青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

田中嗣久×高橋一生 NTTドコモ25周年CM『いつか、あたりまえになることを。』

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高橋一生は本当に素晴らしい。NTTドコモMr.Childrenが25周年を迎えることを記念して制作されたCM『いつか、あたりまえになることを。』を貴方はご覧になっただろうか。いや、よくあるタイプの作品なのだ。『ニューシネマパラダイス』的手法で”眼差し”をダイジェスト化して泣かせにかかり、「何気ない毎日こそが、奇跡の積み重ねなのです」というようなことを家族の愛でまとめあげる。ややもすれば「けっ、古臭い」と一蹴されかねない代物なのですが、これがどうにも目が離せない。いや、それどころかまんまと泣かされてしまうのです。カメラワーク、音楽、美術、衣装・・・様々な細部が振動し作品を高め合っているし、黒木華と清原果耶の2人の女優の存在感も素晴らしい。だがやはりその最大の貢献者は高橋一生であろう。


高橋一生の芝居は、「役者が演じている」という当たり前の事象を観る者の頭から吹き飛ばしてしまう。演じるキャラクターそのものとして画面の中にスッと収まっている。このCMで高橋一生が扮するのは、時代の片隅に埋もれる名も無き平凡な男だ。癖の強いキャラクターを見事に演じ分ける高橋一生だが、こういった”なんでもない”匿名の市民こそ、彼の演技メソッドが最大限に発揮される役柄なのではという気がする。僅か4分の映像の中で矢継ぎ早に流れる断片的エピソードでもって、1人の男の人生の奥行きのようなものまで体現してしまっている。そこには嘘らしさは微塵もなく、“人が生きている”という確かな質感だけがある。その質感には”奇跡”というような言葉をヒュッと飛び越える強度があり、故に、このCMは我々の涙腺を激しく刺激するのだろう。


この『25年前の夏』という作品の監督を務めたのは田中嗣久。九州新幹線開通のCM、カロリーメイト『夢の背中』など、そのワークスはどれも印象的なものばかり。あの高橋一生×長澤まさみによるdtvのCM『ふたりをつなぐ物語』も田中嗣久の監督作だ。あの作品もまた、「洗濯物を畳む高橋一生」に代表されるように、”市井の人”としての高橋一生の日常の所作が、地球と宇宙ステーションというSF的な距離を飛び越えていく物語であった。


少しばかり『いつか、あたりまえになることを。』の細部に目を向けてみるならば、やはり90年代の東京の街の風俗描写が目をつく。ポケベル、カラオケボックスの歌本、コンポーネントオーディオ、バスケットシューズプレイステーション、たまごっち、Windows 95、あすなろ抱きetc・・・あの時代を生きてきた者はノスタルジーの沼にハマってしまうこと必至。
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とりわけ秀逸なのは、ネルシャツにダウンベスト、TシャツとロンTの重ね着、半袖シャツにロンT、ウォレットチェーンといったスタイリングの数々。それらを身に纏った高橋一生の佇まいの説得力はどうだ。コスプレ然とした印象はまったくなく、確かにあの時代を”生きている”人なのだ。そして、その時代を代表するドコモの携帯機種がさりげなく映し出され、それらの機能・形態が徐々に進化していく様子が窺える。そこに「悪い、待った?/遅いっ」という高橋一生黒木華演じるカップルのお決まりのやりとりが合いまり、輝かしい未来は少し遅れて、(しかし必ず)やってくるのだ、というような希望のフィーリングを、観る者に与えるのである。

【2017年】【1回限り】TV CM「25年後の夏」編

大根仁『ハロー張りネズミ』1話

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まあ、調査費用はふっかけられるかもしれませんが
何せドブネズミのような連中ですから

片桐(矢島健一)の“ドブネズミのような連中”という言葉に導かれて、スナックのカラオケでTHE BLUE HEARTSの「リンダリンダ」が流れる

ドブネズミみたいに美しくなりたい
写真には写らない 美しさがあるから

このシーンにおける五郎(瑛太)は、「身体性は甲本ヒロトを模しているにも関わらず、節回しは長渕剛」という非常に器用なモノマネを披露している。この理解できる人もそう多くないであろう空滑りしたギャグは、実のところ『ハロー張りネズミ』というドラマのフィーリングを象徴している。この”モノマネ”と甲本ヒロト長渕剛が混ざり合った”2人で1つ”という感覚は、1話そのものだ。川田(伊藤淳史)からの「”死んだ娘は生きている”という瀕死の妻についた嘘を本当にする為に、娘に似た少女を見つけてきて欲しい」という依頼を受け、五郎とグレ(森田剛)は紆余曲折の果てに、”遥”という孤児を見つけ出し、死んだ娘のモノマネをさせる。そのモノマネの果てに、疑似の親子関係が混濁していき、本物の家族に変容してしまう。ここでは、子役の三本采香が1人2役でもって、遥と死んだ娘を演じ分けている。そして、この”2人で1つ”という感覚は、五郎とグレという2人の探偵バディものである『ハロー張りネズミ』の開始宣言にもなっていると言えよう。


疑似親子から本物への変容を支えるのは、焼酎をベースとしていないチューハイを例に出した

でもいいんじゃん、代わりだって
酔えるし、おいしいもん

という所長(山口智子)の台詞だ。同じくTBSの『逃げるは恥だが役に立つ』や『カルテット』などが打ち出した現代的テーマへの目配せとも言えなくはないが、「代わりでもいい、偽物でもいい」という感覚が、見事にドラマに落とし込められている。瑛太が吸う煙草が”電子タバコ”であるのも見逃せないだろう。


山手線に乗って、池袋で東武東上線の各駅停車に乗り換えてください
8つ目の「下赤塚」という駅を降りると
23区内とは思えない古くさい商店街があります
その外れにある探偵事務所ならば、
あなたの依頼を受けてくれるかもしれませんよ

