岩本ナオ『町でうわさの天狗の子』
思春期から10代後半までにおいて、変わりたい期待と変わっていく不安の海に溺れていくうちに、自分が何やら周りの人間とは異なるとてもつもなく汚らわしい化物なのではないか、と思い悩まされる事はなかっただろうか。そんな不安を他者に(ましてや異性に)振り払ってもらうなんていうのはどういった事なのか。今作でそれは大量の蛍のシークエンスに中で描かれている。そう、それはずっと待ち続けていたUFOが、光が、来るようなものなのだ。
7、8巻と凄まじいスピードで密度の濃い展開を見せている。決めコマも素晴らしい。このテンションで続いていったら作者も読者も死ぬ。10巻くらいで終わるのかしら。
- 作者: 岩本ナオ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/06/10
- メディア: コミック
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僕は思う!この瞬間は続くと!いつまでも
などで表現されている強く切ない祈りで貫かれている。たまらん。天狗だろうが狐だろうが、不細工なモブキャラだろうが平然と恋愛戦線に送り込む岩本ナオの手さばきはとても優しくおおらかだ。どうにかしてあらゆるものが報われる瞬間を描いていた大島弓子を現代の感性で更新しているのはなかろうか。