青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

Hi,how are you? のライブのこと


1stカセットテープ『MINISTOP DIARY』におけるノイズ混じりのローファイは、それはもう素晴らしいものだった。しかし、そのローファイに惑わされ、Hi,how are you?の2人の音楽的才能を見誤ってもいたようだ。ライブでその音を聞き、才能の煌きを目の当たりにした。ギターと鍵盤のデュオというビートレスの編成ながら、原田君の歌とギター(オリジナルに上手で、かっこいいのだ)が跳ね、確かなリズムを発生させている。馬渕さんの鍵盤は、ベタな表現になってしまい申し訳ないのだけど、水彩画のようなタッチで楽曲に色をつけている。快楽のツボを押さえている。そして、何より楽曲のクオリティの高さにうなった。「お盆」「潮風ちゃん」「熱海」を演奏しているこのライブ動画あたりがその魅力を伝えるのに役立ちますでしょうか。

Hi,how are youの楽曲は、ギター弾き語りというフォーマットが陥りがちな古臭いフォークに留まる事なく、海外のインディーミュージックの感性で日本の古き良き歌謡をリプロデュースしている。言葉と譜割りのもたらす快楽性に強い才能を感じる。公式HPの「BOKULA=NO=LIKE」というコーナーに「ときめきトゥナイト」の動画が貼り付けられているだけはある。また、原田君の作詞におけるサンプリングセンスもまた天才的だ。新旧問わず、幅広いジャンルからの選択とそのはめ込みの技術。例えば、「?LDK」における「たま」だとか「マカロニほうれん荘」だとか「サリンジャー」だとか「白線流し」だとか「微笑み返し」だとかが続いた後の、「我あいNEED mmm(ミーマイモー) コメカミに撃ったLOVEMETENDER」にはまいった。「mmm」をもうこんな風に使えるだなんて。で、こういうサンプリングが所謂渋谷系的ネタ使いという感じではなくて、その1つ1つを原田君が本気で愛している、というのがビンビンに伝わってくる所が野暮ったいんだけども、たまらなく愛おしい。原田君は所謂YouTube、MP3育ち、膨大なアーカイブに自宅で気軽にアクセスできる世代というやつだと思うのですが、彼の音楽には、ちゃんと自分の足で歩いた、その「移動」というのが匂っている。そこがいいのだ。