本作の舞台は、”23区内とは思えない古くさい商店街”と評される板橋区下赤塚の商店街。つまり『ハロー張りネズミ』が描くのは、時代から忘れ去られようとしているものなのだろう。THE BLUE HEATS、長渕剛、『あぶない刑事』だの『ねるとん紅鯨団』だのを無邪気に引用してみせながら、昭和の探偵ドラマのフィーリングを蘇らせようとしている。それは「リンダリンダ」が言うところの”ドブネズミのような写真には写らない美しさ”であって、劇中の五郎の言葉を借りるのであれば、”人情とお節介”というやつなのだろう。これまで大根仁テレビ東京の深夜枠で手掛けてきた『まほろ駅前番外地』(2013)にしろ、『リバースエッジ 大川端探偵社』(2014)にしろ、同様の気概を感じたし、監督した劇場公開作『SCOOP!』(2016)も原田眞人『盗写 1/250秒』(1985)のリメイク。昭和のエンターテインメントのエネルギーを現代に召喚してみせるといういうのが、大根仁のライフワークなのだろうか。そういう意味では山口智子のトレンディな演技もハマっているし、どう考えても演技レベルが大根作品の求めるそれに達していないように感じる伊藤淳史のキャスティングも『とんねるずのみなさんのおかげです』のチビノリダーの記憶を求めてか。ちなみに、1991年に公開された映画版『ハロー張りネズミ』は未見なのだけど、五郎役は山口智子の夫である唐沢寿明が演じていたらしい。



まほろ駅前番外地』での瑛太/松田龍平の長身コンビが素晴らしかったのは言わずもがなだが、瑛太/森田剛の凸凹感もルックとして面白い。しかし、瑛太森田剛で探偵バディモノを大根仁が撮る、ということで今期最も期待している連続テレビドラマだったのだが、この1話の段階では、まだ面白味を掴み切れていないでいる。キャラクターが生きている感じがしないし、1話完結でやるには題材がエモーショナル過ぎて、尺の関係で内容がややペラペラに感じてしまった。マドンナ役の深田恭子登場で2話以降がどう変わっていくかに期待です。ところで、依頼が入ると、所長が床を3回ドンドンドンと叩き、階下のスナックにいる五郎とグレが登ってくるという設定、おもしろいのだけども、”ネズミ”というモチーフを考えたら、スナックが事務所の上にあったほうがハマったような。



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最近のこと(2017/07/08~)

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応援しているヤクルトスワローズがもうあまりにも弱くて、不機嫌極まりない毎日を過ごしております。そんな中、Lampだけが心の清涼剤で、最近はもっぱら『ランプ幻想』と『東京ユートピア通信』を愛聴している。

ランプ幻想

ランプ幻想

東京ユウトピア通信

東京ユウトピア通信

あの複雑な美しさだけが精神をなだめてくれるのです。



楽天市場はてなが運営している『それどこ』というサイトに、懐かしのテレビドラマについてのエントリーを寄稿させて頂きました。内容はズバリ「土9ジャニーズミステリー」についてです。お時間ありましたら、ぜひ。
srdk.rakuten.jp
胡散臭い話ですが、この記事は『ぼくらの勇気 未満都市』の新作放映が決まったら書いたのではなく、執筆中に新作放映が決定したのです。なんたる運命的タイミング。少し待てば、huluで観られたわけですが、海外の動画サイトにて中国語字幕つきで観て書いた、というがんばりだけ評価してください。



最近のことです。先週の土曜日。予定があったのに少し寝坊してしまって、慌ただしく家を出た。外はすでに30℃を超えている。心の準備ができていなかったが、もう夏なのだ。朝食代わりにセブンイレブンのアイスコーヒーを飲んだ。

アイスコーヒー発明したやつにノーベル賞やりたいねぇ

というのはさくらももこの漫画の台詞だっけ?と思いきや、岡崎京子の「夏の思い出」という短編だった。アイスコーヒーは日本発祥、というのを何かで読んだ気がする。ノーベルやんちゃde賞(©スチャダラパー)あげちゃいましょう。どんなに暑い夏でもホットコーヒーを飲んでいる人やかけそばを食べている人を見かけると、ただそれだけのことなのに、人間としての位の高さのようなものを感じる。生命の危機を省みないこだわりの貫き方みたいなものに畏敬の念を抱いてしまうのだろうか。しかし、そもそも冷たいもののほうが身体に悪いらしい。「冷房苦手で・・・」という人もまた、少し上の領域にいるような気がする。であるから、弱冷房車などはもう場としての徳が高すぎて、わたしくめなどには足を踏み入れられないほどです。しかし、仮に強冷房車が設置されたとしても、わざわざその車両を選んで乗ったりはしないだろう。暑がりでありながら、それなりに寒がりでもあるのだ。特に最近は肩が冷えてしまって、職場で冷房がきつい日は肩にカーディガンをひっかけて仕事をしている。おそらく、陰では「敏腕プロデューサー」とか「いしだ壱成の父」とか「トレンディドラマの申し子」など呼ばれていることでしょう。全部褒め言葉なので、悪い気はしないな。すっかり忘れていたけども、カーディガンを肩に巻くというスタイル、何年か前にリバイバルヒットしていた。街の若者はこぞって巻き、果てには「袖の捻じり方で差をつけよう」みたいな中尾彬な領域に達していたけども、流行りはわずか1年で廃れてしまったのでした。


