青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

住所不定無職『GOLD FUTURE BASIC,』

GOLD FUTURE BASIC,

GOLD FUTURE BASIC,

1stアルバム『ベイビー!キミのビートルズはボク!!! 』から3年。間にリリースされた『JAKAJAAAAAN!!!!!』『トーキョー・ポップンポール・スタンダードNo.1フロム・トーキョー!!! 』という素晴らしい2枚のフルボリュームシングル(7曲入り)で既にして1stにあったガレージロックの意匠は完全に剥がれ落ち、キラーチューン製造機として活動していたわけだけども、待望のこの2ndアルバムはちょっと群を抜いた出来栄えだ。泣いちゃうくらいにいい。未聴のリスナーに音像への誤解を招きやすいであろう「住所不定無職」という野暮ったい名前ももはや邪魔になってくるほど。しかし、無職の彼らがハローワークで出会い、ハロープロジェクトの話題で盛り上がり、音楽の世界への扉を開いた(ハロー)、という結成ヒストリーはどう考えても眉唾だが、最高にキュートなので捨てがたい。

ときに、ザ・ゾンビーズ子のメロディーとアレンジ、ユリナの歌唱と作詞能力の冴えはちょっとした領域に足を踏み入れている。言葉が跳ね、メロディーをより際立たせている。日本語ポップスを聞いていて、よかった!と思えるのはこういう時だ。また、これでもか!と詰められたアイデアの全てがスベってない。つんく♂全盛期かくや。メロディーの魔法を最大限に高める工夫がこらされている。この素晴らしさを、バンド名やルックスのコミック感に惑わされスルーしてしまうのはもったいない。久しぶりに「全曲シングルカット可能!」って言葉を聞きましたよ。JET SETさんは「2013年の『LIFE』なのか!?」と書かれていましたが、本当に全曲名曲。実はかなり似たサウンドを鳴らしていたTomato n'Pineのキラーチューンアルバムとして名高い『PS4U』
PS4U

PS4U

をぶっちぎりで飛び越えているのではないかしら。どの曲がオススメとかも難しいな。全部いいから。無理に選ぶなら、マイケルも真っ青のミラーボール下の恋が宇宙にコネクトしてしまう「CRIMINAL B.P.M」「宇宙のYeah!!!」でしょ、それに『めちゃ×2イケてる』の主題歌になりながらも、突如封印されてしまった名曲「1.2.3!」が「1.2.3!〜fuckin' copyright ver.〜」と挑戦的なタイトルで蘇っているのも泣けるし、スカート澤部渡とムーディーにデュエットを決める「ムーンライト・シティトーク」がトピックとしては強いでしょうか。でも個人的には「月曜21時に恋してる」「Happy Rain〜雨のハイウェイ大脱走〜」のポップスとしての完成度の高さに1番痺れたかなぁ。




GOLD OLD MUSIC
GOLD FUTURE BASIC

まず、過去の輝かしき音楽への敬意と感謝がある。リードトラック「IN DA GOLD,」において韻を踏みながら少しだけその対象を挙げている。

中坊でgetったDammed CLASH
My GOD ブライアン コリン ポール J Dee
illmaticなstill magic
SLY! WOUMACに繋ぐ上手く
ピチカートするよこの心臓
HIGH→LOWしていくボクの身長
NIAGARAの先のA&Mから流れる
ヒットチューンにKNOCK&DOWN

このご時世、その趣向の幅広さを賞賛する文脈はもう通用しないと思う。しかし、その対象への愛の熱量は評価されるべきだ。住所不定無職の楽曲に上に挙げられた彼らが全て息づいている。

キミ閉じ込めたメロディだらけ!


「ジュリア!ジュリア!ジュリア!」

過去の遺産の恩恵を存分に受けとり、現代的な感性でハイブリットな日本語ポップスのキラーチューンとして放出。そして、これこそがポップミュージックの未来へと続いていく礎なのだ!と高らかに宇宙に向けて発信する。

こんにちは。こちら東京の住所不定無職です。こちらは最新型のマジでヤバいサウンドシステムです。
こんな感じでこの回転は止められません。未来への旅はまだまだ続きます。それでは良い旅を!

「ハロー、聞こえますか?ここから煌く未来が始まります」なんてな具合だ。研ぎ澄まされたポップミュージック、例えば山下達郎の楽曲などを聞いていると、「宇宙に届きそうな歌声だなぁ」なんてウットリしてしまう事があるのだけども、住所不定無職の音楽もその感覚に届かんとしている。もしくは、今作品においてその憧憬が大きく向けられているブラックミュージック(Earth, Wind & FireStevie WonderGeorge Clintonだとかが)がすぐに宇宙と交信を始めてしまう事へのオマージュだろうか。レトロフューチャー感といい、ラジオを想わせるインタールードを挟む形式といい、このアルバムは海の向こうの今年度の傑作、Janelle Monáe『The Electric Lady』

The Electric Lady (EU Version) ~ Janelle Monae(香港盤)

The Electric Lady (EU Version) ~ Janelle Monae(香港盤)

をより能天気にしたバージョンのように思えなくもない。無理矢理だろうか。勿論あちらに比べて壮大さもアクチャルな要素もほぼないわけだけども、その分、音楽への強い気持ち強い愛ってやつがより生々しく響いてくる。あえて締めに陳腐な言葉を添えてしまうなら、これは音楽の魔法についてのアルバムだ。その魔法は続いていくであろう未来をも照らす。AKB48の傑作シングル「恋するフォーチュンクッキー」がポップミュージックに自己言及しながら「未来はそんな悪くないよ」と綴ったあのグッドヴァイブレーションをアルバム1枚通してやりきっている感じかしら。超絶的にオススメです!