青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

さくら学院『The Road to Graduation Final 〜さくら学院 2012年度 卒業〜』


さくら学院東京国際フォーラムでの公演『The Road to Graduation Final 〜さくら学院 2012年度 卒業〜』を観てきました。3階の後ろの席だったので、表情はほとんど確認できなかったのですが、見下ろして眺める、彼女達のダンスの動線の、その美しい事。2代目会長中元すず香率いるさくら学院の集大成を見せつけてくれました。彼女の凛とした歌声とダンスがグループの色を見事に染め変えた。その美しい統一感に練習量が見え隠れしてグッとくる。1代目会長のさくら学院を地上数センチ浮いた実存感のない可憐さがチャームとして際立っていた印象なのだけど、2代目さくら学院は、その存在を肉体で刻みこむかのような体育会系なムードが頼もしかった。会長が変わる事によって、グループも表情を変えていく。これはどのグループも同じなのだろうけど、この面白さを1年ごとに楽しめるさくら学院のコンセプトはやはり秀逸だ。この感じは何かに似ているなぁ、と考えてみたら、ちばあきおの名作野球漫画『キャプテン』ではないか、と気づく。卒業、入学、リーダーとしての責任、結束、努力といった、現在のアイドル界ではシンプルと言っていいトピックのみで、しっかりと物語を渦巻かせる。とは言え、毎年、卒業(脱退)に大量の涙を流すメンバーを見て、これはこれで酷なシステムなのかもしれない、と胸を痛めた事もあった。しかし、今回のライブでの杉崎寧々による「すず(中元すす香)の為にこんなに泣けて、うれしいよ」という美し過ぎる贈る言葉で、その杞憂も消え去った。さて、2013年度の会長はおそらく堀内まり菜、また全くタイプの違うさくら学院の誕生の予感に満ち満ちております。楽しみ!



中元すず香ソロ曲「さくら色のアベニュー」は文句なしの堂々たる熱演だったし、各部活動のユニットのポテンシャルの高さも改めて確認。重音部 BABYMETALはこれからの「クールジャパン」を背負っていくであろう優良コンテンツであり、最新のミクスチャーロックだ。科学部 科学究明機構ロヂカ?はジューシィー・フルーツ、Perfumeを輩出したアミューズの血統を継ぐテクノポップユニット。昨年リリースのシングル表題曲「サイエンスガール ▽ サイレンスボーイ」はテクノポップに『天才てれびくん』楽曲の匂いを漂わすバブルカム感が合わさった名曲。アルバムに収録されたテニス部 Pastel Wind「スコアボートにラブがある」も元cymbalsの沖井礼二が送りだしたバトン部Twinklestarsの美しさを継ぐ、楽曲派が騒ぎ忘れている超名曲である。こちらは最近ハードワーカーっぷりを発揮している元ラブ・タンバリンズ宮川弾のペンです。ダンスのどことない間抜け感も超キュート。

しかし、それ以上に素晴らしい本隊の楽曲群。後半の「School Days」「Friends」「夢に向かって」の歌声の美しさときたら。「さくら学院らしくないのでは」とアルバムリリース時には首をひねっていた「スリープワンダー」ですが、パフォーマンスとして観た時の完成度の高さ、そしてステージを目いっぱい使った圧倒的な楽しさに感服。確かに「不思議の国のアリス」の世界を体現するならば、今、さくら学院しかいない!2013年のさくら学院は学校を飛び出し、夢の世界に向かうのかしら。