青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ナカゴー『ベネディクトたち』

ナカゴー特別劇場vol.13は『ベネディクトたち/ミッドナイト25時』の2本立て。『ベネディクトたち』は60分という尺の短い作品ながら再演を重ねるナカゴーの名刺変わりのような作品。これがものすっごく面白かった。前にも書いた気がするけども、ナカゴーのそれは平田オリザの「同時多発会話」の方法論の最果てだ。複数人が同時にわめき散らす。とにかくノイジーなのだけど何故か聞き取れる台詞、そして感情。人間同士の“ディスコミュニケーション”が、筋力増強剤を打ちこんだかのように、大袈裟に展開されていく。作家の鎌田順也は人と人との繋がりというものに、もうほとんど”諦め”に近いようなものを持っているのかもしれない。もしくは、その摩擦を「人間っておもしれーなー」と死神のように観察しているのか。ナカゴー作品に執拗に繰り返される”洗脳”や”集団発狂”といったモチーフも、やはり人間の底を観察したいという欲望のように思う。あのキャッチーな風貌も相まって、彼が得体の知れないモンスターに見えてきたぞ。鎌田順がの凄いのは、諦観と悪意のようなものと同等に、いやそれ以上の分量のユーモアで作品を埋め尽くしている事だろう。声色や発生の笑い、言葉の鋭さ、アクション、スピード、暴力性。ナカゴーのこういった”笑い”の手法がこの国のお笑い史のどの流れを汲むものなのか、勉強不足でわかりかねる。ハイブリットなのか、突然変異なのか。とりあえずわかるのはこれが新しいという事だ。あれを体現できてしまう役者陣に感服。全員素晴らしかったが、やはり篠原正明と高畑遊の2人。身体性も声も圧倒的である。スーパースターだ。