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ポップカルチャーととんかつ

Hi,how are you?『?LDK』&原田晃行インタビュー

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京都の誇るヤングポップデュオHi,how are you?の記念すべきファーストアルバム『?LDK』が曽我部恵一主催のローズレコードよりリリースされた。

?LDK

?LDK

収録曲は“部屋”というテーマでゆるく括られている。しかし、ジメっとした内省的な所はなく開放的だ。家の中でダラっと旅の事とか女の子の事とか思い出している内に、脳味噌の中であちらこちらへ移動してしまう感じ。ヴィジュアルで言うと『ドラえもん』てんとう虫コミック25巻収録の「ブルートレインは僕の家」の家ごと列車になっちゃうあの感じ。伝わりますでしょうか?




素晴らしいアルバムなのである。インディーポップの感性で歌謡曲を再構築したようなメロディーがいい。ギターと鍵盤(馬渕さんの音色の添え方も最高!)のみという楽器編成からすれば、フォーキーに、はたまたオーガニックなサウンドに傾いても不思議ではないのだけど、どこまでもポップだ。そして、ほんのりとファンキーなのだ。ビートレスな楽器編成にも関わらず、ハイハワの音楽は雄弁にリズムを伴い、跳ねている。素晴らしきソングライティングセンス。さりげなく柔らかな音像の録音もいい。家に招かれて弾き語られているようなリラックス感。まさに、僕の部屋においでよ。大袈裟な事なんてまるでないけれど、でも確かに美しい瞬間が無数に忍んでいる日常。それを気負う事なくそのまま音楽にしたようなアルバムだ。収録曲は季節をほんのり刻み、梅雨から始まり春に向けて時系列に並ぶ。1曲目では「僕の部屋においでよ」と強気に響いていたフレーズが、終盤のアルバム表題曲「?LDK」では「”僕の部屋においでよ”なんてもう君には言わないから」と鳴る。「”イン・ザ・フライト“の感じすかね」とVoの原田は言う。

ドアの外で思ったんだ あと10年たったら
なんでもできそうな気がするって
でもやっぱりそんなのウソさ
やっぱり何も出来ないよ
僕はいつまでも何も出来ないだろう


フィッシュマンズ「In The Flight」

確かな時の流れがその有限性を浮かび上がらせる中で、若者の万能感とそれに対するニヒリズムが同時に鳴っている。そうです、これは最新の若者的音楽最高峰である。


さて、表題にもインタビューとありますように、Hi,how are you?のソングライターである原田君と歌詞についてお話をする機会を頂けました。原田君の歌詞にはいくつかの特徴がある。まず、サンプリングセンス。無数のカルチャーからの引用は、渋谷系的なスノッブさは皆無で、どれも彼らの生活にとても馴染んだもののように聞こえる。ようは愛があるのだ。これは彼らが敬愛する銀杏BOYZからの影響かしら。そして、言葉数の少なさ。また、固有名詞、体言止めのメロディーへのはめ込み方にも抜群のセンスを感じる。そこらへんについて聞けたらと思います!

ヒコ:ハイハワの歌詞って結構ディティールが詰まってるとかいうか具体的ですよね。


ハラダ:平成の『なんとなくクリスタル』って前言われましたね(笑)

なんとなく、クリスタル (新潮文庫)

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ヒコ:ポップソングの歌詞って具体的であればあるほど普遍性を持つというか、同じ経験はなくても共感できてしまう不思議な魔法があると思っているんですが、そこらへんは意識してますか?


ハラダ:んー、普遍性は意識してないすけど、歌詞は本当にあったことを思い出しながら作るんで、近鉄乗ったとか熱海行ったとかちかげ君と遊んだとか。日記とか(写真の)アルバムに近いです。


ヒコ:なるほど、だから自ずと具体的なんですね。ただ楽しいとかうれしいとか寂しいじゃなくて、その感情にまつわる情景があるというか。


ハラダ:卒業式の謝恩会とかで流す走馬灯みたいなビデオに近いかもしんないす。断片的じゃないすかあれ(笑)とりたてていい思い出じゃない場面とかも切り取られてるかんじかな。


ヒコ:なんでもない日常を切り取るのとても上手ですよね。曽我部さんとか、峯田君の系譜にあるエッセイスト向きと言いますか。


ハラダ:それで小銭儲けできたらいいすね!(笑)


ヒコ:ハラダ君の歌詞ってサンプリングというかオマージュというか結構フレーズの引用が多いですよね?


ハラダ:そうすね。でも、あんまり引用したくないんですけどね、ほんとは(笑)


ヒコ:引用は多いけど、ハイハワの音楽には圧倒的なオリジナリティを感じます。ハラダ君の歌のリズムによる所が大きいのかなと思うのだけど。


ハラダ:うれしいす!字余りっぽいのが嫌いなんですよ。


ヒコ:なるほど、確かに言葉の歯切れがいいですよね。それでいて、ミニマルな部分があって、ちょっと短歌とか俳句っぽさも感じます。


ハラダ:読むのですけど、最近短歌にはまってるんすよ。ベタすけど俵万智めちゃ好きすね。あと、永田和宏って人も好きです。

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夏・二〇一〇 (塔21世紀叢書 第 200篇)

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ヒコ:短歌のどういう所に面白みを感じます?


