青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

郷ひろみ『ひろみの部屋』


郷ひろみ当時19歳のサードアルバム『ひろみの部屋』のジャケットがなんだかイカしていたので12インチを購入してしまった。メモリアルアルバムみたいになっているのですね。いや、でもこれTHE ROLLING STONESの『メインストーリトのならず者』のオマージュなんじゃないか、という気もしますが。『メインストーリトのならず者』が1962年で、『ひろみの部屋』が1964年なのでなくはない話ですが、写真の並びを均一にしちゃうあたりがかわいい。

このジャケットでタイトルが『ひろみの部屋』だから、なんだかとてつもなくパーソナルでコンセプチャルなアルバムなのでは!?と期待してしまうわけですが、そういうわけでもありません。一応、オープニングで電話のベルが鳴り

もしもし、あ、僕ひろみです。
今、僕の部屋で1人でレコードを聞いている所なんです。
うん。とっても好きなアルバムなんだ。君も一緒に聞いてみませんか?シーッ

と始まり、

どうでした?明日も頑張ろうね。おやすみなさーい

で終わるという、郷ひろみの部屋でかかっている音楽を電話越しに聞く、というよくわからない設定はあります。そして内容は、まさに和物レアグールヴという感じの、タイトに刻まれるベースに鳴り響くホーンが美味しいナイスな歌謡曲です。12曲中洋楽カバーが3曲、他9曲は全て筒美京平のペン、編曲も6曲手がけております。A面の力強いホーンのシンフォニーから艶っぽく狂おしく歌い出す「夢を破らないで」、

青春 ほんとは まだ意味も 知らない

というキラーフレーズを有するグルーヴィーな「光を求めて」、ワウギターとホーンの絡みがどこか小沢健二犬は吠えるがキャラバンは進む』も想起させる(そういえば筒美先生は「強い気持ち・強い愛」を提供した時、オザケンを"郷ひろみ以来のスター性"と評したそうな)つんのめるブルーボーイのヤングソウルナンバー「旅立ち」、エレピが美味しくリードする「きもの姿の君」、ひろみの歌も跳ねる歌謡ファンクソウル「魅力のマーチ」、切ない歌唱とメロディーのアルバムきっての叙情ナンバー「夢で会おうね」、「シュビドゥバ」が炸裂する「僕たち」、後年本人によるリメイクもされた「裸のビーナス」はとってもナイス。300円で購入できる内容としてはとても上物でございました。