青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

松本壮史×三浦直之『デリバリーお姉さんNEO』3話

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みなさま、TVKにて放送中の『デリバリーお姉さんNEO』の3話は御覧になられましたでしょうか。いやはや、素晴らしい。”プールサイドでの告白” というモチーフが、岩井俊二『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』(1993)の記憶と重なり、そこから大根仁モテキ』(2010)へ、遡って『演技者。』(2002)*1へと結びつく。松本壮史という才能は”大根仁”を更新する新しい世代の登場と言えるのではないでしょうか。


この3話が『デリバリーお姉さんNEO』の最高傑作回じゃないならどうかしている、それほどにいい。「青春も赤面するほどの恥ずかしさ」と劇中で自己言及するように、甘酸っぱさ5000%!松本壮史と三浦直之(ロロ)のタッグが出し惜しみなしのフルスイングだ。脚本の三浦直之によれば、この3話のプロットはロロの「いつ高」シリーズという青春連作偶像劇プロジェクトのシナリオ案の1つであったらしい。であるからか、ゲストには「いつ高」の看板役者である亀島一徳(将門)と新名基浩(しゅうまい)が登板。板橋駿谷を含めた3人の並びのルックの”青春”としか呼びようのない美しさにまずもって涙。そして、亀島一徳はやはり素晴らしい。テレビサイズでもその魅力は何ら揺らがない。ロロの必殺技とも言える、亀島が少し声を張り上げ、モノローグのように語り出す演技メソッドがこの3話でも炸裂している。モノローグ(独白)のようなのに、気が付いたら誰かにバシっと届いてしまう、あの発話。それを受けるエリー役の岩井堂聖子もまたすっごい良くて、こんなに美人で演技も上手なのに、これまで大々的に発見されずにきたのか不思議でならない。
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思いがけず恋に落ちてしまった顔、の完璧な体現。あと、個人的に「だろうと思ってたよ」の言い方が良すぎて、撃沈。すっかり大ファンになってしまった。この3話は松本壮史が手掛けた乃木坂46個人PVの大傑作『アイラブユー』とリンクする部分もあり、思わず岩井堂聖子に桜井玲香を重ねてしまう。松本壮史が、坂道グループと小劇場系劇団とがタッグを組んだ、新しい『演技者。』を制作する日を夢見ます。とにもかくにも「観てくれー」である。TVKが映らない地域にお住みの方もご安心下さい、動画サイト「GyaO!」にて無料で視聴できますよ!!
gyao.yahoo.co.jp



さて、ここからはネタバレ。

高校3年の夏休みの終わり、失敗に終わった夜の学校のプールサイドでの告白
あの夏を再現したい

この導入だけで傑作を義務づけられたような迸る青春感。しかし、単なるノスタルジックな”青春ゾンビ”ものではない。この3話で切り取られているのは、嘘が"本当のこと"になってしまう美しい瞬間だ。眼鏡に黄色いトップスという”野比のび太”ルックで登場した鴨島(亀島一徳)の依頼を受けて、便利屋”デリバリーお姉さん”であるエリー(岩井堂聖子)は腕が鳴るぜと言わんばかりに、鴨島の15年前の告白相手”エリサ”を探し出すそうとするのだけども、店長北橋(板橋駿谷)に「あせりあそばするな」と一蹴されてしまう。なんと、彼女に課された依頼は、その”エリサ”を演じることだという。この青春との距離の取り方がいい。都市伝説ともファンタジーとも思われる”青春”という現象を再現するには、それくらいの嘘を塗り重ねていかねば、太刀打ちできまい。であるから、「あの夏の再現」は偽物で満ちている。鴨島の母校は廃校になってしまったので、別の校舎で。夏ではないので、水の張っていないボロボロのプールで。”思ったほどコスプレ感もないし とは言え現役感もない”制服姿で。夏の音色はCD音源で。花火の光はセロファン紙で。風は扇風機で。水面に反射する星の光は電飾で・・・そして、15年前とは違う相手に告白をする。しかし、鴨島がかつてエリサに抱いた恋心はホンモノで、それは15年の時を経ても1ミリも古びず、真空パックされている。

蝉の声がやたらうるさくて
ちょうど近くでやってた花火大会の音も混ざり合って
夏だけが詰まった音で
溢れかえってて
花火の光がエリサの顔を照らして
風がエリサの髪を揺らして
おれ、今でも、その一つ一つ、はっきり覚えてて
視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚、全部で覚えてて

