アナ『イメージと出来事』
- アーティスト: アナ
- 出版社/メーカー: SPACE SHOWER MUSIC
- 発売日: 2014/01/29
- メディア: CD
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アナの特徴である古今東西の音楽、とりわけソフトロック、ソウル、ブラジル音楽をスムースに消化した渋谷系直系の感性はそのままに、今作ではかつてこの国の歌謡曲が持っていた甘美なメロウとロマンを現代に蘇らせている。日本語が美しくメロディに乗っている。「晴れた大通りを歩いているのかもしれないけど」「本当の事ばかり知りたがる空模様の予言者達」「神様よりは側にいる君のこと思ったりするよ」「ふらふら風来坊さ」といった無邪気な引用やオマージュも健在。何気ない日常のシーンを切り取る手腕が見事で、一瞬を永遠に保存するポップソングの魔法を見事に体現している。アルバムを一貫して流れているのは、これまでのアナと同様に(それは小沢健二のソウルマナーの継承でもあるのだろうけど)「どうか過ぎていく時を悲しまないで欲しい」という祈りだ。
楽曲は実に粒揃いで、とりわけ「コピーのように」「長いお別れ」「ハイライト」の3曲が出色の出来だろう。個人的にはレイモンド・チャンドラーや小坂忠の「しらけちまうぜ」を彷彿とさせるハードボイルドな強がりがバカラックにもひけをとらないであろうメロディとサウンドで紡がれた「長いお別れ」が本当に大好きで、何篇も繰り返し聞いている。ドラム脱退を経て2人組になったからというわけではないが往年のキリンジを彷彿とさせる楽曲の充実度ではないかしら。大久保の鼻声ボーカルのチャームさで本格派になりきっていない所が好みの別れる所でしょうか。数曲で参加しているYeYeやアニス&ラカンカらナイスな人選の女性ボーカリストの参加もいい塩梅で、大久保潤也のソングライター職業作家としての未来も見える。早くもアナの次の一手が楽しみだ。