堀禎一『魔法少女を忘れない』
悠也は元魔法少女のみらいを、妹だと紹介されて一緒に過ごすようになってから半年が過ぎようとしていた。シングルマザーの母は仕事で留守がちなため、高校生の悠也が妹の面倒を見ていた。彼は奇妙な共同生活に違和感を覚えながらも、幼なじみの千花らと相変わらずの日々を送っていたが……。
人気ライトノベルが原作。魔法少女に関する説明もほぼないままに、(元)魔法少女が登場するわけで、そこにひっかかると、もうこの映画にはついていけないだろう。この作品で描かれているのは実にシンプルなフィーリングだ。それは過ぎ行く時の刹那、そして”忘れないこと”の強さだ。元魔法少女のみらいと友人たちは、プリクラを撮ったり、海に行ったり、ダンスを踊ったり、自転車に乗ったり、美しい青春の日々をすごしている。しかし、元魔法少女は人々に忘れられてしまう存在であって、それを彼らは(そして、我々観客は)知っている。すると、画面の中のすべての運動は、どうにか彼女を忘れないためのものとして映ってくる。刹那を刻みこんでいるのだ。終盤ベッドで戯れる4人のダンスはちょっと涙が出そうになる美しさ。また彼らの”忘れないこと”を見守る先生役に元チャイドルの前田亜季を起用したのもいい。
さらになぜか友情出演で人造人間キカイダーの伴大介も忘れない人として出ております。
何より画面がとてもしっかりしている。ロケハンも素晴らしく、美しい海沿いの福岡の街が堪能できる。何よりも谷内里早、森田涼花、高橋龍輝、碓井将大という主演格4人の瑞々しさ。みな一様にかわいい。とりわけ谷内里早の”初恋の顔”とでも言ってしまいたくなるようなドキドキ感は出色だ。
あらすじの整頓されていなさがいい意味で青春という時間の混沌を表出していて、最後は「強い気持ち・強い愛」!ってな感じで文字どおり、色々なものを飛び越えてしまう。オススメです。