作られた偽物の青春の中で、燦然と輝く”本当の気持ち”は、偽物のエリサをホンモノに変容させてしまう。

エリー:鴨島ぁ!あたしが待ってんでしょ!?
鴨島:その名前の呼び方、エリサ思い出すわぁ
エリー:うん、だって私だもん

このエリーがエリサに完全に変容してしまうシーンこそ、3話における白眉。震え上がるほどに感動的だ。三浦直之の筆致は、あらゆる法則を無視して、届くべき人に気持ちを届けてしまう。それがたとえ、誤配だとしても。そして、エリーもまた鴨島に、かつて想いを寄せていた先輩の面影を重ね、恋心のようなものを抱いてしまう。目尻を掻くクセ、Suicaにチャージする姿を見られたくないこと、ブドウ味のアイスが好きなこと、眼鏡が似合うこと、舌足らずで活舌が悪いこと、靴紐を結ぶのが苦手なこと・・・そんな何気ない固有性のクセや特徴で、誰かと誰かは簡単に結びつく。”好き”という気持ちは無限に生まれていき、この世界を満たすのだ。



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*1:ジャニーズ事務所の俳優と小劇場系の劇団がタッグを組んで制作されたフジテレビの深夜ドラマ

欅坂46『長沢くんと梨加 2人の休日』

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凄いものを目撃してしまった。『欅って、書けない?』で放送された長沢菜々香と渡辺梨加のフューチャー回。この2人、欅坂46が誇る不思議系ポンコツアイドルなのです。普段のスタジオ収録ではほとんど喋ることもままならない。カメラを向けられると"亡霊"とまで評されてしまう彼女たちが、"2人だけのロケ"ということで、自由に活き活きと解き放たれている。これがもう衝撃映像のオンパレード。タピオカだ!、クロワッサンの味、騒音測定器の前でジャンプ、犬を追いかけて迷子、アイスを買い食いして凍える、お土産を道端で食べちゃう・・・いや、これはもう世知辛い現代においては病名がついてしまうようなレベルかもしれない。しかし、そんな彼女達はアイドルという困難な職業を選びとり、少しでも自分自身を変えようと日々奮闘している。そこにグッときてしまうし、そういう姿こそが、人間の美しさというものではないだろうか。MCからの「適当に歩いちゃって不安じゃないの?」という問いへの

2人だから大丈夫だった

という長沢くんの答えに迂闊にも感動してしまった。


その後の長沢くんの荷物チェックも鞄から出てくるものの大喜利としてあまりに優秀。質問コーナーも全部凄かったが、1番強烈だったのは、以下の長沢くんの回答。

死んだら棺桶にポップコーンの種を入れて焼いて欲しい

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いい匂いがしてポンポン音がしたら楽しくないですか?
(お葬式が)楽しくなればいいんです

まずもって、私は「自分のお葬式をこうしたい」という思考を持ち合わせたことがない。自分がいなくなったあとの空間に想いを寄せられるということ。そして、こんなにも"死"というものをユーモアとペーソスで包み込める人がいようか。しかも、無意識に。カート・ヴォネガット・ジュニアの小説でも読んだような気分になってしまいました。とにもかくにも、"天使"という形容があまりにふさわしいこの2人の動向を今後も追っていきたい。

岡田恵和『ひよっこ』6週目「響け若人のうた」

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みなさーん、『ひよっこ』は6週目も好調です、朝ドラって本当に素晴らしいものですね(←私の中の増田明美が文体を侵食している)。いや、本当に東京編に突入してからの充実度はどうかしています。おもしろくない日がないし、6人娘はずっとめんこい。赤いコート、喫茶店、クリームソーダ、甘納豆、銭湯、洗い髪の乙女、恋バナ、ラムネ、西部劇、コッペパン、アーコディオン、ロシア革命、フレンチトースト、大き過ぎる上着、屋台のラーメン、初めてのお給料、まかないののり巻き、ビーフコロッケetc…こういった細部の数々だけでも思わずにんまり。物語は初日から実にエモーショナルに幕を開ける。みね子(有村架純)は父が暮らしていた出稼ぎ現場を訪ね、その残像に想いを馳せる。時を同じくして乙女寮では、庭先に集まった仲間達がみね子の一日の行方を気にかける。また、素敵なお洋服を諦めたみね子、「みね子はこんなのが好きじゃないかな」とブラウスを裁縫して届けるお母ちゃん。その素敵なブラウスはみね子を赤坂の"すずふり亭"に導く。こういった"誰かが誰かのことを想うこと"の密やかな交感が、『ひよっこ』というドラマの根元だ。



