青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

Nedelle Torrisi『Advice From Paradise』

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Nedelle Torrisiのファーストソロアルバム『Advice From Paradise』を聞いた。チルウェイブ以降の音にはあまり触手が伸びていなかったのですが、これは心のドアのノックしてくれました。異様な"親密さ"を湛えるジャケットに目を奪われて、視聴した「Can’t Wait」で決まり。

Ariel Pink's Haunted Graffitiの鍵盤奏者 Kenny Gilmoreが全面プロデュース、Nite JewelやBlood Orangeも参加、という海の向こうのインディー界の錚々たる面子(彼女はSufjan Stevensの来るべき新作にもコーラスで参加しているらしい)が並ぶクレジットを眺めるだけでも、音が聞こえてきそうな現代的なソフトシンセポップ。圧倒的なのはソングライティングセンスで、60~70年代にかけてのポップス黄金期、例えば彼女自身もフェイバリットに挙げているCarol Kingを想わせる強度がある。彼女の歌声とGilmoreのシンセサイザーの音色は、Olivia Newton-JohnMadonnaらの80年代のどこかチープなMTV型ポップス、Sadeを彷彿とさせる90年代R&Bソウル、とディケイドを軽々と横断し、その時代の濃厚なポップネスをギュッと絞り取ります。このハイブリット感覚。ジャケットに映るベッドルームでの彼女のドリーミーなリスニング体験を夢想させてくれる。「Born To Love You」「The Perfect Timing」「Fool Boy」などタイトルの無邪気さとシャツ1枚を着こなすカジュアル感含め、どこまでも甘美な気持ちにさせてくれる1枚だ。