HAPPLE『ハミングのふる夜』リリースパーティライブを観るため、灼熱の渋谷へ。会場である7thFLOORは入口からもう冷房がキンキンに効いていて、気も利いているな、と思った。HAPPLEもザ・なつやすみバンドも久しぶりにライブを観るので、とても楽しみにしていたのだけども、想像以上にグッときてしまった。ニューアルバム完成の充実が迸るHAPPLEのライブ涙もの。溢れるソウルとハーモニー。『ハミングのふる夜』は、「predawn」や「手紙」といったライブでお馴染みの名曲が格になるのかと思いきや、いい意味でアルバムのピースに収まっていて、驚いてしまう。個人的なイチ押しは鍵盤の斎藤さんがリードボーカルをとる「Talk To Sea」と、ラストを飾る「ファンファーレ」「主題」の2曲。土岐さんのMCは相変わらず抜群だ。何度も書いていますが、土岐さんのおどけているのだけど、どこか物哀しい感じが私は本当に好きだ。あと、前から思っていたのですけど、サポートの和田大樹さんは本当に天才肌のミュージシャンですよね。音色のデパートだ。新編成のザ・なつやすみバンドの演奏もとっても素晴らしかった。「ファンタジア」のメロウなニューアレンジもナイスだったし、コーラスワークもより研ぎ澄まされていた。そして、みずきちゃんのドラム!「S.S.W(スーパーサマーウィークエンダー)」でのタイトなプレイなんかもう大興奮でした。すごく久しぶりだったので、あれも聞きたい、これも聞きたい、という気持ちになったので、次のワンマンライブには足を運びたい。


ライブ後に、紀尾井町に移動して「エリックサウス」でエリックミールスを食べた。あと、スパイシーなソーセージ。
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ビリヤニへの欲求をグッとこらえる。なんせエリックミールスはバスマティライスがおかわり自由なのです。インドの高級米バスマティライスはしみじみ美味いぞ。インドカレーにはナン、という固定概念から卒業できる。『ゆとりですがなにか』でもありましたが、中国人は焼き餃子食わないし、インド人はカレーは米で食う。これが真実なのだ。でも、中国人の知り合いは「日本の焼き餃子はまじで美味い」って言っていました。帰宅して、シャワー浴びて、プロ野球中継でヤクルトの大敗を見届ける。36歳のベテラン左腕石川が降板してベンチで涙を流していた。ヤクルトスワローズ石川雅之というところがあるので、観ていて胸が痛い。まもなく『ハロー張りネズミ』の放送が開始するので、瑛太熱を加速させるべく『最高の離婚』と『それでも、生きてゆく』を乱れ観て、胸がいっぱいに。最近の瑛太の顔がパンパンなの気になる。鶴瓶の番組で「顔の肉が落ちにくくなった」と言っていたけども、あれは役作りじゃないのか。『64』の時とか、むちゃくちゃシャープだったのに。鶴瓶のあの番組、数回しか観てないけど、いつも鶴瓶が「こいつむちゃくちゃええ奴やねん」「おれ、こいつむっちゃ好きや」「こいつおもろいやつやでぇ」と言っている気がする。何と言うか、鶴瓶に”ええ奴”と思ってもらわないといけない、この世界の窮屈さのようなものを感じてしまう。私は絶対に鶴瓶に気に入ってもらえない人間だ。みんな気づいてないかもしれないけど、"鶴瓶に気に入ってもらえない"ということはこの世界における死なのだ。



日曜日。ちょっと早起きてして、近所の銭湯で朝風呂&朝サウナ。陽光差し込む浴槽で身体を温めるその行為の甘美さたるや。たらこスパゲッティくらい好きだ。家に戻り、すっかりととのった身体と精神を横たえながら、クーラーの効いた部屋で『タッチ』を読む。これぞ至福なり。続きの巻を取りに行くのが面倒くさくなり、そのまま夢見心地に少しまどろむ。目が覚め、スティーヴィ―・ワンダー『Songs in the Key of Life』

Songs in the Key of Life

Songs in the Key of Life

を大音量で聞きながらウットリと部屋の掃除をして、電車で高田馬場へ。ランチにまっことひさしぶりにとんかつを食べる。「ポップカルチャーととんかつ」をキャッチとしたブログを書いているにも関わらず、最近はとんかつを全然食べられていない。これはもうシンプルに胃腸の衰退と言っていいでしょう。でも、「ポップカルチャーととんかつ」はおさまりがいいので変えたくない。日曜日は「とん太」も「成蔵」もお休みなので、「いちよし」を訪ねた。数年前にオープンして、リーズナブルな価格帯で人気を博しているとんかつ屋だ。ロースかつ定食680円、ヒレカツ定食880円なり。
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価格帯や店の佇まいからして、御徒町の人気店「山家」の系列なのでしょうか。リーズナブルなわりにしっかり美味い。塩なんかで気取って食べずに(そもそも置いていない)、ソースをダバダバかけて辛子をベッタリ塗って食らい、米をワシワシとかき込もう。腹ごなしにくそ暑い中を早稲田大学まで歩く。キャンパスに足を踏み入れるのは久しぶりで少しテンションが上がってしまった。構内にある演劇博物館で『テレビの見る夢 − 大テレビドラマ博覧会』と『山田太一展』の展示を観た。入場無料とは思えぬ充実。楽しかったなー。『ロングバケーション』や『男女7人夏物語』の映像に釘付けに。大竹しのぶ前田敦子が似ているということ、みんなもっと騒いで欲しい。ぼくのりりっくのぼうよみ与沢翼も似ている気がするが、それは別に騒がなくていい。しっかし、山田太一先生の原稿、むちゃくちゃ興奮したな。会場に『岸辺のアルバム』と『早春スケッチブック』がマッシュアップで流れていて、至高空間でした。『ふぞろいの林檎たちⅡ』のティザーポスターがクールで、部屋に飾りたいと思った。


