青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

坂戸佐兵衛/旅井とり『めしばな刑事タチバナ』

坂戸佐兵衛/旅井とりめしばな刑事タチバナ』にすっかりはまっている。昨年じわじわ話題を集めて、気づけば「このマンガが凄い!2012」を9位を受賞、他にも「週プレマンガデミー2011」1位、「ブロスコミックアワード2011グルメマンガ部門」1位と快進撃を続けている作品です。とは言え、おもしろそうだけど買うまではないとだろうと思っていました。いや、ほら『美味んぼ』とか『クッキングパパ』とか面白いけど単行本は買わないじゃないですか。しかし、試し読みしてみたらあまりにおもしろいし、グッときてしまったので大人買い


孤独のグルメ』『花のズボラ飯』と久住昌之の一人勝ちのグルメマンガ界において最強の対抗馬の登場だ。作中で取り上げられるのは、カップ焼きそば、立ち喰いそば、牛丼、ケンタッキー、スタンドカレー屋、天下一品、はなまるうどん、ランチパック、袋ラーメン、缶詰、すた丼、餃子の王将、コンビニアイス・・・つまりB級、いやC級グルメだ。しかし、それらを軽々しく扱うでなく、とにかく愛でもって拾い上げている。

「お前さんやるじゃないの」



とにかく身近な食べ物を取り上げているので、読んでいる内に「食べてー」となっても、30分以内にありつけるのも魅力だ。飛び出してくるトリビアもいちいち楽しくて読んだ次の日人に披露したくなる事間違いなし。

ファーストフードチェーン店の情報、歴史も知れて楽しい。テレ朝の『シルシルミシル』的とも言えますね。とにかくしっかりとした取材に基づいた知識が乱れ飛びます。例えば、天下一品であれば、「濃い」と言えば水道橋店とかスープセットがあるのは高円寺店と水道橋店と神楽坂店だ、とか。『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の100巻前後を彷彿させる情報量。ディティール語り構成も秀逸。警察署の面々がワイワイとくだらない飯話で盛り上がっている様子が男心をくすぐります。いつも対立する課長もいいキャラです。

しかし、やはり主役はタチバナ刑事。パンチライン製造機であります。




彼の食への語り口は、もう池波正太郎のグルメ本でのそれの域だな、と思ってしまいます。この漫画を読むと本当にコンビニとか駅前の見慣れたチェーン店の軒並みが光輝いて見えてくる。いつもの生活の周りにゴロゴロと転がっているのに気づけていなかった素敵なものへ辿り着かせてくれるマジカルなグルメ漫画だ。