青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ロロ『ひらひらの』

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ひらのりょう『ファンタスティックワールド』刊行記念イベントで披露されたロロのミュージカル演劇にホロリ。何とテーマはSMAP。この国のポップカルチャーの最も偉大な成果である”SMAP”へのラブレターだ。「俺たちに明日はある」を彷彿とさせる5本のマイクスタンドの前に、SMAPを名乗るロロの5人が登場。驚くべきことに、彼らは「SMAPの新曲」とやらを披露する。この楽曲が凄い。江本祐介(Enjoy Music Club)は、コード、歌詞、フレーズの巧みな引用と構築によって、かつてSMAPに存在したフィーリングを蘇らせ、そこに新しいメロディーを吹き込み、誰もが聞きたかった「SMAPの新曲」ってやつを作り上げてしまった。これはギミック抜きの、ただただ深いSMAPへの愛であって、マキタスポーツの「作詞作曲モノマネ」のようなものとは一線を画していている(勿論、あれも面白いですけど)。ちなみにこれはロロとEnjoy Music Clubが綴る2枚目のラブレターであって、1枚目は先日フリーで公開されたEnjoy Music Clubの新曲「100%未来feat三浦直之(ロロ)」になりますので、そちらも要チェックだ。



「10年ぶりに再結成したSMAP」を演じる体で、ロロのメンバーが10年ぶりに集まる、という演劇を演じるロロ。この何重かに捻じれた入れ子構造でもって、現実と虚構を大胆にジャンプする。ちなみのロロの5人の内3人は女性なわけだけども、”SMAP”という現象の前では性差なんて何の意味も持たない!”中居正広”を演じる望月綾乃はロロ解散後は実家に帰り婚活中、”木村拓哉”を演じる板橋駿谷は美容師(『ビューティフル・ライフ』!)に、”稲垣吾朗”を演じる森本華は煌びやかな衣装作りの道へ、“草なぎ剛”を演じる篠崎大悟は土地を転がす不動産屋に、”香取慎吾”を演じる森本華は振付師に。また、この日は惜しくも欠席であった亀島一徳は”森且行”として手紙で登場。あの『27時間テレビ』における伝説の「森くんの手紙」へのオマージュが捧げられる。

みんなで江古田の焼肉屋で乾杯して、明け方、外に出て全員でカメラに向けてお尻出して写真撮ったよね。強烈に覚えています。あれが6人で最後のロロ。

僕の友達は5人以外にいません。ロロ、最高。

練馬区江古田を拠点にした劇団ロロの青春と、国民的スターSMAPの青春とが溶け出し、どこにでもある当たり前の”青春”として舞台に横たわる。当然、青春は終わるし、10年後のロロの5人も、SMAPの5人も、”あの頃の未来”には立っていない。

君に話した言葉は どれだけ残っているの?
ぼくの心のいちばん奥で から回りしつづける


SMAP夜空ノムコウ

でも、5人(ないし6人)で過ごした、あの熱狂としか呼びようのない時間というのは、はっきりとした輪郭を持って、今も尚そこいら中に残っていて、手を伸ばせばいつだって”あの頃”に戻れる。散っていったように思えた熱や光もまた、未だに確かな温かさと眩しさを保っていて、それは何と言うか、もう”恒星”のようなもので、どんどんと前に進んでいかざるを得ない僕らを、後ろから照らしてくれる灯りになるのだ。夜空ノムコウにある、”光”ってなところか。青春は終わらない。そんなモチーフを、SMAPと同化させることで、ロロ(+ Enjoy Music Club)は

SMAPは終わらない!!

そう声高に叫んでいる。