帰宅して、またしてもこりずに野球中継。昨夜の石川の涙効果なのか、ヤクルトの選手は全員気合が入っていた。特に坂口と藤井のガッツ!それでもあと一歩及ばず延長引き分け。最下位は受け入れたので、後半戦は廣岡、奥村、渡邊といった若手野手をガシガシ起用して欲しい。そして、原樹理や星といった若手ピッチャーは大切に使って欲しい。中5日で無理して回すようなチーム状況じゃない。もはや今季は、寺島が2軍のブルペンで147キロ出した、とかそういった小さい情報に喜びを見出している。Twitterで岸政彦が「文芸誌で保坂和志一派扱いされて批判された、保坂和志なんて読んだこともないし名前も知らない」というような感じでキレていたのだけども、自分が文芸誌にされたこと以上に、保坂和志に失礼なことをしてないか、と釈然としなかった。お疲れなのかもしれない。18枚目シングルの選抜発表が気になるので、夜更かしして『乃木坂工事中』をリアルタイムで。スタジオでやる時点でそうなのだろうとは思ったが、大園さん・与田さんの3期生Wセンターという新しい布陣。過去の乃木坂46のシングルで、Wセンターが功を奏したことがあっただろうか。どうせなら思い切って1人にセンター背負わせて欲しかった。そして、別に応援しているわけではないのだけども、ここで寺田蘭世さんが選抜から外れたのは2期生にとってほんとしんどいことなのでは。個人的には伊藤・井上がなんとか先発に入っていたので、とりあえず良かったです。



月曜日。1日中眠いし、外に出ているとそれだけで気持ち悪くなる気候。帰り道に「王将」で餃子定食を食べた。隣のサラリーマンが店員さんの「他にご注文はよろしかったでしょうか?」とか「以上でご注文お揃いでしょうか?」といったマニュアル通りの接客に「ないから、そう注文したんだ!」とか「これで全部だよ!」と終始声を荒げていた。というのも、彼の注文は餃子1人前オンリー。それが後ろめたくて、ずっとイラついていたようだ。それを後ろめたく思うなら、はなからよせばいいのに。どうしても1皿だけ食べて帰りたい気分だったなら、「いやー1皿だけなんだけどいいかな?」と底抜けに明るく振る舞えるべきだろう。それができないのであれば、冷凍食品の餃子を家で焼くべきなのだ。それとも家で餃子を食べると母ちゃんに怒られるのかな。帰宅して、宮藤官九郎脚本のスペシャルドラマ『ゆとりですがなにか 純米吟醸純情編』を2週分まとめて観る。それなりにおもしろいのだけども、どうしてもこのドラマをそこまで特別に思えないでいる。役者の演技の質も、個人的な趣向からはかなり外れる。過剰もしくは物足りない。太賀が大々的に発見された、というのがこのドラマ最大の功績だと思っている。



火曜日。ポレポレ東中野堀禎一の『憐 Ren』を観に行こうと決めていたのだけども、残業で間に合わず。仕方ないので近所のシネコンのレイトショーで『メアリと魔女の花』を観ることに。上映までちょっと時間があったので、サブウェイでサンドウィッチを食べて、長嶋有『問いのない答え』を読み進めた。

問いのない答え (文春文庫)

問いのない答え (文春文庫)

すごくおもしろい。『メアリと魔女の花』は残念ながらおもしろくなかった。なんでだ、と思う箇所はありすぎて、口を噤んでしまう。『借りぐらしのアリエッティ』でもやっていた、主人公が髪を結う演出はいいな、と思った。宮崎駿がラストにもう1本作ってくれるのまじでありがてぇ。エンディングで流れるSEKAI NO OWARIの新曲「RAIN」がすっごくよかった。
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バンドの持つメロディの強度が戻ってきている。作曲のクレジットはメンバーが3人が記されていたので、もうむちゃくちゃ気合い入れて作ったのだろうな。

ファフロツキーズの夢を見て起きた

というような歌詞のハッタリのきかせかたもいい。ストリングスアレンジは小林武史が担当しているらしい。もう1回聞きたい!と思って、グーグルで検索したら、SEKAI NO OWARIって入れると、候補に「レイン」のみならず「ライン」と出てくるのだけども、小さな子らが頑張ってローマ字読みで検索したのだろうか。そうだよな、RAINを普通に読んだら「ライン」だよな。



水曜日。まっこと暑い。もうすぐ学生は夏休みなのだろうか。

ちびまる子ちゃん』1巻の記念すべき1話が、1学期終わり(=夏休みの始まり)に大量の荷物を持って下校する描写から始まるの、改めて素晴らしい感性だと思う。あの漫画のおかげで、朝顔とか道具箱持って帰るの本当に億劫だったこと、そんな今にも忘れてしまいそうな小さな出来事を今でもありありと思い出せる。仕事後、ポレポレ東中野で『魔法少女を忘れない』を観た。
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実に6年ぶりの鑑賞だったが、やはり凄く良い映画だと感じた。みんなから忘れられていく元・魔法少女の名が劇中で執拗に呼ばれるのだけども、その名が「未来」というのがいい。映画館を出たら、ヤクルトがシーズン二度目の(しかも前半戦だけで)10連敗という大記録を達成していた。奥村と上田が活躍しているのが救い。「富士そば」で冷やしキツネ蕎麦をすすり、帰宅。『タッチ』全26巻を久しぶりに読み終えて、フルフルと感動に震えた。終盤の須見工の試合の素晴らしさ、そして、その後の完全に山場を終えてしまった物語のチルアウト感。ライバル新田と西村も充実したキャラクターであるし、ヤクザ監督・柏葉英二郎の挿話も最高。浅倉南を好きというと童貞扱いされるし、あだち充ファンほど『タッチ』を過小評価するきらいがあるが、やはり大傑作だと思いました。南ちゃんは確かになかなかひどい女ですが、ユーモアのセンスがあるのがいいですよね。
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ceroの高城さんがTwitterで呟いていたカート・ローゼンウィンケルの楽曲が素晴らしかったので、思わず今年出たニューアルバムを購入した。
Caipi

