青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ハイバイ『ポンポンお前の自意識に小刻みに振りたくなるんだポンポン』


今回が再々演だそうで、まごうことなきハイバイの代表作の1つなのでしょう。今作で取り上げられる『ファミコン』『グーニーズ』『ミシシッピー殺人事件』『たけしの挑戦状』『キン肉マン』『ひょうきん族』etcといった固有名詞は観る人の世代によってはかなり隔たりがあるものだろう。しかし、それは関係ない。今作が紡ぐ、あの半ズボン時代の、土曜日の昼下がりから夜にかけてのあの時間というのは実に普遍的。誰もが等しく記憶にフックをかけられて、感情を揺さぶられることでしょう。


「主催の岩井秀人の引きこもり経験を糧に演出された〜」というハイバイの宣伝文句を逆手にとったような「劇団橋本物語」のパートもいい。もはやシチュエーションコントですが、多いに笑わされた。ハイバイの演劇というのは、ディスコミュニケーションを描いていながらも、それを多角的に見せる事で、その当事者達はどうしょうもなく切実にコミュニケートしているのだ、という事実を舞台上に立ち上げてくる。例えば、2人の漏らしたオシッコには、秘められた”優しさ”があるのを我々観客は知っていたりする。岩井秀人演じるゲーム屋の店員がわめき散らす「お前が(ファミコンで)撃ち殺したその飛行機のパイロット1人1人に家族があってだな〜」という言葉の中に実は真理がある。彼らのそのパンパンに膨れ上がった自意識に「わかるよ、わかるよ」「そうだったのか、そうだったのか」とエールを送りたくなってしまうのだ(ポンポンで)。演者も素晴らしく、とにもかくにも大傑作だ。