青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

シンガーソングライター黒沼英之


黒沼英之の音楽がよい。齢21、現役大学生のシンガーソングライターだ。なんだかうまくいかなかった日の夜に聞きたいのはこんな歌なんじゃないかと思う。最近のJ-POPのように、簡単に永遠を誓ったりすることもなく、常に切実さがつきまとう彼の歌。また聴く人を救うのでなく、「その痛みを形にしたい」と歌う態度はとても誠実ではないか。彼とは個人的にも付き合いがある。一見何不自由なく問題がなさそうに見える彼の人生なのだけど、とても生きづらい思考の持ち主であったりして、言ってしまえばアウトサイダーなのだろう。そんなアウトサイダーの思いがこのようにポップな形で歌として昇華されているのには心撃たれる。「blue」や「やさしい痛み」のような、装飾少ないながら凝ったサウンドの曲もあれば、アイルランドのシンガーDamien Riceの「Delicate」を彼なりに日本語訳してカバーしたピアノ弾き語りの名曲「hallelujah」、ウェルメイドなJ-POPバラード「心のかたち」など、器用ゆえにレパートリーは幅広く、今後どういった形で世に出るかはわからない。個人的には「blue」や「やさしい痛み」のようなサウンド男性シンガーソングライターがチャートに上り詰めてくれたらおもしろいな、と思っている。都内近郊の方はとりあえず、今のうちに1回ライブに足を運んでみてはいかがでしょう。