青春ゾンビ

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ジャポニカソングサンバンチ『JAPONICA SONG SUN BUNCH』


音楽前夜社の誇る最強の余興バンド、ジャポニカソングサンバンチの1stアルバム『JAPONICA SONG SUN BUNCH』を聞いた。

JAPONICA SONG SUN BUNCH

JAPONICA SONG SUN BUNCH

ワールドワイドに各地の音楽を飲み込んだチャンポンミュージックを鳴らすチンドン屋集団は、日本とその裏側のジャマイカを繋ぐ。ジャマイカというのはなんでもフロントマン千秋の生まれ故郷らしいのだけども、とにかく大事なのは南国の太陽と風、それを大衆酒場の喧騒とチャンプルしてしまう事。ホーンやスティールパンが乱舞するインチキエキゾな音像から、ロマンチックな歌謡曲の旋律が蘇える。聞き覚えのあるフレージングが親密さと共に突き刺さる。この集団からは、ジャポニカソング、かつての大衆音楽を、そのルーツである異国の音楽にまで想いを馳せ、現代的に鳴らす、そんな心意気を感じる。そういえば、解散してしまったけれど、同じ音楽前夜社のユニットMAHOΩにも同様のマインドを感じたものです。


どうしても悔やまれるのがフジロック久(仮)の藤原亮の脱退だ。私はジャポニカの2人のボーカリストが競い合うようにパフォーマンスを高めてかけあっていく様がたまらなく好きだったのです。そして、なんといても藤原のあのフーテン然とした、それでいて気障な佇まい、何より歌の力はジャポニカソングサンバンチにあまりにふさわしかった。脱退前にライブで披露していた彼のボーカルに対して、「夢や理想を託せる歌だ」とまで評した身としては、悔しさで身悶えしてしまう。しかし、藤田千秋のヘロヘロなボーカルとSAXプレイが愛おしいのもまた確かで、まさに酔いどれダンスミュージックとしてこの『JAPONICA SONG SUN BUNCH』というアルバムを楽しもうではないか。



底抜けに明るいダンスミュージック、なだけではない。たとえば、アイドル歌謡ダンスミュージック「クライマックス」には

夢見心地 醒めるのがおち
何かいいことがあればいいのにな

というラインが忍んでいる。

アルバムのリードナンバー「かわいいベイビー」は小泉今日子(ひいてはフィンガー5)を引用する無邪気さを発しながらも、

いつでも夢を見ながら
どこかで涙を落とす

といったフィーリングを携えているのだ。

踊り明かすの 踊り明かすよ
魔法が解けて 眠るまで


「踊り明かすよ」

夢は醒めるし、魔法は解ける。通底しているのは"終わってしまう"ことへの諦観だ。ひいては「どうかこの一時だけは」という祈り。それは必ずや死に行く事を決定づけられた「生命」の肯定のように感じる。バックを支えるGORO GOLOの面々、フロントマンの藤田千秋、元フロントマンの藤原亮らがa page of punk、でぶコーネリアスフジロッ久(仮)といったパンクバンドに所属、という経歴も物語るが、ジャポニカソングサンバンチの音楽には、生活者としての怒りや哀しみが封じ込められている。音楽は、それらをご機嫌なステップに変える為に鳴るのだろう。

哀しみも虚しさも
音に乗せ手のひらに

儚さも恋しさも
音に乗せ足元に
ぎこちないステップをふんで
愛を夢をひとつ


「愛を夢を」