青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

CIRCLE SOUNDS PRESENTS『HAPPLE ワンマンショー』

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自由が丘の喧騒を少しだけ外れた地下のリハーサルスタジオの「サークルサウンズ」の佇まいがとてもいい。入った瞬間に覚える居心地の良さ。古びれているけども、不思議な親密さと秘密基地を想わせる好奇心をくすぐる何かがあるのです。壁に無数に貼られたフライヤーやポスターの中に、ひときわ色褪せて目をひく、いなかやろうの1stアルバムのアナウンスを知らせる紙があった。2007年頃のものでしょう。この空間にはポジティブな時間の蓄積があるのだ。そんな「サークルサウンズ」で行われたHAPPLEのワンマンショーはメンバーを入れても30人に満たない少人数制。とは言え、会場は10畳あるかないかの空間なので満員御礼、人というのは熱を放つ物体なのだなぁ、と改めて体感する熱気ムンムンのライブでした。なんと間にバンドからいお客さんへのピザの振る舞いを挟んだ2部編成。スタジオの隣のピザ屋さんのものらしく、なんとお客さん1人あたり2切れ行きわたるように買ってきてくれたらしい。何たるホスピタリティ。1500円でドリンクにピザ、更には特典でオリジナルバッチ付きとは申し訳なくなるほどです。


第一部は、3人編成のHAPLLEが誕生ところまで立ちかえり(2011年)、徐々に未来(2013年の『ドラマは続く』リリース迄)に戻ってくるという、土岐さん曰く『バック・トゥ・ザ・フューチャー』スタイルなSF構成。演奏はメンバー3人に、ギター、ベース、バイオリンを担当するサポート2人を加えて5人編成。タイトな演奏には磨きがかかり、アレンジの幅も広がっている。文句なしの格好良さです。(HPPALEの歴史を追体験するというコンセプトに対し)3人で演奏していたはずの楽曲を5人で演奏する事に関しては、「これはパラレルワールドなんだと解釈して欲しい」というMCが入り、HAPLLEのSFへの挑戦は難度を高めていきます。今回、HAPPLEが“バンドの歴史追加体験ライブ”の舞台にサークルサウンズを選んだのは、この場所にバンドの記憶や感情が留まっている、と考えているからでしょう。また、そういった場所に残った記憶や感情は、音を通して他者と共有できるのではないだろうか?という実践だったように思います。つまりSFというよりは保坂和志的な試みだったのではないでしょうか。バンドの歩みは傍目からも順風満帆とは言えず、そのフィーリングは多分に悲しみを含んでいる。しかし、それでも「その涙を見せてよ」「解決しないで行くのさ」「ドラマは続く」と、開かれたポップナンバーを生み出し、進み続けたHAPPLEというバンドが私は大好きなのだ。


2部はオケにのせて3人がラップを披露するナンバー2曲でスタート。3人のラップスキルがライブを観る度に上達していて恐ろしい。リズムの間を抜けていく脱力したフロウが気持ちいい。再び楽器を手にして披露されて「Predawn」「手紙」「モンブラン」「Funky Ragtime」etc・・・とソウル、ヒップホップにモードを完全に移行し、ビートとその余白を重視した演奏は実に洗練されている。しかし、いなかやろうのローファイポップ時代の人懐っこさはキープしたままだ。練られたコードとスウィートなメロディーのソングライティングセンス、どれをとっても、ズバ抜けている。来年にリリースされるであろう2ndアルバムの期待は高まるばかり。どうか、HAPPLEに、そのポテンシャルに見合う評価が降り注ぎますように!