青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

山下達郎『Maniac Tour 〜PERFORMANCE 2014〜』inパルテノン多摩


結論から言えば、生涯ベスト級の感動を覚えた最高のロックンロールショー。逆光に照らされて登場した山下達郎のシルエットは神様みたいだったし、演奏を始めた彼は本当に音楽の神様だった。とまぁ、大袈裟に書き散らしてしまいたい欲望を抑えきれない。うさんくさくなってしまうので控えたい。しかし、あの人ほど歌の上手いシンガーを、山下達郎バンドほど卓越した演奏を、私はこれまで聞いた事がなかったわけです。何と言っても、山下達郎伊藤広規小笠原拓海の3人のリズム構築のその凄まじさ。とりわけ、あの佐橋佳幸にほとんど弾かせず自身のギターでリズムを刻みながら、あの熱量のある歌を放てる山下達郎の恐ろしさ。楽曲の音楽性はファンクからロックンロール、バロック・ポップ、ドゥーワップまで多岐に渡るが、あの歌声が響けば、それはもう全てソウルミュージックと呼んでしまいたい。これまた大言壮語になるが、「宇宙とコネクトしているような」というか、まぁそういった特別な場所で鳴っている声なのです。心をバンバン撃ち抜かれてしまった。マニアックな選曲のツアーに戦々恐々としている達郎さんがあまりにかわいくて、最終的には「達郎と結婚してぇ!」というよくわからない感想が飛び出しました。という程になんだか器がでかい。MCも機知に富んでいて、ひたすらに魅力的だった。もう、完璧なエンターテイメントショーですよ。なんでも、来年でデビュー40周年。何と言いますか、30年、40年と彼のライブ活動を追い続けてこられた世代に嫉妬でございます。こんなに凄い人はこの先もなかなか出てこないでしょう。しかし、61歳にしてあのパフォーマンスです。目指すは加山雄三の「現役77歳」だそうで、まだまだこの先も聞くチャンスがあるのかもしれない。10〜30代といった世代もより積極的に山下達郎をしゃぶり尽くそうではありませんか!という気分です。




ここから、ややネタばれになるので、これから観に行くという方はお控え下さい。
大瀧詠一の楽曲群のフレーズやナイアガラトライアングルの「ココナツ・ホリデイ'76」も披露されました。カバーとは言え、大瀧詠一の楽曲を生で聞くのは初めてだったし、ましてやそのカバー者が弟子と言っていい山下達郎である。グッと来ないはずはない。少し大瀧歌唱に寄せたりなんかして。いやはや、泣ける。昨年のツアーでは、やなせたかしに捧げる「アンパンマンマーチ」のカバーが披露されたのだという。シアター・ライヴ『PERFORMANCE 1984-2012』で聞いた「Ray Of Hope」といい、今の山下達郎の音楽には、「居なくなってしまった人々」への追悼のフィーリングが強まってきているように思う。その対象は大瀧詠一青山純といった仲間であったり、震災被害者であったり。もしくは、これから居なくなってしまうであろう私たちに向けたレクイエムなのだ。それをあの”生”の放出のようなパフォーマンスで遂行する。その感じに勝手にグッときてしましました。