Caipi



木曜日。仕事帰りにサウナに行こうと策略するも挫折。やる気が出ない一日であった。カレーが食べたい。溜まっていた録画少しずつ観始める。『ひよっこ』は優子さんが結婚するわ、みね子に彼氏できるわで、長く視聴している分、娘が嫁に行くような気分です。優子さんと結婚したやつ、まっじでどこの馬の骨じゃ。画面にも出てこないとは失礼な!日テレの『過保護のカホコ』(脚本は遊川和彦)が結構おもしろかった。高畑充希時任三郎黒木瞳が良いです。とりわけ、漫画のようなキャラクターのカホコを演じる、大きな黒目の高畑充希がハマっている。ああいうキャラクターを嫌味なく演じられるのは凄い。期待していたTBSの『ごめん、愛してる』は冒頭10分でタルくなってしまい、停止中。画がださい。ヤクザとかチンピラじゃない長瀬智也が観たい。『フリースタイルダンジョン』の晋平太のダンジョン攻略、感動しました。観始めたら、いきなり攻略されて、モンスターも解散するらしい。いきなり、クライマックスみたいなところから観初めてしまったようだ。満島ひかりがゲストの『旅猿』の1週目も観ました。落ち着きがない満島ひかりがとびきりかわいかった。

坂元裕二『往復書簡 初恋と不倫』

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男女がキスをしている後ろで車が燃えている写真を見たんです。ラブストーリーでも男女だけで成立するわけじゃない。社会で起きている色んなことが作用するし、逆に男女の間で起きていることが社会にも作用している。

これは、是枝裕和との対談(『世界といまを考える 1』に収録)において坂元裕二が語った言葉だ。なるほど、近年の坂元裕二のテレビドラマは、ややもすれば社会派と呼ばれるような題材を常に取り入れている。『わたしたちの教科書』ではイジメ、『Mother』では幼児虐待、『それでも、生きてゆく』では少年犯罪、『最高の離婚』では離婚率の上昇、『Woman』では生活保護・冤罪、『問題のあるレストラン』では女性差別、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』では若年層の貧困・震災・・・作品によっては物語のバランスを崩すほどに過剰な負の描写に注力することもある。

ネロはお父さんもお母さんもいなくて、いじめられたり、だまされたりして、最後には死んじゃうのよ。犬も一緒に。何のためにこんな悲しいお話があるの?


それでも、生きてゆく

フランダースの犬』を読んだ少女の身体を借りて、坂元裕二は自身に問いかけている。何のためにこんな悲しいお話があるの?何のために書くの?坂元裕二がこの度献上した書籍『往復書簡 初恋と不倫』は、そんな自己言及への回答のような作品であるように思える。手紙やメールのやりとりだけで構成された物語。テーマは初恋と不倫。そういったトピックから連想されるようなトレンディでロマンチックな物語、はここにはなく、やはり世界の抱える”痛み”が描かれる。金槌を手にした少年の淡い初恋が陰惨な高速バス事故と結び付き、インモラルな不倫はロシアの自動小銃とアフリカの地雷へと拡散していく。この不帰の初恋、海老名SA/カラシニコフ不倫海峡という2編の物語は”たった一つのこと”を執拗に訴え続けている。何度も何度も言葉を変えて。

誰かの身の上に起こったことは誰の身の上にも起こるんですよ。川はどれもみんな繋がっていて、流れて、流れ込んでいくんです。君の身の上に起こったことはわたしの身の上にも起こったことです。

関係がないなんてことはないと思いました。

ありえたかもしれない悲劇は形にならなくても、奥深くに残り続けるんだと思います。悲しみはいつか川になって、川はどれも繋がっていて、流れていって、流れ込んでいく。悲しみの川は、より深い悲しみの海に流れ込む。

世界のどこかで起こることはそのまま日本でも起こりえる、と実証されました。メキシコで起きている問題は、日本の食卓に影響を及ぼすのです。

この世界には理不尽な死があるの。どこかで誰かが理不尽に死ぬことはわたしたちの心の死でもあるの。

それはつまり「わたしたちはこの痛ましい世界の一部である」ということ。この世界の痛みは、いみじくも全てが根底で繋がっていて、それに対して無関係でいることは誰にも許されない。かなたの地の戦争や地雷はおろか、すぐ隣にあるはずの、震災や貧困や差別にすら、「経験したことがないから自分にはわからない」と遠ざけてしまう。「実感が湧かない、共感できない、興味がない」と常に無関係や無関心を装うとする。そんな”わたしたち”に警鐘を鳴らす。

なぜ、わかろうとしないのだろう?
そこで傷ついているのは、すべて”わたしたち”だったかもしれないのに。

口にしてしまえば、まるで道徳の教科書のようなそんな指摘に、なんとか確かな重みと質感を宿そうと、坂元裕二は筆を費やしている。ここでの坂元裕二の態度から想起されるのは、やはり岡崎京子である。

わたしはどうしても、はじめのことに立ち返るのです。団地で溺れたわたしと同い年の女の子のこと。
わたしだったかもしれない女の子のこと。

坂元裕二は書き、岡崎京子は唯一の小説集の中でこう書いている。

いつも一人の女の子のことを書こうと思っている。
いつも。たった一人の。ひとりぼっちの。一人の女の子の落ちかたというものを。
一人の女の子の落ちかた。
一人の女の子の駄目になりかた。
それは別のありかたとして全て同じ私たちの。
どこの街、どこの時間、誰だって。
近頃の落ちかた。
そういうものを。

そして、その小説集のタイトルである、「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」という感覚は、この『往復書簡 初恋と不倫』全体に貫かれている”うしろめたさ”のようなものとイコールであるように思える。

ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね

ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね



坂元裕二は、悲痛な物語を書く一方で、「それでも、この世界で生きてゆくのだ」と思えるような喜びを書き足すことを忘れない。すると”悲しい話”は驚くようにクッキリとした輪郭を形づくり、生々しくわたしたちの心に訴えかけてくる。喜び、それは例えば、食べること。海老名サービスエリアのしょうゆラーメン、ぶりの照り焼き定食、トマトとバジルのイタリアンハンバーグセット、鯵の素揚げ、ポーク餅、冷凍チキン、バニラアイス、亀田製菓・・・と悲痛な物語の中で、必要以上に印象的に描写されていく食べ物の数々。『カルテット』において、”死“の存在を間近に感じながらも、かつ丼をモリモリと食べ、”生きていかなくちゃ”と決意した女たちを思い出すだろう。