そして、コーラス部。余談にはなるが、幸子(小島藤子)の恋人でありコーラス部の指導者である高島を演じているのは井之脇海黒沢清の傑作『トウキョウソナタ』(2008)のあの天才ピアノ少年である(音楽が2つの作品を繋いでいる)。週のタイトルは「響け若人のうた」、なるほど『ひよっこ』にはたくさんの音楽が流れている。コーラス部が歌うのはロシア民謡だ。

響け若人の歌 高なれバイヤン
走れトロイカかろやかに 粉雪けって


黒いひとみが待つよ あの森越せば
走れトロイカ今宵は 楽しいうたげ

辛い日々が続き、どんなにボロボロに疲弊してしまったとしても、"がんばって"乗り越えれば、またいつか楽しい時間が訪れる。そんな祈りが込められているようのようなロシア民謡で、夜は徐々に熱を帯びていく。

お父さん まさに楽しい宴です
みんなで歌うって楽しいんですね~こんなに
みんなちょっと顔がポーっとほんのり赤くなっていて
乙女寮の乙女はかわいいな~と思いましたよ

本質的には"孤独"であるはずの人々が、何かを為し得ようと"一つ"になる時に生まれる高揚感。それは東京オリンピックを機とした日本の高度経済成長の空気感ともリンクしているし、みね子と同郷の巡査(竜星涼)が発した

同じ茨城だからほっとけないです
絆っていうものですか

という台詞とすら結びつくだろう。



茨城の奥地にて、たまたまラジオでキャッチしたビートルズの音楽にすっかり打ちのめされてしまった宗男おじちゃん。みね子からの手紙を受け取った宗男がぽつりと零す。

みね子ぉ〜がんばれぇっ!
ビートルズの情報、何かあったらよろしくな
この空は、東京にもリバプールにもつながってんだなぁ

先週放送の感想で「みね子たちが作っているのがトランジスタラジオであるのがいい」というようなことを、RCサクションと絡めて書いたのだけども、岡田恵和の念頭にあるのもやはり、忌野清志郎であったようだ。この回が放送された5月9日は奇しくも、清志郎のロック葬『忌野清志郎 AOYAMA ROCK'N ROLL SHOW』の開催日。そこで弔辞を読んだのは甲本ヒロト

僕はいつでも 歌を歌うときは
マイクロフォンの中から
ガンバレって言っている
聞こえてほしい あなたにも
ガンバレ!!


THE BLUE HEARTS「人にやさしく」

やさしい歌が好きです。忌野清志郎甲本ヒロト、そして峯田和伸。『ひよっこ』はロックンロールである、というようなわけのわからないことを口走ってしまいそう。アンテナさえ磨いておけば、会いたい人には必ず会えるし、想いは届く。



ロシア民謡ビートルズRCサクセションだけではない。『ひよっこ』では1960年代のヒットソングがいつも流れる。今週は喫茶店で流れる「明日があるさ」、銭湯の帰りに口ずさむ「見上げてごらん夜の星を」が印象的。街灯が水面に煌めく川縁を、銭湯帰りの洗い髪で乙女達が歌う。そして、就職してからの初めての休日を終えようとしているみね子たちに、幸子が気合いを入れる。

がんばりましょう、明日からまた

前述の宗男おじさんのブルーハーツもそうであるし、この”がんばりましょう”は『ひよっこ』全体を貫くテーマのようなもの。一体何度この魔法の言葉が登場することか。思い返せば稲刈りの前日のみね子の「明日はがんばりましょう」がまずもって記憶に濃い。そして、向島電機の朝の挨拶「それでは今日も一日、がんばりましょう。ご安全に!」、巡査がみね子に言う「お互いがんばろう、東京で」、すず子(宮本信子)の「がんばれ、みね子」、愛子(和久井映見)の「さぁ、今週もがんばろう」などなど、枚挙に暇はない。とりわけ愛子さんの"がんばりましょう"は素晴らしい。

ちゃんと頑張ってないと 神様は気付いてくれない

だから私はこれから幸せしかやってこないのよ
もうね 大変なことになってしまうわよ これからの私は

台詞がまぶしく躍動している!最後に、音楽が流れ続ける『ひよっこ』であるから、この国が誇る最高のポップミュージックの名曲を重ねてしまおう。

Hey Hey Hey Girl
仕事だから とりあえずがんばりましょう
Hey Hey Hey Boy
空は青い 僕らはみんな生きている

Hey Hey Hey Girl
いつの日にか 幸せを勝ちとりましょう
Hey Hey Hey Boy
かっこわるい 毎日をがんばりましょう


SMAP「がんばりましょう」


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星野源さん、”人見知り”を斬る

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人見知りだって言っちゃうことは、相手に僕人見知りなんで、なんか気を使って下さいって言ってるのと一緒だなって。それってすごい失礼だなと思って、失礼だし、何様なんだって思ったんです、自分が。だから、嫌われてもいいやって段々思えるようになってきて

