青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

最近のこと(2020/03/14)

最終日、さすがに旅の疲れが出てきている。青森県立美術館奈良美智の“あおもりけん”を観に行こうと思っていたのだけども、気力が沸かないので本日は街歩きプランに変更。新青森駅からJR羽本線で40分ほどかけて弘前駅へ。洋館や喫茶店が点在する、寂しくもちょっと洒落た街である。まずは腹ごなしに「カレー&コーヒー かわしま」という喫茶店でカレーと珈琲を頂く。オープンから数分で満員になるほどの人気店のようだ。

デフォルトのカレーにドテンと鎮座しているトロトロの豚肉が実に美味しい。量も多いので、学生の多い弘前で昔から愛されてきた店なのだろう。隣の席の青年もどうやら大学生らしく、耳をすませると、来月には就職でこの街を離れるのだそうだ。店主とカレーへの別れを惜しんでいた。弘前の古本屋、古着屋を巡る。東京にいようが、旅に出ようが、やっていることは変わらないのだ。ジュンク堂の入った商業施設がなんだか変わった建物だった。

弘前中央食品広場や桜で有名な弘前公園も散策した。歩き疲れたところで、公園内にある市民会館の「baton」という喫茶室で休憩することに。この市民会館はル・コルビュジエの弟子である前川國男の設計だという。喫茶室からは「青の時間」と名付けられた素敵なステンドグラスを眺めることができる。隣のテーブルでは女学生たちが、未来について語り合っていた。学生街の春だな、と思う。知らない街を一人で歩き回るのは楽しいが、ふと心細くもなる。そういう時はイヤフォンをつけて、音楽を流しながら歩く。この旅のテーマソングは江本祐介「新しい光」であった。プロデュース by ayU tokiO。江本祐介とayU tokiO、この2組の連なりだけで涙である。今もっとも優れたメロディメーカーと信じて止まない江本祐介(実は歌詞もめちゃ良い)の音楽に、ayU tokiOの独創的な音色作りが重ねられ、これぞ聞きたかった音楽!というのが誕生していた。サブスク解禁で、「ライトブルー」「願いを星に」という名曲を持ち運べるようになってうれしい。お土産を買って、新青森駅へと戻り、新幹線のチケットを購入。土曜日だけども、ほとんど空席だった。3時間と少し、ゆっくりと読書をしながら、帰路についた。しかし、東京はもうわたしにとって帰る場所ではないのだ。そう思うと、寄る辺なさに心が寂しくなってしまった。不安から目を背けるための旅行だったな。そして、知らない町で1人ぼっちで暮らしていくことへの訓練。

家に帰ると、メルカリで購入したスウェーデン軍のM-59コートとマーク・トウェインハックルベリー・フィンの冒けん』(柴田元幸の訳)が届いていてうれしい。スウェーデン軍のミリタリーコートはカラーリングが本当に美しくて、ウットリしてしまう。家に帰った時に、何か届いていると心が救われる感じがするので、出張体制になってからのわたしは買い物中毒に陥っている。資本主義の犬なのである。