青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

祝ブログ2周年記念 ザ・なつやすみバンドのこと

祝ブログ開始丸っと2周年。そうなのです、このブログを始めたのは2010年の5月頃で、それはちょうどザ・なつやすみバンドのライブを初めて観た時と重なるわけです。つまり、きっと、僕はザ・なつやすみバンドについて何か書きたくてブログを始めたのだと思います。多分。そんなザ・なつやすみバンドがとうとう全国流通音源1stアルバム『TNB!』を完成させ、6/6に発売となります。

TNB!

TNB!

わーわー。これがもう本当に素晴らしいアルバムなので、大プッシュしていきたい。とりあえず、イントロダクション。



2009年の昆虫キッズとの出会いというのが僕にとって非常に大きくて、ライブハウスではとてつもなくかっこいい音楽が鳴っている、というのを教えられたわけです。足繁く彼らのライブに通い、行けなかったライブさえも対バン相手の名前をチェックしていたのですが、その中でひと際目を引いたのがザ・なつやすみバンドでした。YouTubeで「なつやすみ(終)」のライブ映像を観て、そのソングライティングの才能に打ちのめされる。そして何より中川理沙の醒めているようで芯の強い歌声と詩世界に強烈に惹きつけられてしまったのです。

物憂げな犬と 歌わない鳥たち 
からっぽな私と みんな似ているのです

HPを覗いてみると、『なつやすみの誘惑』という自主音源(録音よしむらひらく)を完成させたという事で、いてもたってもいられなくなり、中川さんをTwitterで見つけ出し「どうやったら買えますか!?」と@を飛ばしたわけです。今では考えられない積極性。すると「ライブ会場で先行販売しますよー」との事だったので、いそいそと秋葉原グッドマンに足を運ぶ。そこで観たライブに、これまた衝撃を受けるわけです。ザ・なつやすみバンドというネームから連想されるのは牧歌的、楽園的なイメージだけれども、それに加えて、過ぎ行くモラトリアムを鎮魂するかのようなヒリヒリしたムードをも持ち合わせたバンドだったのだ。

そのサウンドの核を担っていたのがギターの大高健二。下を向きエフェクターを操りながら演奏するというまさにシューゲイズといった佇まいで、ときに何から逃れるための防御膜のような空間を、またときには、感情を爆発させる轟音をバンドにもたらしていました。今のザ・なつやすみバンドからはちょっと想像がつかないですよね。「いつまでも夏休みだといいなぁ」という無邪気な祈りは、同時に「終わってしまう事」への諦観に満ちているように思えた。

当時、大学を卒業し、社会人生活1年目を終えたばかりの僕のムードにズバっとはまってしまったのだ。夢中になるその一方で、正直言ってこのバンドが長く続いていくとは思えなかった。いい音楽が簡単に売れる時代ではないし、ザ・なつやすみバンドの面々も学生生活を終えて、進路を確定させねばならぬ時期であったから。そんな予感に沿うかのように2010年にギターの大高が脱退。しかし、その逆境の中で救世主が登場する、ご存じMC.sirafu!まさにここがターニングポイントである!とか言いながらも、実は恥ずかしながら当時は「エムシー素面とはなんぞや?」という感じでしたので、「何故このかわいい子供たちの中におじさんが!」とか「ピアノとスティールパンって上物同士ケンカしちゃわないの?」とか、まぁ色々訝しがっておりました。知らなかったんですね、MC.sitafuという人の凄さを。

誰だよ!?という人もまだいるかもしれません。そもそも何故「MC」なのか。何でもそもそもの出自はヒップヒップやクラブミュージックだったそうで、楽器を持って演奏を始めた最初のバンドが「片想い」なんだそう。そう、MC.sirafuとはあの片想いのほぼ全ての楽曲を手掛ける主要メンバーなのだ。アナログ7インチでありながら、即完売の大ヒットシングル「踊る理由」も彼のペンによるものなのですよ。凄いですねぇ。

しかし、MC.sirafuを知らない人は片想いも知りませんよね。では、これでどうだ、あのceroの特殊任命サポーターであります!

これは凄い!更には、昨年の下北沢インディーファンクラブフェスがシラフェスと呼ばれるほどに多くのアーティストの演奏に参加するプレイヤーなのです。ざっと挙げてみると、NRQ、Alfred Beach Sandal、oono yuuki、あだち麗三郎、mmm、videotapemusic、ホライズン山下宅配便、アナホールクラブバンド、ジオラマシーン、チークタイム温度、表現、ボンボンスパイラル、昆虫キッズ、スカート、ヤング、マリリンモンローズetc・・・。そして忘れてはいけない、2012年3月に傑作アルバムを発表した中川理沙とMC.sirafuによるピアノとスティールパンのニューアンビエントポップスデュオうつくしきひかり。

うつくしきひかり

うつくしきひかり

http://d.hatena.ne.jp/hiko1985/20120414/p2
改めて羅列すると凄まじい面子。彼の渡り歩いた道筋が描くその円形が今の東京のグッドミュージックシーンそのものではないか。そんな御方が何故、ザ・なつやすみバンドにパーマネントメンバーとして加入したのか。以前、聞いてみた時は「もったいなかったから」と言っていた。中川理沙の才能とギターレスバンドとしての可能性に未来を見たらしい。氏の加入によるメリットはソングライティング、パフォーマンス、企画力、人脈など挙げればきりがないが、何より「MC.sirafuがいるのだ」という安心感からなのか、演奏するンバーの表情が、グッと柔らかく、そして楽しげになった。

かつての現実逃避を奏でるバンドの姿はそこにはなく、世界を祝福するメロディーとビートをそなえた光輝くポップソングを連発している。スティールパン、トランペット、多彩なコーラスワークなどにより、チェンバー、トロピカリズモといったトレンドのサウンドも兼ね備えたそれらの楽曲は、「ポップソングにはまだこんな可能性が残されていたのか」という驚きに満ちている。
そして、そんなバンドの好調は、コンピレーションアルバム『モノノケ大行進』
モノノケ大行進

モノノケ大行進

への参加、下北沢インディーファンクラブフェスでの入場規制動員、rojiでの投げ銭ライブ、ぐるぐる回るフェス欠場、オルグを満員にしたNRQとのツーマン、コトリンゴの前座抜擢、と着実に結果として現れ、知名度を上げてきています。そんな!そんなザ・なつやすみバンドの1stアルバムがついに発売されるのです。これはもう事件だ!つづく。


おまけとして、カクバリズム社長のドライブ感で押し切る『TNB!』の推薦文を記載しておきます。「窓は開けておいてよ、いい声聞こえそうさ」と!フィッシュマンズですね。個人的には、「大推薦!」と歯切れよく終わった後に「全曲良いです」と書き足しちゃった所が好きです。どうしても言いかったんですよね!

これはもうね、驚愕の出来栄え!まじで感服!
インディーとかメジャーとか、ジャンルは〜〜だとか、そういった類いではなく、単純に”素晴らしい”です。懐かしいような、昔聞いたような、でも新しい感じ。それでいて耳への定着感がある。清涼、清純の中に毒と雑味がある。本当に凄い素敵な音楽。やっぱり窓は開けておくべきなのだ。こうやってポップの向こう側へと続く未来を提示してくれている名盤が入り込んでくる。ほんとジャンルレスに大推薦!全曲良いです
カクバリズム代表 角張渉