山田稔明『緑の時代』
ジャケットはR.E.Mの『GREEN』オマージュである。山田稔明のディスコグラフィーにはライブ会場限定発売のCD-Rというものが無数にあるらしい。この『緑の時代』は、そのCD-Rに収録されていた楽曲を中心に、書き溜められていたストックのアルバム未収録曲を編集したもの。演奏、録音、ミックスはほぼ山田稔明が1人で行っている。という前情報からもわかるように、ラフで軽やかな手触りのポップス集に仕上がっている。例えば”サニーレタス”という言葉をひたすらに繰り返すポップチューンはどうだ。その気負いのなさが魅力である。アレンジはギターポップからレゲエ、はたまたポエトリーラップまで飛び出すほどに多彩。ベッドルームミュージックのようなハートウォームな親密さもある。40分以内に収められたプレイタイムのほどよい短さかも相まって、何度も再生ボタンに手を伸ばしてしまう。『新しい青の時代』(2013)
- アーティスト: 山田稔明
- 出版社/メーカー: GOMES THE HITMAN.COM
- 発売日: 2013/07/07
- メディア: CD
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この3分半の終わりに長い呪文
僕があたためてきた魔法で
なにもかわもがそっと思い出に塗り変わってゆくのかな
僕も君もそっとしたたかに歳をとってゆくのだろう
僕は今 なけなしの3分半に 光を閉じ込めた
「夢のなかの音楽」
胸に響くのは 聴いたこともない歌
この五線譜に ありとあらゆる声を閉じ込めた
「新しいジオラマ」
名もなき市井の人々の生活の中の輝き、心の中の光を3分半のポップソングに閉じ込めること。メロディーの強度と信頼。その魔法について。同じことを歌っていたのが、やはり、この人小沢健二だろう。
見せてくれ 街に棲む音 メロディー
見せてくれ 心の中にある光
小沢健二「ある光」
山田稔明の楽曲の中で、その光は猫に姿を変え、”美しさ”を湛えていたりする。
猫と君で精一杯 慎ましく暮らせたら
7月から全国店頭発売という事ですが、まずは『新しい青の時代』、その後に『緑の時代』と聞き進めていくのがオススメの嗜み方でございます。