ハラダ:「5・7・5・7・7」のさいごの7・7すね!


ヒコ:やっぱり言葉のリズムみたいなものに関心があるんですね。


ハラダ:いつも歌詞もコードも流れで一緒に作るんすよ。あんまどっちかを先に作ることできなくて。


ヒコ:なるほど、一緒に作るから自然と言葉にリズムが宿っているのかもしれませんね。


ハラダ:そんなー(笑)いいように言ってくれてありがたいす。あと、「5・7・5・7・7」で風景浮かぶの、むちゃ興奮するんすよね。


ヒコ:ミニマルな言葉とリズムで世界を立ち上げる感じですね。


ハラダ:まさしく!飽き性で集中力ないから小説とか読めないっていうのもあるんですけど(笑)俵万智の短歌とか余計なものなく情景と気持ち浮かぶからアガりますね。


ヒコ:短歌に触れる以前からハラダ君の音楽が少し短歌っぽかったのは何故なんでしょうね。


ハラダ:Theピーズのはるさんの歌詞が好きだからかなー。「生きのばし」って曲の「ロックンロール 絵日記 眞露 粘る部屋」って言葉の並びとか最高です。単語三つで言いたいこと言っちゃうの作りたいなーって最近は思ってます。


ヒコ:短歌から俳句へ、みたいな感じですね?


ハラダ:うん。言いたいこと言っちゃうっていうか、情景かな。フィッシュマンズの「宇宙 日本 世田谷」とか。


ヒコ:ハイハワの「バンホーテン、冬。粉の味」もかなりイケてると思いますよ。


ハラダ:笑、てれちゃう/////。 キリンジのなんかの曲(「双子座グラフティ」)で「海岸 夜 満月」つーのがあって。簡素だけどあんま出てこないなーと思って。塗り重ねている感じだからかな?綺麗すよね。あー、、これを喋りたかったんです!(笑)

※このインタビューはチャットで行われたのですが、会話がどんどん流れていってしまう事に気づかず、序盤のやり取りが丸っと失われてしまっています。また、私が完全にど素人であり、死に質問が多かった事も起因し、2時間近くチャットしたのに採取文字1000字ちょい。本当に申し訳ございません。インタビューと言えば20,000字と叩き込まれてきた世代の私ですが、渋谷の教えに背く事となってしまいました。インタビューって難しいのですね。後、チャットルームというのは独特の緊張感がありますね。チャットをするのは中学生以来でした。モーニング娘。のファンサイトのチャットルームに後藤真希が降臨するという都市伝説がありまして、友人達とそのサイトに夜な夜なアクセスしてはゴマキの登場を待ち詫びていたあの日々だ。余談ですが、確かに「マキ」なるハンドル名の人物は現れ、そのチャットの住人達は完全に本人として扱っていたのです。絶対ニセモノなのに!常連でもない僕達は高嶺の華の「マキ」とは挨拶する事もままならなかった。お高く止まった奴である。やれやれ、ハイハワについて何か語ろうとするとどうしても自分史語りを始めたくなってしまう。さすが、銀杏BOYZチルドレンである。



さすがに、これでは短すぎるので、インタビュー後に雑談ライクに喋っていた部分も掲載します。あくまで雑談風ですので、ちゃんとしたインタビューはototoyさんに掲載されているものをお読み下さい!

<レコーディングについて>
ハラダ:はじめてのちゃんとした録音だったから、曽我部(恵一)さんも立ち会ってくれて。でもそのせいもあってがちがちに緊張してたんすよ。でも緊張してる感じが録音できてよかったです(笑)


ヒコ:おかげでファーストアルバムっぽい感じに(笑)


ハラダ:そすね!でも馬渕さんは全然緊張してなかったみたいだから、その僕との差もよかったかもしんないす(笑)


ヒコ:レコーディングでは、曽我部さんはアドバイスとかくれる感じだったんですか?


ハラダ:曽我部さんはいい意味でなんもいわなくて。「ずっと残るものだから後悔しないようにね!」てだけ笑顔で(笑)


ヒコ:いいすね(笑)最近の曽我部さんいいですよねー。今の曽我部さんの音楽の感じ、ハイハワ(とかマーライオンとか)若いミュージシャンの表現から少なからず影響を受けているんじゃないかって思います。


ハラダ:やー、ないすよ(笑)


ヒコ:「あるでしょうね」とはハラダ君からは言えないですよね(笑)


ハラダ:そすよ、本人に聞いたらなくても「そーかもね!」って言いそうじゃないすか(笑)


ヒコ:確かに。そういえば、『Quick Japan』のインタビューで「バンドは大学で終わっちゃうような気がしてるんで、最後に1枚」という発言があったけど、1枚では終わらない感じですよね?