もしくは、恋をすること、あるいは、言葉を交わすこと。この『往復書簡 初恋と不倫』は、通常の小説とは異なり、地の文がなく、全てが手紙もしくはメールのやりとりで構成されている。つまり、あの唯一無二と言っていい、坂元裕二の会話の感性がいかんなく発揮された作品であるのだ。どこまでも平行線を辿りズレながら、ときにカチリと噛み合ってしまう会話。すべてを分かち合ってしまったかのようなその交感に立ち会うこと、それこそ世界を生きる喜びと言えるのかもしれない。


そして、坂元裕二ファンとして見逃せないのは、この『往復書簡 初恋と不倫』には、これまで発表してきた連続テレビドラマ作品のマテリアルがそこかしこに散りばめられている点だろう。金槌を握った少年、ガストのハンバーグ、フレール・ジャックの鼻歌、ボーダーかぶり問題、公園のトイレの前で弁当を食べるOLなどなど、愛おしき登場人物たちの顔が浮かんでは消えていく。とりわけ感動的なのは『不帰の初恋、海老名SA』におけるこのくだり。

これから先、こんなに好きな人はもう現れないと理解していたからです。これから先、どんな出会いがあっても、どんな別れがあっても、どんなに長生きしてもこんなことはもう一生ないってわかったからです。そのくらい玉埜くんのことが好きでした。その気持ちは今も減っていません。増えてもいません。変わらず同じだけあります。これからのことも、これまでのことも全部その中に存在してる。そんなわたしの初恋です。


で、ここからが後日談です。わたしの初恋はどうなったか。わたしの初恋は、わたしの日常になりました。例えば長めで急な階段を降りる時。例えば切手なんかを真っ直ぐ貼らなきゃいけない時。例えば夜寝る前、最後の灯りを消すとか。日常の中のそんな時、玉埜くんと繋いだ手を感じているのです。支えのようにして。お守りのようにして。君がいてもいなくても、日常の中でいつも君が好きでした。

ここに息づいているのは、間違いなく『カルテット』における世吹すずめの魂であろう。そう、あの心震える8話だ。
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私の好きはその辺にゴロゴロしてるっていうか
ふふっ、寝っ転がってて・・・
で、ちょっと ちょっとだけがんばる時ってあるでしょ?
住所を真っ直ぐ書かなきゃいけない時とか
エスカレーターの下りに乗る時とか
バスを乗り間違えないようにする時とか
白い服着てナポリタン食べる時
そういうね 時にね その人が いつもちょっといるの
いて エプロンかけてくれるの
そしたらちょっと頑張れる

またしても、満島ひかりの言葉を思い出してしまう。坂元作品において、全ての人物は輪廻するように繋がっている。



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最近のこと(2017/06/30~)

土曜日。陽が出ていないけども、洗濯物は溜まっていく。仕方がないので近所のコインランドリーへ行き、乾燥機を回すことにした。コインランドリーって不思議な場所だ。ドラマが生まれる予感しかしない。生まれた試しなんてないのに。コインランドリーにおける”ドラマ”というと、『横道世之介』と『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』を思い出すのだけども、どちらも高良健吾だ。あと、乃木坂46「羽根の記憶」のMVの橋本奈々未も良い。
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コインランドリーで踊っている橋本さん、美しかったな。それで思い出したのは、乃木坂46の3rdアルバム聞いていないということ。『生まれてから初めて見た夢』というタイトルの良さに反比例して、シングルとカップリング曲を乱暴に羅列するアルバムという形態への愛のなさ。リード曲である「スカイダイビング」は申し分のない佳曲だが、最新シングル「インフルエンサー」があまりにもどうでもよすぎて、乃木坂の音源からすっかり気持ちが離れてしまい、購買に至らなかった。今、思えば「裸足のSummer」なんかは幾分もましだった。次のシングルがせめて「スカイダイビング」くらいいい曲であることを願います。乾燥機の待ち時間、向いの定食屋でチキンライスを食べた。ケチャップで粘度の増したお米とプリっとした鶏肉の食感のハーモニー。とても懐かしい気持ちになった。これは小学校から帰宅して食べる、土曜のお昼の味だ。松本にも相談してみる。
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カルヴィン・ハリスのニューアルバム『Funk Wav Bounces Vol. 1』が噂どおりに素敵でステレオでずっと鳴らしていた。

FUNK WAV BOUNCES VOL. 1 [CD]

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フランク・オーシャンとアリアナ・グランデの歌声、好きだ。コーネリアスのニューアルバム『Mellow Wave』も安いイヤフォンで聞くとあんまりピンとこないが、ステレオで聞くと痺れてしまう。
Mellow Waves

Mellow Waves

インタビュー読むと、息子と仲良し親子でほっこりする。結局「あなたがいるから」が1番好き。特に予定もないので、スーパーに買い物へ。サーモスのタンブラーが安くなっていたので購入し、ノンアルコールビールをチンチンに冷やして飲んだ。おつまみは自家製の梅味噌とマヨネーズに、きゅうりとキャベツ。本当は北海道物産展で試食した、イカの塩辛もテーブルに並べたかったのだけども、すごく高かったのだ。店のおじちゃん曰く、今年はイカが高騰しているようで、これから更に高くなっていくらしい。ビール(ノンアルコール)を飲みながら、Netflix是枝裕和『ゴーイングマイホーム』を最後まで観終える。
ゴーイング マイ ホーム DVD-BOX

