青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

『鈴木もぐらの雀荘放浪記』


『鈴木もぐらの雀荘放浪記』(BS-TBS)の放送が開始された。初回を観ただけですが、これはもう最高ではないでしょうか。とりあえず全4回とのことですが、これは定期的に放送を続けて、全国の雀荘を巡り巡って欲しい。タイトルロゴもいいし、OPは思い出野郎Aチーム「楽しく暮らそう」、EDは銀杏BOYZ「なんとなく僕たちは大人になるんだ」*1、最高っ。そして、この番組にはたしかな“旅情”がある。見知らぬ土地を歩き、現地の人々との触れ合う中で簡単に芽生えてしまう“この土地で暮らしていたかもしれない自分”の知覚。旅の終わりとともに、そんな感触は泡のように消え去り、自分がその場所にいたという実感さえも失いながら、帰路につく。そういった切なさが旅だ。だが、そんな喪失を重ねる放浪こそが、自分自身というものを再認識させる。

鈴木もぐらという無頼芸人にはそんな放浪がよく似合う。放浪は、「こうでなくてはならない」みたいな社会の規範から解放されていて、どこまでも自由だ。“雀荘放浪記”の初回であるのに麻雀を打たない。思いつきで行動し、雀荘は見つからないし、限られたロケ時間の中で散髪を始めるし、お目当ての冷やしシャンプーは売り切れているし、当たり前のように居眠りを重ね、1時間かけて移動した先で目星をつけていた飲食店は定休日。ないものづくし。だが、それを咎めものは誰もいない。その放浪を眺めるのは、癒しのような効果がある。あらゆるものに縛りに縛られ、ちゃんとしなくてはいけないわたしたち。なんだかとにかくもう疲れてしまった・・・そんな現代人にピッタリのコンテンツではないだろうか。

この番組のプロデュース、企画は『水曜日のダウンタウン』や『クイズ☆正解は一年後』でお馴染みの藤井健太郎ですが、ここには前述の番組のような複雑なルールや作り込み、過激さは(おそらく)ない。街で遭遇する出来事の強度が強すぎるのも、仕込みではなく、鈴木もぐらというギャンブル芸人の“引き”の強さ。年少リング(少年院に入った若者たちが戒めや脅しのために指に彫る入れ墨)のようなものを指に書いているおしぼり業者の女性、巨大すぎる廃ホテル、組織のアジトのような内装の建物、奇しくも麻雀に精通した若い女性、もぐらと同じような大きなサングラスをかけた好青年、友達の家みたいな雀荘・・・なんか全部変てこでおもしろい。立派な小屋に飼われている犬をかわいがっていたら、急に吠え出し驚いていると、気が付いたら犬が2頭に増えている、と改めて文字に起こしてみるとサッパリ意味のわからない出来事のマジカルさは、改めて何なのだろう。アクシデントや不思議な出来事に翻弄されながらも、鈴木もぐらは大きな身体を揺らしながら笑っている。藤井健太郎は、この鈴木もぐらの存在としての説得力に”賭けた”のでしょう*2

*1:なんせ舞台は峯田和伸の故郷である山形県

*2:賭け麻雀は違法です