青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ceroレコ発in渋谷o-nest

『WORLD RECORD』という名盤が世に放たれた事への祝祭感で満ちていて、実にピースフルな空間だった。ceroはスロースターターながら、その演奏は徐々に熱を帯びていく。多彩なアイデアが愛らしいポップスとして昇華された素晴らしい楽曲群を経て、ハイライトの「マクベス」に辿り着いた。どこかへ連れて行ってくれる音楽だ。その「どこか」というのは物理的な距離ではなく、宮沢賢治が言うところの”イーハトーブ”のようなものなのかもしれない。ちなみにイーハトーブとは宮沢賢治が頭の中で作り上げた理想郷の事。ceroの音楽もまた、想像力によって住む街を宇宙都市に変えてしまう力を持つ。また、ceroと宮崎賢治については、カクバリズム特設サイトでの磯部涼氏によるインタビュー内でも、バンド名の由来として語られている。

子供の頃に読んでいた、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』で、主人公のジョバンニに助言を与えるものとして、“セロのような声”っていうフレーズが度々、出て来たんです。今、思うと、楽器の“チェロ”のことなんでしょうけど、当時の僕には分からず、『セロって何だろう、神様の名前かな?』と勘違いしていた。皆でバンド名を付けようってなった時、ふと、『“セロ”っていいかも』って、それを思い出して。だから、綴りは、正しい“cello”じゃなくて、適当な“cero”にしたんです。

神のような声に導かれて鳴らした音楽は、とてつもなく巨大なレコードとなった!



そして、今回のレコ発ライブは、活動中止中であったバンド片想いの復活ライブも兼ねていた。ついにライブを拝む事ができたのですが、控え目に言ってもこのバンドは破格である。全曲が凄まじい強度を放っていて、マスターピース然としている。演奏は「多幸感ってのはこうやって作り出すんだ!」と言わんばかり。このバンドが流通音源を出していないなんて。本当に全曲素晴らしかったのだが、やはりこの曲だろう。

僕が泣いている理由なんてわからないだろう

なんで人はあんな風に踊るのだろう。踊らざるをえないからだ。果てしない憂鬱に打ち勝つため、一瞬の光を掴みとるため。しかし、ceroの演奏にも参加し、片想いの中心人物であり、ザ・なつやすみバンドにも所属するMC.sirafuという男。実は今インディーズ界最重要人物なのでは。どなたか2万字インタビュー求む。