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たまらなくおもしろい瞬間が多々あるが、ひどくまとまりに欠けた作品で、視聴率が低かったのはうなずける。でも、是枝監督にはまたぜひとも連ドラを手掛けて欲しい。是枝作品におけるYOUの演技は抜群に素晴らしいのだけども、あれはどこまで脚本でどこからアドリブなんだろう。今作における新井浩文といい、『海よりもまだ深く』における池松壮亮といい、是枝作品における”むやみやたらに気のいい後輩”との兄弟のような関係性は、監督の実体験でモデルがいるのだろうか。先日の是枝×坂元のトークショーによれば、YOUや小林聡美が演じる口やかましい”姉”は、自身の姉がモデルであるらしい。そう言えば、『海よりもまだ深く』では小林聡美阿部寛に「また家のこと書いたら、ぶっ飛ばすわよ。家族の思い出はあんただけのものじゃないんですからね」というようなナイスな台詞があった。


日曜日。雨の予報だったが、晴れ間が覗いていたので、チャンスだとばかりに、タオルやシーツの類をまとめて洗濯。都議会の投票行って、ミスドでモーニング。暑いのでアイスコーヒーにした。ホットだと無限におかわりができるのに、アイスだと氷で量を誤魔化された1杯のみなのは納得いかない。アイスは業務用のパックを購入していて、原価が違うからなのだろうけども、せめて1杯くらいおかわりOKにしてくれたら、夏場のミスドをもっと愛してしまうだろうな。新商品のかき氷「コットンスノーキャンディ 黒みつきなこ白玉あずき」がとても美味しそうだった。ミスドを後にして、電車に乗ってはるばる鶴見へ。駅からの送迎バスに乗り、「ユーランド鶴見」にチェックイン。
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周辺にスーパー銭湯的施設が3つ隣接するという激戦区で、最も渋い佇まい。内装も昭和チックで、客層も8割が高齢者である。そら、今時の若者たちは「RAKU SPA 鶴見」に行くだろう。なんせプラネタリウムつきの岩盤浴があるらしい。しかし、この「ユーランド鶴見」がいいのだ。サウナと水風呂が絶品、温泉もよし。黄土×ゲルマニウム鉱石を謳うサウナがまずもってグッドコンディション。温度計が示すのは90℃ちょっとですが、常にロウリュウされているような強烈な熱波を感じます。時計の進みが異様に遅く感じて10分入っていられない熱さでした。でも、それがたまらなく気持ちいい。そして、何故かほのかにいい香りがします。さすがマイナスイオンサウナ。そして、水風呂。調子がいい時は9℃といった1桁台を記録するそうですが、この日は12℃。それでも充分過ぎるほどにピシャリと冷える。これくらいの温度だとサウナ後であろうと30秒もすれば、手足から痺れてくる。でも、まだ身体の中心は冷やしたい。そんな時は、手足だけ淵に出してしがみつくように凌ぐのがいいでしょう。温度だけではなく、水量もジャブジャブで、とても気持ちいいです。塩素臭もなし。100℃から10℃への急下降、ととのってしまう。サウナと水風呂の関係性は、例えるならジェットコースターである。助走の上昇が長ければ長いほど、下降のスリルが増します。そして、休憩用の椅子や屋外には寝湯もあり。滝シャワーやほてりを冷ます低温温泉も気持ちいいです。風呂から上がりいざ食堂へ。お客さんがカラオケでド演歌祭り、染みる。そんな中、おじいちゃんと孫娘のむちゃくちゃキュートな『アナと雪の女王』の”ありのままの”デュエットに遭遇できて、ほっこり。まったくの他人である知らない爺さん、婆さんの人生が落とし込まれたような歌声を聞きながら、冷やし中華(ゴマダレ)を食べて、もう最高にディープリラックス。加齢臭に満ちた仮眠室でグッタリ寝込んでから、退館です。LINEクーポンを使えば、1000円もしないで1日いられるので、近場の方は「RAKU SPA 鶴見」のみならず、ぜひ。ときに、サウナのテレビで流れていた『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』の再放送がむちゃくちゃおもしろかった。”ナスD”というフレーズは何度もTLで目にしていたのだが、何のことやわかっていなかったのだけども、この放送を観て、もしかするとこの人のことかと気づけた。それくらい、ディレクターが演者であるU字工事を喰っていた。この日、ゴールデンタイムで特番が放送だったのだけども、帰宅までに間に合わず。無念。



月曜日。昨日、武蔵小杉の駅ビルに入っていた「メルヘン」でたまごサンドを買って帰ったので、朝ご飯として食べた。マヨネーズが少なめの薄味で、セブンイレブンのたまごサンドの方が美味しいではないか。「メルヘン」の良さはフルーツサンドに限るのでしょうか。今やっているセブンイレブンのくじ(700円以上買うと引けるやつ)は、久しぶりによく当たる気がする。しかし、「レモンで元気」やら「いろはす レモンと塩」など、レモン関係のものばかり当たるので、全部丸善の棚に積んで置きました。ときに、夏は汗をかくので塩分補給、ってよく見かける言葉で、それに特化した商品がたくさん出ている。しかし、いつもはあれだけ減塩だ、減塩だ、と叫んでいるのに、夏場に少し汗をかいたくらいで現代人の身体に塩分が不足するのか疑問ではないだろうか。絶対に騙されんぞ。とは言え、この日は最高気温35℃でとにかく暑い。そして、嘘みたいに湿気の強い日であった。前だとこういう日を「うえーサウナに入っているみたいだ~」とか言ったものだけど、今となっては、「サウナとか超いいじゃん!」となるので、新しい形容が必要だ。「水の中を泳いでいるみたい」ではポエミーが過ぎるし、うーん。とかどうでもいいことを考えながら帰った。

First Squeeze!(初回生産限定盤B)(2CD+DVD付)

First Squeeze!(初回生産限定盤B)(2CD+DVD付)

