青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

うしろシティ『うれしい人間』

うしろシティの第4回単独ライブ『うれしい人間』のDVDを観た。気づいたら売り切れていて劇場で観る事のできなかった公演の念願のDVD化。これがまた驚くほどに面白い。これほどの完成度の公演を経ての『キングオブコント2013』のあの結果では本人達もファンもさぞかし悔しかったに違いない。


うしろシティは自分も含め多くの人が誤解しているように思う。ライブシーンにおける動員は群を抜いている上に、メディアでの活躍もめざましい。しかし、その人気の要因の多くをルックスが担っているように思われている。確かにあのルックスはでかい。しかし、彼らが絶対的に優れているのは、そのネタ構成力、表現力であり、その実力は東京コントシーンにおいて間違いなく先頭を突っ走る存在なのだ。私も一介の冴えない男性お笑いファンとして、うしろシティを「ハイプ」の一言で片づけていたし、テレビで何本かネタを観て、その意外な面白さに惹かれ、ちゃっかりDVDをチェックしたりはするものの「ルックスのいい奴らがバナナマン東京03のまねごとをしてセンスをふりまいているだけだろう」と心の中で突き放していた。男の嫉妬は醜いものです。その考えが完全に覆ったのが、第3回単独ライブ『アメリカンショートヘア』

のライブDVDで、前述のコント師達の影響を消化し、確かな「うしろシティ節」を確立したコントに魅せられ、すっかり肩入れするようになってしまったのだけども、今公演は更に面白い。どんどん巧くなっている。小憎たらしいほどだ。序盤の「野球部の危機」などは、設定や自意識を皮肉り笑いをとる今までのうしろシティという感じなのだけども、金子のサイレントアクションが冴え渡る「張り込み」や顔や身体に番号の振られた人を順番通り殴る事で喧嘩のやりかたが指南されていくという不思議なコント「喧嘩のやりかた」など斬新な発想の新機軸も軒並み面白い。ありふれた設定ながらも、徹底的に豊かな細部でうしろシティ節をブラッシュアップしている「バンドやろうぜ」「バイトの新人」も素晴らしい。『キングオブコント』で披露していた「娘さんを下さい」も本来の尺で観ると、こんなにも面白いネタだったのか、と唸る事必至。「瀕死の事故を起こした友人の手術の無事を祈る為、仲間達が病院に駆け付ける中、最後に到着した金子の手にはスターバッグスの珈琲(ヴェンティサイズ)が・・・」と始まる「病院」などは導入から「巧過ぎる!」と興奮してしまった。冒頭の「少年」、ラストの「監禁」で公演を1本にバシっと締める構成も憎い。


自意識を嘲笑うような底意地の悪さがありながらも、選り好みのされない大衆性が確立されているのは、やはりルックスの恩恵でしょうか。正統な評価の邪魔!と思いつつも、男から見ても金子シティはかわいい。アンチもやたらと多いですが、性格までおとなしいかわい子ちゃんでは決してなさそうなので、図太くサヴァイブしてくれる事でしょう。とりあえず、うしろシティに偏見のある方は『アメリカンショートヘア』と『うれしい人間』をマストチェックだ。