ハラダ:どうすかね。でも、曲はいっぱいあるんで、夏あたりにまた出したいと思っています。


ヒコ: アルバム未収録の「ナイト・オン・ザ・プラネット」「潮風ちゃん」「お盆」「熱海」とか超好きです。


ハラダ:ありがとうございます!全部入れます(笑)




<ジャケットについて>
ハラダ:アートワークはもろダニエルジョンストンのパクリすね。


ヒコ:これってトナカイと男の子ですか?


ハラダ:そすね!鹿す!Hit Paradeってバンドのアルバムのジャケパクったすけど。

WITH LOVE FROM THE HIT PARADE / 愛をこめて… (紙ジャケット仕様)

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ヒコ:あーなるほど!だから男の子が裸なのか(笑)あれをダニエル風に。


ハラダ:なんで上裸なんすかねこれ(笑)ジャケにするつもりで描いたんじゃなくてだいぶまえに適当に落書きで書いたやつすね!


ヒコ:Homecomingsとのスプリットカセットのジャケットもハラダ君でしたっけ?あれむちゃ好きです。


ハラダ:畳野さん(Homecomingsのボーカル)と僕で半分ずつ書きました。


ヒコ:抜群にセンスいいですよね。絵は別に習っていたわけでもなく?


ハラダ:ちっちゃい時から落書きずっと好きで。僕、人の身体かけないんすよ、だからジャケも上半身だけで。


ヒコ:へえー。なんかちゃんとかける人があえて落書き風に書いているような感じでかっこいいんですよね。天性の落書きの才能だ。


ハラダ:天性だなんて、そんな(笑)




<『?LDK』を作ったカルチャーについて?>
ハラダ:Girlsの1枚目の『Album』ですかね。

Album

Album

音というか雰囲気が Girlsぽくなればいいなと思って録音しました。 MVも好きなんすよ。


ヒコ:女の子がたくさん出てくるやつでしたっけ?


ハラダ:そす!ライブ映像も全部最高す!屋上で演奏してるやつとか。


ヒコ:そう言われてみると、ハイハワっぽいかもしれない。今度見直してみます。邦楽では何かありますか?


ハラダ:邦楽はー・・・でもサニーデイ・サービスの『MUGEN』みたいなアルバムつくりたいなとは思ってました。

MUGEN

MUGEN

ただあのアルバムって解散する前の前のやつだから。あの感じが一枚目のアルバムで出せるわけないって今になって思いますけど(笑)


ヒコ:いい曲ばかりのアルバムにしようって作ったアルバムって聞きますもんね。1枚目であれを目指すというのは確かに面白い。


ハラダ:でもあんま何か具体的なCD意識した感じはなかったかな。Girlsも今思えばって感じす。


ヒコ:漫画とか映画も好きですよね?


ハラダ:どっちも人並みすけどねー、偏ってるし。それこそ映画は飽き性だから最後まで見れないんすよ(笑)


ヒコ:あれは忍耐いりますね、確かに。そんな中で自分にとって重要な作品とかあったら教えてもらえますでしょうか。


ハラダ:よしもとよしともはすごく好きです。嫌いな人も多いみたいですけど。

青い車 (CUE COMICS)

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Gratest Hits+3 (アクションコミックス)

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「よいこの街角」(『Gratest Hits +3』収録)って短編でピアノで「アナーキーインザUK」弾くやつめちゃ好きなんすよ。ちょっと年上の人と話したとき「あんなもん若者の妄言だ!」て言ってたんすけど。その若者の妄言な感じがいいなーて思いますね。


ヒコ:うんうん。カットが随所に挿入されてて、情景で語ってるのがいいですよね。


ハラダ:そうなんすよね。あの人の木漏れ日の感じと海の感じ好きすね。あと関係ないけど山本直樹が描くテトラポットの景色もツボす(笑)


ヒコ:ハイハワはそういう感じを音楽にしてくれてますね。やっぱり叙景的な部分に惹かれる所があるんですね。


ハラダ:そうかもしんないです。漫画だと他には岡崎京子鈴木翁二朝倉世界一内田春菊とか好きすね。ばらばらですいません(笑)


ヒコ:映画でこの1本!みたいのはあります?


ハラダ:『GHOST WORLD』すかね。

ゴーストワールド [DVD]

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ヒコ:あぁ、そうか、そうか。プロフィール文にもありますもんね。名コピーです。

借りパクした漫画や延滞した映画、おわっちゃった夏のハーゲンダッツやイーニドがバスから見た景色をうたいます

※イーニドが『GHOST WORLD』の主人公の女の子の名前です


ハラダ:好きすねー。あんま映画見てないんで選べないすけど(笑)  


ヒコ:「Girls、よしもとよしとも、GHOST WORLD」って並び、蒼くていいすね。


ハラダ:めちゃウザそうすけどねそんなやつ(笑)


ヒコ:なんだろ、この並びに何を加えるとよりハイハワっぽくなるんだろ?


ハラダ:なんすかね、「つけてみそかけてみそ」とかじゃないすか(笑)


ヒコ:東京では馴染みがないので思わずググっちゃいました。


ハラダ:かえしにくいこといってすいません(笑)