2年前に出たJuice=Juiceのファーストアルバム『First Squeeze!』をちゃんと聞いたらとてもよくて興奮した。6月に段原瑠々さんが新加入したのを知らなったので驚きました。
hiko1985.hatenablog.com
帰宅して、坂元×是枝トークショーのレポートを書き上げる。ややまとまりに欠けますが、手の震えと説得のくだりはお気に入りなので、ぜひ読んで欲しいです。ブックマークのコメントに、「坂元裕二twitterとかに書かないでと言っていた気がしたが、まあブログはいいのかな。 」と書かれていたんですが、それは「この部分はオフレコでお願いします」という言い方であって、全体のレポート禁止はこの日発されていないと思います。つーか、もしそう言ったなら、”ブログはOK”なわけないですものね。



火曜日。仕事後にタワーレコードでHAPPLEのニューアルバム『ハミングのふる夜』を購入。

ハミングのふる夜

ハミングのふる夜

大好きなバンドの待望の3rdアルバムだ。とびきりのポップソングとナイスな演奏(特にドラムが好きだ)が詰まっている。土曜日のザ・なつやすみバンドとのリリースパーティー楽しみだ。台風だったようで、天気は大荒れ。凄まじい雨音を聞きながら、家であだち充の漫画を読み耽る。
ラフ 1 (少年サンデーコミックス)

ラフ 1 (少年サンデーコミックス)

『ラフ』と『QあんどA』を読み終えた。やっぱり『ラフ』は最高。二宮さんはあだちヒロインの中でもトップクラスにかわいい気がする。『QあんどA』は佳作としか言いようがないが、『いつも美空』とかあだち充が稀に書くこういった異色SF作品もなかなか味わいがあるのだ。あだち作品は西武池袋線沿線の風景がわりとそのままトレースされて描かれていて、とても親近感を覚える。しかも、あだち充は30年来のスワローズファンだ。また、大泉洋あだち充の熱烈なファンと知り、嬉しくなってしまった。エッセイの表紙イラストもあだち充。2人の共通点は落語だろうか。ネットサーフィンしていたら、『熱中時代』というブログの「あだち去を数えてみた」という記事「あだち去(ざり)」を数えてみた : 熱中ブログ!に感銘を受けてしまった。“後ろ姿で、片手だけを上に上げ、もう一方の腕は降ろしたままかあるいはポケットに”、このあだち充漫画の頻出するキャラクターの去り際のポーズを”あだち去”と名付け、その登場回数を数え上げているのだ。素晴らしい!!!私もこういうことだけをして生きていきたい。
H2 (29) (少年サンデーコミックス)

H2 (29) (少年サンデーコミックス)

高校のクラスメイトに『H2』の29巻があれば5分以内に絶対泣ける、と豪語しているやつがいた。面倒くさいので誰も「じゃあやってみろよ」とは言わなかったが。その後、彼は売れないロックバンドのボーカルになったらしい。『H2』の29巻は確かに泣けるのだけど、読むと必ず彼を思い出してしまうのだ。



水曜日。仕事後に友人とびっくりドンキーでハンバーグカレーを食べた。ハンバーグカレーだなんて、すっごくバカみたいで童心に帰ってしまう。最近観始めた『フリースタイルダンジョン』の話ばかりしていた。コーネリアスの新曲歌いに行こうぜ、と言うので、カラオケに行くも入っていなかった。しかたないのでthe ARROWSを歌った。
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私たちの青春のバンドだ。インディーズの3枚もいいが、メジャーデビューして「イエスタデイワンスモアーズ」(名曲だぜ!!)とか「二人三月」あたりのシングルをリリースしていた頃とか本当にもう!解散はしていないが、ライブはまったくやっていないよう。復活ライブあったら、行きたい。「BGMの向こう側」とか「大脱走~虹色のアーチ~」とか聞いたら、泣いてしまう。帰宅して、坂元裕二『往復書簡 初恋と不倫』を繰り返し読み直す。ドラマとはまた違う凄みがあってゾクゾクしてしまう。むちゃくちゃ夜更かししてしまった。 



木曜日。案の定スーパー眠い。退社して、下北沢の駅前劇場で劇団かもめんたる『ピンクスカイ』を観た。うーん、何とも言えないな。台詞の鋭さや脚本の構成は心から素晴らしいと思えるのだけども、役者の演技が個人的にしっくりこなかった。あと、演劇として観るには演出が弱いようにも感じた。劇場の前方は段差がまったくない上に座席もギュウギュウなので、舞台上が人と人の隙間からしか観えなかったのが何より残念だった。舞台の端の方に行かれると何が起きているのか全然わからない。ここはほんと改善して欲しいものです。観賞前に食べた「珉亭」でピンク色の炒飯は美味しかった。ハムに着色した食紅だかで炒飯がピンクに染まっているのだ。ここで昔、甲本ヒロトがバイトしていたというエピソードは本当に最高だと思う。

帰宅して売野機子ルポルタージュ』1巻を読む。売野機子の漫画はどこがいいのかまったく言語化できないでいるのだけども読み続けている。欅坂46の「エキセントリック」のMVに痺れまくる。
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これ1本観れば、『残酷な観客たち』必要ないのでは。全員凄いが、とりわけ平手とぺーちゃんの表現力。庵野アニメみたいだ。



金曜日。仕事終えて、池袋「タイムズスパレスタ」をショートタイムでサクっと90分。サウナと水風呂は相変わらず高品質、しかし混み過ぎ。あんなに混んでいるなら、もっとこま目に清掃が必要なのでは。週末は避けた方が無難だ。サウナから上がって、「もうやんカレー」を食べて帰る。ヤクルトも山田が爆発して、快勝の雰囲気。最高の週末・・・と思いきや9回裏に小川が6点取られて逆転負け。これはもう歴史に残る負け方。本当にこの20年で1番ひどいチーム状態である。監督が辞めてどうにかなるとは思えないが、真中はここまでチームを崩壊させた責任は取るべきだと思う。しかし、HAPPLEのアルバム、本当に良い。
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