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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

シャムキャッツ『君の町にも雨はふるのかい?』

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夏にリリースされたシングル『マイガール』から短い間隔でのリリース、「曲が出来たので出しまーす」という感じ。練り込まれたアンセムが収録されているわけでもないし、サウンド的にもまとまりはない。音楽雑誌で6/10点をつられてしまうような、まさにバンドの過度期が刻印されたEPなのだけども、この若さに身をまさかせるでもなく、円熟するでもない、何がしたいんだかよくわらない音源が妙に愛おしい。同じく掴みどころのない小田島等によるジャケットワークもナイスだ。5曲入りというのがまたすごくいい塩梅で、その点で個人的にはボーナスでライブ音源が12曲も入っているのは蛇足に感じる。このとりとめのない5曲を気ままにリピートしていたいわけです。


今作は若くもなく、かと言って老いてもいないシャムキャッツというロックバンドの制作ドキュメントである。で、ここにはバンドのポジティブな風通しみたいなものが心地良く感じられる。そこがいい。まとまりがないというのは言い換えれば、バンドのレンジの広さだ。次のアルバムに向けた前向きな模索と捉えたい。とりわけ「デボネア・ドライブ」(朝倉世界一!)における、ウォールオブサウンドのサイケデリアの中で歌われる、日常と幻想の溶け合い。

河口の分岐 神様でもいるような


シャムキャッツデボネア・ドライブ

バンドの新しい可能性を垣間みる。しかし、白眉はやはりMVもイカしている「洗濯物をとりこまくちゃ」であろう。
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アコギ、スネア、シンセサイザー、何気ない音の鳴り一つ一つがセンスに溢れていて、かわいらしくてライトでポップ。何より、夏目知幸の作詞術が完全にネクストレベルに到達しているではありませんか。登場人物の人称はシームレスに切り替わり、会話で歌を歌う。

「よ、さっきは悪い、寝起きだったんだ
 ね、休みの日に限って雨さ」
「まぁ、いいんじゃないの、ところであれだ、
 子供生まれて引っ越したんだ」

なんていう、どうってことない友人同士の電話の会話。

さ、飲みすぎたけど早起きだ
快晴、二回転、たっぷり干せた
コンビニコーヒーでもすすりましょうか
通りを行くと 西から雷鳴が・・・

よく晴れた休みの日、溜まっていた洗濯物をまとめて干して、少し悦に浸りながらコンビニに珈琲でも買いに出掛ける。そんな実に小さな幸福感に満ちた物語の中で、忍びよる雨の気配と共に、芥川龍之介が言う所の”何か僕の将来に対する唯ぼんやりとした不安”みたいなものを完璧に捉えてしまっている。そして、やはり「君の町にも雨はふるのかい?」というフレーズに宿る詩情が素晴らしいではないか。思わず、曽我部恵一の声で再生されてしまう。Weezer奥田民生で解釈したようなロックチューンもある。
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「〜だの」という言い回ししかり、「牛乳飲んで/大きくなって/好きに遊んで/好きに眠るのさ」あたりはオマージュのよう。サニーデイ・サービスユニコーン(もしくはくるり)といった偉大なる先人バンドから”何か”を受け取ろうとしている感じのシャムキャッツ。今そのポジションはガラ空きなんだから、それはもうほんと、そろそろシャムキャッツに絶対モノにして欲しいぜ!って思いますね。