星野源さん、テレビ放送で”人見知り”を斬る。2年くらい前にも雑誌で同様のことを書いていていた気がする。その時は確かもっと過激で、「人見知りなんです」と相手に言うのは、傷つかない為の予防線でしかない、オレもやめたから、早くお前らもやめろ、というような論調だった。今回は「これはあくまで僕の場合はですよ」と前置きをし、あくまで批判する対象を過去の”自分”に定めているのだけど、それこそただの予防線であり、建前でしかない。本心は、全国の”人見知り”に対して、「お前ら考え改めろよ」と言ってくださっているのだ。黙ってはいられないではないか。


「人見知りなんです」という言葉は、果たしてただの予防線だろうか。話が盛り上がらなかった時の相手への「あなたが悪いのではなく、私のコミュニケーションスキルのなさのせいなので、気にしないでください」という気づかいでもあるはず。いつも何歩か先の結果に頭を働かせる。*1こういった気づかいの側面をして、タモリは「この世界(芸能界)で成功するのは人見知りだけ」という言葉を残している。そもそも、「人見知りなんです」という前置きが予防線になるだろうか。ただの敗北宣言でしかないはず。それでもその言葉を言わずにはいられない人だっているのだ。もちろん、星野源が言っていることは半分以上が正論である。”人見知り”なんていうレッテルを自分に貼り付けてしまうのは、可能性を狭める行為でしかない。「人見知りなんです」という前置きが似つかわしくない年齢というのもある。心の扉の鍵は常にオープンに?そんなものしておいたほうがいいに決まっている。だが、「嫌われてもいいや」と強い気持ちで相手に立ち向かえるほど人はみな強くはない。星野源がそう思えるのは、着実にステップアップしていく自分があるからだろう。星野源という男はとても魅力的な男だ。一見しただけではわからない奥まった魅力や才能が詰まっている。そして、その事実は知れ渡っている。周りの人間のみならず、今や日本全国民に、と言っていいだろう。いや、それコミュニケーションのハードルむちゃくちゃ下がってますよ。誰とでもフラットに接せるでしょうよ。仮に彼が今回の人見知り否定を発するべきタイミングは、aikoと熱愛フライデーされ、一般人と間違われて目線にモザイクを入れられていた、あの頃だった。つまり言いたいのは、「こんなものはただの声の大きい奴の言葉だ、耳を傾ける必要はない」ということである。名も無き私たちは、誰かと繋がらん為に、その魅力を何とか相手に伝えようといつだって必死なのだ。その必死さの中で、嫌われたくがないゆえに「すいません、人見知りなんで」という言葉を使う機会もあるだろう。そういった”必死さ”は絶対にチャーミングで、誰かの心を捉えるはず。安心して、みっともなくもがけばいいと思う。であるから、星野が言うように、人見知りだけどがんばってコミュニケーションしていく様だってもちろんチャーミング。*2しかし、それができるようになったからと言って、「人見知り」を否定する必要なんてまったくないと思うのだ。

*1:星野の「失礼だし、何様なんだ」という発想も数歩先を見据えた考えではある

*2:上の画像の舌を出してはにかむ源ちゃんもかわいいよ

最近のこと(2017/04/28~)

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GW中にジョナサン・デミの訃報が。『レイチェルの結婚』の煌めきは永遠であるし、何と言ってもNEW ORDER「Perfect Kiss」である。好きなバンドのとびきりに大好きな曲。高校時代から「死にたい」が口癖の友人がいて、彼が「葬式ではこの曲をかけて欲しい」といつも言っていたのがこの「Perfect Kiss」だった。完璧なキスと死。深そうで全然深くないし、お葬式の意味をはき違えていると思うのだけど、えてして童貞というのはそういうものだ。変わったやつだった。McCartneyの「Ob-La-Di, Ob-La-Da」を世界で1番好きな曲と公言していて、私はそのエピソードが妙に好きで、彼を知らない人にもむやみやたらとその話を喋り散らしていた。その話を聞いたことがある人はテレビや街中で「Ob-La-Di, Ob-La-Da」が流れると「あ、あの人が世界で1番好きだった曲じゃん」と思うという。それくらい「Ob-La-Di, Ob-La-Daが世界で1番好きな曲」というのは、何かこう”変”なのだろう。大学生の時、そいつに友達の女の子を紹介してあげることになり、渋谷で待ち合せたのだけど、彼は底に気色の悪い突起が無数についたゴム製の靴を履いて現れた。しかも、色はヴィヴィッドオレンジ。少し苛立ちながら、「何のつもりなの、それ?」と聞くと、「海を歩く時、珊瑚を傷つけない為の靴なんだ」って言っていて、すごくおもしろかった。あれから10年以上の時が経ったけども、今でも「Perfect Kiss」や「Ob-La-Di, Ob-La-Da」を聞くと、彼のことを思い出してしまう。そんな奇妙な男がどうなったかというと、実はまだ生きているのです(唐突な、つげ義春『李さん一家』へのオマージュ)。PS.彼はポールのライブに行き、無事「Ob-La-Di, Ob-La-Da」を生で聞くことができたそうです。いい話ですね。後、その時紹介した女の子には今でも超嫌われています。



