青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

hi,how are you?『Hi,Ppopotamus How are You?』

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20歳前後の若さを持て余していた頃というのは、なんだか1人でいるのが損であるかのような気分で、とにかく誰かに会いたがっていたような気がする。多分あの時期に、できるだけ多くの人と共有しておきたい何かがあったのだ。しかし、自分からドンドコ「遊ぼう!」と声をかけていく神経の太さは当時のボクも(今のボクも)持ち合わせておらず、モジモジとこうつぶやく。

hi,how are you?

そんな「やぁ、調子はどう?」という問いかけに隠れているのは、「どっかにいこー」に違いないのです。そして、今その挨拶は、アメリカ1ナイーブなメロディーメイカー、ダニエル・ジョンストンを経由して、京都の誇るインディーポップユニットの名に冠されている。原田と馬渕の男女デュオからなるハイハワですが、この度、主に鍵盤を担当していた馬渕さんが卒業するらしい。彼らの新作、つまるところ現体制ラストアルバム、その名も『Hi,Ppopotamus How are You?』はロックからアイドルまで日本のポップミュージックの名曲をかき集めたカバー集!で、ありながらも実にハイハワオリジナルのラストアルバム然とした佇まい。新世代ならではの直球のフレーズサンプリングセンスが称賛されてきたハイハワが、最後にどーんと曲をまるごとサンプリングしてきたのです。メンバーに最後に"贈る言葉"を、他者のメロディーで伝えるなんていう”照れ”がかわいらしいではないですか。
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Theピーズは言わずもがな、サディスティックミカバンド「ハイ・ベイビー」、おニャン子クラブ「真っ赤な自転車」、口ロロ「渚のシンデレラ」、サニーデイ・サービス江ノ島」、真心ブラザース「うみ」と、見事に「どっかにいこー」なナンバーでA面は占められている。郷ひろみ樹木希林の「林檎殺人事件」のカバーを皮切りに、B面は“別れ”をモチーフにしている。勿論、ハイハワの2人に「愛のもつれ」があったとは思えないわけですが、どっかに出掛けてしまったからには、終わりが訪れます。あらゆる”別れ”の変奏を聞くことで、僕らは悲しみに備えないといけません。このアルバムは斎藤由貴の名曲「卒業」でセンチメンタルはピークを迎えるわけですが、ラストに文字通り、ボガンボスの「最後にひとつ」が流れるのが実に粋だ。泣いちゃう。

あふれ出た夢は ドレスにつめて
見知らぬ街でひとり歌えば
せまいこの国で
心をこめて
こんないい子は よそにいないよ


とぎれとぎれでも 拍手をあびて
赤いライトに愛を さがして
友達の顔を 思いうかべて
まるで小鳥のように歌うよ


これで最後と 最後と



ボガンボス「最後にひとつ」

『?LDK』(2014年1月)、『さまぁ~ぎふと』(2014年8月)、『にこいち白書』(2014年12月)、『Hi,Ppopotamus How are You?』(2015年5月)と、hi,how are you?という2人組が、その天才的なポップセンスを、ほんとになんでもないかのように、矢継ぎ早にリリースしたこの1年。その熱狂が伝わってきてのはごく一部の人達だけかもしれないが、数年後、10年後、数十年後、世界中の酔狂なポップフリーク達が、CDやレコードという前時代的産物を掘り漁ったとして、hi,how are you?のこの1年の4枚は、きっと新鮮な驚きを彼らにもたらすでしょう。気の合う友達ってたくさんいるのさ。

こんな歌 歌いたいと思っていたのさ
すてきなメロディー
あの娘に聞いて欲しくて
ただそれだけで 歌うぼくさ
この歌のよさが いつかきっと君にも
わかってもらえるさ
いつか そんな日になる
ぼくら何もまちがってない もうすぐなんだ



RCサクセション「わかってもらえるさ」