高野文子『しきぶとんさんかけぶとんさんまくらさん』
しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん (幼児絵本シリーズ)
- 作者: 高野文子
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 2014/02/10
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (15件) を見る
そういえば、小さな頃って夜眠るのがとても怖かったな、と思い出す。恐怖に飲み込まれそうになった時は「家族や友だち、ウルトラマンや仮面ライダーに囲まれて守られている」というイメージを頭の中に抱いて対抗していたのをよく覚えている。「包み込まれる」イメージ。この絵本でも、1人の男の子が眠る前、自分を包み込む寝具にお祈りをする。心配事が起こらないように。お漏らしをしませんように、手足が冷えませんように、怖い夢を見ませんように。
しきぶとんさん
かけぶとんさん
まくらさん
あさまで よろしくおねがいいたします
あれこれ いろいろ たのみます
すると、どうでしょう。男前なしきぶとんさん、かけぶとさん、まくらさんは「まかせろ まかせろ おれにまかせろ」と身体を包みこみながら応えてくれます。
リズミカルな韻がかわいくて優しいのだ。心地いいリズムで睡眠を誘う効果も狙っているのかしら。構図やカラーリングによる視線の誘導も凄いテクニックなのですが、これを論理的に説明するのはちょっと難しい。とにかく絵にも言葉にもリズムがある。布団という1つの存在として描くのでなく「敷布団」「掛け布団」「枕」と3者として表現したのが巧い。子供達は「自分が複数の存在に包まれ守られているのだ」という感覚を潜在的に抱くんじゃないかなー。それにこんな風に生命なきものと対話できる「想像力」というのに幼い頃から触れておくことはとても大切。きっとそれが人生をやりぬく為のコツになるはず。大変、素敵な絵本でございます。