”で画面が満たされていく。テレビでここまで強度のある言葉たちに触れられる機会はそうあるまい。

どんな言葉もあたしの気持ちに全然足りてなくて
好きって言葉じゃ何も言えてないくらい大好きだから

と、渡されることのないまま20年間書き続けられたラブレター。部屋は届かなかった愛の言葉で埋め尽くされている。

昨日ようやく書けたの
あたしの気持ちと丸ごとピッタリな言葉
あたしの想いの最高傑作

だが、その最高傑作が積もり積もったラブレターの海に紛れてしまった。部屋に積もったラブレターの封を1枚ずつ開け、読み上げ、最高傑作の1枚を探し出すのが、今回のデリバリーお姉さんの任務というわけだ。なんてロマンチック!ラブレターの対象である”ヒコ”*1という人物の輪郭が、手紙の音読によってゆっくりと浮かび上がっていく。ここらへんの描写の豊かさもまさに三浦直之の本領発揮。少しの間だけ敬語で話すね、の素晴らしさ。そして、当然と言えば当然なのだが、その最高傑作のラブレターは読み上げられることはない。想いというのは消えることなく、”今”、発される言葉に積み重なっていく。であるから、取り繕わない生の言葉を発しさえすれば、届く人にはしっかりと響く(ここで、序盤のマコの就活の履歴書の挿話が効いてくる)。しかし、書かれたラブレターもまた決して無駄にはならない。マコの拍子抜けのくしゃみが風を巻き起こし、部屋に積もっていたラブレターの屑をまき散らす。その紙吹雪は、告白を為さんとする2人の元に舞い踊る。これまでに発生したかつての”好き”の気持ちが、今まさに発されようとしている”好き”を祝福する。三浦メソッドの完璧な映像化である。ともさかりえの2ndシングル「くしゃみ」も想起した。歌い出しはこう→「風が吹けば/誰かがくしゃみする/彼女とあの人が/どうやら LOVE LOVE らしいって」


そして、今話の最も感動的なパンチラインには、こちらを選出したい。

好きって気持ちがあるとさ
周りの景色もキラキラするでしょ?
あたしが見てるキラキラは
あたしだけのものじゃないって思うの
そのキラキラは別の誰かが見てる景色も
少しは輝かせてくれるって思うの
あたしの世界が色づく時
世界も本当に色づくんだって
あたし信じてる

三浦直之は、”好き”という感情をわけ隔てなく肯定する。どんなにひどい結末を迎えた恋愛であろうと、発生してしまった”好き”は無条件に尊い、そう考えている。更にそれだけには留まらず、その”好き”が、またぜんぜん別の誰かのラブストーリーに繋がっていく、そんな美しい連なりを信じ抜いているのだ。



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*1:一緒ですねー