青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

マームとジプシー『待ってた食卓、』『塩ふる世界。』


オムニバス公演『20年安泰。』において上演された『帰りの合図、』を含めての3部作が完結した。まず、『待ってた食卓、』の完成度の高さにひれ伏す。あれぞ、マームとジプシーの”リフレイン”という手法の完成形ではないだろうか。リフレインが作中だけでなく、前作の『帰りの合図、』からもやってくる。振り返ってもいいのだろうか?帰る場所はあるのだろうか?残酷なまでの「時の不可逆性」への抗いの運動はとてつもないエモーショナルを湛えていた。また、リフレインを様々な角度から繰り返す事で、台所、居間にちゃぶ台、庭、2階のベランダ、と舞台上に古き良き日本家屋がイメージとして立ち上がってくる。成瀬や小津の映画もしくは向田邦子などのテレビドラマすら想起させる瞬間があった。そして、最終的には”街”が浮かび上がってくる。尾野島慎太郎と成田亜佑美の切実な演技には心掻き乱された。


そして、3部作のラストをかざる『塩ふる世界。』なのだが、『待ってた食卓、』での完成度を1度捨てさり、全く新しいマームとジプシーを魅せてきた。Deerhunterのサウンドが全編爆音で鳴り響く中、役者の肉体に激しい運動によって過剰に負荷をかけながらのリフレインの嵐。負荷が増幅していく事で、すべてが無化し、わかり合えないはずの感情や肉体の痛みが、演者全員に同一化されていく。構成力などを敢えて捨てて挑んだ新しいスタイルである。今後マームとジプシーがどうなっていくのか、震えが止まらない思いである。ひなぎく役の青柳いづみがとてつもない。なんて声の鳴り方がする人なのだろう。なんて身体の動かし方をするのだろう。吉田聡子のも禁忌的な性の匂いの出方も凄い。爆音で聞くDeerhunter『Microcastle/ Weird Era Cont.』

Microcastle

Microcastle

にすっかり脳がやられてしまった。