青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

『Maseki Geinin Collection 2014 冬』

事務所の垣根を越えておススメしたい芸人を、マセキから6組、ゲストから6組コレクション

というコンセプトで3ヶ月に1度開催されるマセキ芸能社の定例ライブ。マセキの定例ライブの中でも最高位にあり、この6組に選ばれるのはちょっとしたステータスである(と観る側は勝手に思っている)。他事務所のも旬から渋めまで選りすぐられている。私はこのライブでシソンヌ(よしもと)やドリーマーズ(人力舎)という好みの芸人に出会うことができた。更にMCはあのナイツが務め、トリで漫才も披露する。総勢12組のネタとトークでお値段は2000円である。リーズナブルさに加え和気藹々とした空気感、お笑いライブ入門としてうってつけではないかしら、と思っています。


2014冬の出演者はマセキ芸能社からナイツ、ジグザグジギーツィンテル、三四郎、浜口浜村、エル・カブキの6組、ゲストにスピードワゴンホリプロコム)、佐久間一行(よしもと)、どぶろっく(浅井企画)、うしろシティ松竹芸能)、ボーイフレンド(よしもと)、夜ふかしの会ワタナベエンターテインメント)の6組。いや、これは今回かなりいい面子だったのではないでしょうか。特にマセキ側がいい。ナイツは固定だけども、ジグザグジギーツィンテルというマセキ若手を代表するエースコント師2組に、三四郎と浜口浜村とエル・カブキというこれまた若手で活きのいい漫才師3組だ。何度も書くが、マセキのアラウンド30は、ここに更にニッチェという売れっ子がいて、ピン芸人ルシファー吉岡モグライダー、カントリーズという漫才師も控えているのだから、本当に層が厚くて頼もしい。以下、ネタの感想。あくまで個人的な嗜好に基づいた感想なのであしからず。順番はあやふやです。


<エル・カブキ>
楽天マー君からマックンへ。全ての話題が「早すぎたデニス」ことお笑い芸人パックンマックンのエピソードに収束するという漫才。何でもパックンマックンの話題にもっていくデロリアン林のボケに対して「誰がわかるんだよ」とツッコミながらも、膨大な知識量から更なるエピソードを添えていくエル上田。とにかく楽しい。


浜口浜村
漫才「初心」は個人的にこの日1番面白かった。スローテンポの掛け合いから「何なんだ、これは」と思わせてから、気づいたらダイナミックに飛んで行く。何回か入るフェイクも巧妙だった。どんな漫才かというとタイトル通り「初心にかえりたい」という話題から、最終的に父親精子に戻ろうと相方の睾丸に入り込もうと躍起になる漫才です。意味がわからない。マセキユースから正式所属に昇格も決まって、2014年は浜口浜村の飛躍の年の予感。


<三四郎>
いつもに比べると会場は湧き切っていなかったものの抜群に面白かった。「誰もやらない事をやる」をポリシーに作られているという漫才はどんどん脱構築されていっている。ジャルジャルのやるようなメタ漫才を、人間性をそのままにお喋りの中で魅せているわけで、一見とても稚拙に見えるが、とても高度なものに思う。初見の人はかなり見づらい漫才だと思うけれど、圧倒的な小宮さんのボキャブラリー&造語センスでそこをカバーし爆笑を掴みとっている。「漫才にマジはいらないんだよ!嘘を共有しようぜ、ピエロだよ!」って叫ぶの格好いい。そういえばTwitter上でどなたかが藤子F不二雄のキャラクター風に三四郎を描いたイラストをあげていて、それがもう本当に素晴らしかった。

絶妙すぎる。三四郎と藤子マインドの見事なハイブリット具合。相田さんをこの鼻で表現したのが最高!天才のお仕事です。


ツィンテル
トレンディコント。マセキ芸能社のシティ感を体現するコンビである。とにかくどのネタも上手でお洒落だ。マセキにおいて1番ウッチャンナンチャンの遺伝子を感じるコント師じゃないだろうか。コントの途中でタイトルを発表するスタイルやギミック類の多彩さといいオリジナリティも確立されている。


ジグザグジギー
代名詞である繰り返しコントの系譜にある新作「なめこと」はどんどん仕上がっている印象だ。観るのはもう3、4回目だけども、観る度に面白く感じる。最初はホラーテイストまで織り込むサービス精神がちょっとらしくなくて苦手だったのだけど。池田さんのツッコミでネタの精度を調整していくのだろうな。とは言え、そこまで台詞とか変わっていないと思うのだけど、面白くなっている気がするのは何故だろう。


<どぶろっく>
「もしかしてだけど」の歌。年末年始聞き過ぎて耳から離れないけど、いい歌だ。よく練られた下ネタ。「ボウリング場の隣のレーンで投げている女、もしかしてだけど、俺がボールの穴に指入れる所見てみたいんじゃないのー?」は秀逸だ。


<ナイツ>
賞レースという目標から解放されたナイツの漫才は肩の力が抜け、抜刀術の達人のような凄味を見せている。ほぼ刀を抜かずして勝ってしまうような。「最高に面白い漫才の型を思いついた」という塙の漏れ笑いだけで4分を成立させてしまう末恐ろしさ。ずるい。後は、あらゆる漫才の型を詳細に説明しや自身のスタイルの解説などを繰り返すメタ漫才の究極のようなネタでありました。