青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

失敗しない生き方LIVE 『貴方が新宿ロフトを好きになる10の理由』


失敗しない生き方のライブはよい。「壊れそうなモノばかり集めてしまうよ」と言いますか「壊れかけのレディオ」と言いますか、とにかく破綻スレスレの美学というものがほとばしっております。例えるならば、ルパンのあの車がどんどん壊れながら猛突進していく一味を観る時に感じるカタルシス。とは言え、この日の序盤は、壊れながら低速で進んでいくようなボロボロの演奏。「こ、これは・・・」と思うも、やっぱり曲は抜群にいいし、何と言いますか、「こういう演奏がしたい」「こういうアレンジがしたい」という意気込みのようなものが透けて見えてくる。その理想と現実との距離感の埋まらなさって、青春そのものだし、美しくてグッときちゃうんだよなー。「魔法」という素晴らしい楽曲が全部台無しになっていく様、そしてふいに訪れる何もかもがうまくいってしまう瞬間。

うーん、ファンタスティック。3度の物販MCを挟んで、徐々に調子を取り戻し、「月と南極」なんかは安定のかっこよさでした。「海を見に行こうよ」もいい曲だし、新曲の「終列車」もグッドメロディーだった。しつこいようですが、曲は真っ当にいいのです。人口甘味料っぽいスウィートさがいい。


とにかく、ボーカルのヒルタモモコの虜になっております。歌が下手、と簡単に片づけられるわけがない。あの音程のはずし方とか叫びとか、本当にもう、グッとくる。どんなはみ出した方も許されるぞ、という気持ちになるのだ。微振動とかいうレベルじゃなく揺らいでいる。で、演奏もガタガタに揺れていますから、これはもう圧倒的に新しい音楽だ。地震国家のこの国にはもうファンキーモンキーベイビーズはいませんが、僕らには失敗しない生き方がいる!ヒルタさんは、ルックも最高。美脚にスタジャン、そしてポケットに手を突っ込みながら、偏頭痛をかかえたかのように不機嫌に歌う。フェティッシュの域にいるあの佇まいは何にも代えがたい。女性フロントマンの歴史を新しく更新してしまいました。菊地成孔に見せて悔しがらせたい。


この日のイベントは失敗しない生き方メンバーによるフリーマーケットも開催されていて、Tシャツ、ベレー帽、財布、ブックオフでも買い取ってくれないそうなゲームとかCD(THE BOOMなど)、に加えてサックス(こまどり社の獅子舞が5000円で購入)やヴァイオリンまでもが、言い値で販売。更には、ele-kingで素晴らしいレビューを執筆している作詞とギター担当の天野龍太郎(a.k.a炒飯)が昔作っていたフリーペーパー、『遊星都市』のミックス前の音源が収録されたCD-Rや2曲入りの『はじめてのデモ』などのコレクターズアイテムも放出。驚きだったのは、『はじめてのデモ』に収録されている「私の街」を聞いたら、ヒルタさんがわりとちゃんと歌っているのだ。「初めて」のデモだから気張ったのだろうか。それとも現在はあえて崩して歌っているのだろうか?だとしたら、そうするようにサジェスチョンした人(もしくは本人)、天才ですよ、ほんとに。