浜口浜村の解散によせて
浜口浜村が解散してしまった。もうあの2人の漫才を観る事はできない、という事実以上に堪えるものがある。世界に対する敗北、とでも言おうか。浜口浜村の漫才は本当に唯一無二であった。イマジネイティブかつラディカル。初めて彼らの漫才を観た時の喜びは忘れがたい。「こんなハチャメチャにやってしまっていいのか」という驚きが「こういう風にして(世界に)在ってもいいのか」という希望となって胸に残った。お恥ずかしい話だが、その枠組みを逸脱していくかのような自由さに、窮屈な世界からの跳躍のイメージを重ね、”革命”とでも言うような比喩を託していたのだ。しかも、彼らはとてもブルージーだった。いつも弱気に背中を丸めた少年だった。そんな男の子たちの革命なのである。支持しないはずがないだろう。
賞レースで結果は出なかった。もしかしたらそれが解散の大きな要因なのかもしれない。しかし、浜口浜村が残したものはそんな結果などよりずっと大きい。彼らの漫才の自由さが許されていなければ、ランジャタイやサツマカワRPGも今の姿では存在しなかっただろう。それは、戦友である三四郎、モグライダー、エル・カブキ、ドリーマーズ、ウエストランド・・・(と挙げれば限はないわけだが)も同じかもしれない。今年の11月に開催された『浜口浜村寄席』のメンバーを見て欲しい。馬鹿よ貴方は、ランジャタイ、Aマッソ、ジャイアントジャイアン、青春カフェetc・・・まさに”これから”を支えていく気鋭達。潰えた革命の夢はきっと受け継がれていくはずだ。「最近ご無沙汰だったな」とか「もっと観に行けばよかったな」、とかそういった失恋の後悔のような類の後悔は山のように積み上がるわけですが、とりあえず「お疲れ様でした」という気持ちでグッドバイと叫びたい。あーしかし、浜口さんのかわいさをもう観る事ができないだなんて。さらに、細野晴臣と『MOTHER』を愛する感性がお笑いの現場から失われてしまうというのはどうしたって寂しい。浜村さんのシーンへの復帰を心から祈ります。