青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

さくら学院『The Road to Graduation Final 〜 さくら学院 2013年度 卒業〜』


「とうとう来たな、この時が」という感じ。勿論、過去2年間での5人のOGの卒業もとても寂しかったのだけども、今回の4人の卒業生は「さくら学院」とイコールで結びつけてしまえるような存在でしたから、感慨もひとしお。これでもか、というくらいに泣いた。1曲目「School days」の美しき合唱から涙ぐみ、2曲目の「目指せ!スーパーレディー - 2013年度-」でもう落涙である。なんて見事なフォーメーションダンス。2階席から全体を俯瞰して眺める事で改めてその動線の素晴らしさに気づく。舞台上に、過ぎ去ってしまった、いや(私の場合)あらかじめ失われていた、あの濃密な時間が瞬時に立ち上がるかのような。何度でも書くが、MIKOKO先生の振り付けは日本が世界に誇る芸術である。楽曲としては他愛のないメンバー紹介ソングなのだけど、それがああも人々の心を捉えてしまう所に、さくら学院の魅力の秘密が集約されているように思える。あの楽曲のパフォーマンスに近しいのは、ディズニーランドの「イッツ・ア・スモールワールド」だろうか。そうしう普遍性ある愛を放っている。


その楽曲を1曲目に有する『さくら学院 2013年度 〜絆〜』というアルバムは実に粒ぞろい良盤でございます。今回のライブでも披露された部活動の新曲はどれも素晴らしいのだ。科学部 科学究明機構ロヂカ?の「Welcome To My Computer」は低温のデジタルファンク。そして、漂う『天才てれびくん』の「ミュージックてれびくん」感る。異様に重低音をきかせた3曲メドレーもよかった。コンセプトがしっかりしていて振り付けの世界観も作り込まれている。メンバーに卒業生が2名いるが、ぜひ卒業後も単独ユニットとして継続して欲しい。クッキング部 ミニパティの「しゃなりはんなりどら焼き姫」はBABY METALきゃりーぱみゅぱみゅに続く「クールジャパン」物件だ。素晴らしきダンスユニット。こちらはメンバー3人共に2014年度の最高学年。ここから更に脂がのっていく事でしょう。そして、何より心奪われたのはテニス部 Pastel Windだ。部長である杉崎寧々の芸能界引退というトピックも相まって、その一回性と楽曲の美しさにひたすら涙。昨年のアルバムに収録されていた「スコアボードにラブがある」も素晴らしいが、今年度の「予想以上のスマッシュ」がまたいい。ソフトロックとアイドル歌謡の相性。今はなきバトン部Twinklestarsの沖井礼二ワークスが達成したそれを、テニス部において宮川弾が更新している。「渋谷系」というギミック抜きにひたすら音楽として充実している。メンバーの性質を活かしきったボーカリゼーション、ハーモニー。そして、メロディ
アスに歌うドラミング。美しさしかない。沖井礼二と宮川弾プロデュースでバトン部、テニス部合同でアルバム1枚作って欲しいものです。


後半戦の「未完成シルエット」「スリープワンダー」「My Graduation Toss」といったキラーチューンに心奪われている内にとうとう卒業式。卒業生はみな凛としていたし、最愛・由結の送辞(来年度はダブル会長なのかしら)もエモさと可憐さに溢れている。担任の森ハヤシ先生の贈る言葉も素晴らしい。感情を抑えながらの愛に溢れるメッセージ。「”夢に向かってまっすぐ”もいいけど、寄り道をたくさんして下さい」と、まさかのさくら学院の楽曲のフレーズを否定するような導入。しかし、自身が脚本家としての道を進んでいく中での「さくら学院の担任」という寄り道がいかに充実したものであるか、を語る構成力。どんなに愛情を持っていようと必ずメンバーを苗字で呼ぶ森先生。その愛情と距離感のバランスが絶妙なのだ。彼こそが、アイドルと絡む大人の仕事として最良のモデルロールであります。森先生の「杉崎ィ」がもう聞けないと思うと寂しい。先生の「手のかかる子ほどかわいいと申しますか」という言葉で号泣。いくらなんでも泣き過ぎだろう、と自分でひくも、昨年の卒業式で杉崎寧々が残した

すず(中元すず香)の為にこんなに泣けて、うれしいよ

という名フレーズをリフレインさせ、清々しい気持ちで会場を後にしました。