9連休というわけにはいかなかったのだけども、カレンダー通りにGWを過ごすことができました。特に何をしたというでもなく過ぎ去ってしまって、もう3日目くらいから終わりを予感してずっとブルーな気持ちに包まれてしまい、GWというのは人生そのもの過ぎるのでは、という見解に至った。GWに突入する前夜は街全体が高揚しているような気配があって、なんだかワクワクしてしまった。まぁ、こんなものは当然その時の精神状態に大きく左右されるので、そんな街の喧騒に「うるせぇ、ボケ」と悪態をつく日だってもちろんある。そういう気持ちはブログからも零れて落ちて、一体どこに行ってしまうのだろう。
youtu.be
この日公開された柴田聡子の「後悔」という新曲がすんごく良くて、今年1番いい曲なんじゃないかしらというくらい良くて、MVも良くて、「この車から顔出すやつやろうじゃないか」という気持ちになったので、友達に車を出してもらった。ときにceroの「武蔵野クルーズエキゾチカ」という曲の

それよりさぁ今週の日曜、暇? また車 乗せてよ

というリリックはすっごくいいよな。2011年という時代に『武蔵野クルーズエキゾチカ/good life』という軽やかな7インチを聞くことができたのは、本当に救われた気持ちだった。ドライブの途中でファミマのチョコミントフラッペを飲んで、秩父あたりまで飛ばして(運転してないけど)、真っ暗な中で芝桜の気配をそこはかとなく感じながらも、それよりなにより星が綺麗でした。せっかくなので、真夜中だけども宝登山を少しだけ登った、コッペパンを食べながら。ファミマのコッペパン(あんマーガリン)が美味いと豪語したばかりなのですが、食べ比べてみたところ、どうやらセブンのコッペパンのほうが美味しい。餡子の力量に差が出た結果である。車の中で曽我部恵一の『strawberry』(2004)というアルバムを聞いたのだけども、これがもうむちゃんこよかった。

STRAWBERRY

STRAWBERRY

「LOVE-SICK」「STARS」「ミュージック!」の怒涛のラスト3曲に涙。しかし、これがもう13年前のリリースとか気絶しちゃいそうな感じだ。『JAPAN』のレビューに「音質がもっと良ければなぁ」みたいなことが書かれていて、心底バカにした記憶があるわたしのスウィースウィーナインティーンブルース。



土曜日。昨日はしゃぎ過ぎてしまし、一日中眠い。とりあえず洗濯だけは済ませて、あとは寝そべって過ごした。どうしてもコーラが飲みたくなって、コンビ二に買いに出かけたくらい。おじいさんが2つのカゴがいっぱいになるまでコーラの1.5ℓペットボトルを買い占めていて、おじいさんでもコーラを常飲したりするのだな、と感心した。もしかたらじじいとばばあが一同に介すファンキーなピザパーティーの予定があるのかもしれないし、そっちのほうが断然素敵な考えに思えた。
youtu.be
CHAIの「sayonara complex」という曲はMVも含めて本当に最高だ。メンバーはCSSロールモデルにしているらしい。CSSの1stアルバムむちゃくちゃ聞いていた。Let's Make Love and Listen to Death from Above!
youtu.be
ボーカルのLovefoxxxに憧れていて、一時期、mixiのトップアイコンにしていたくらい好きでした。


日曜日。アップルストアに行くついでに、表参道の銭湯「清水湯」へ。前回は整理券を発行するほど混んでいたが、今回はすんなり入れた。賑わってはいたけど。スタイリッシュで小奇麗な内装、サウナも水風呂も特筆すべきほどではないが、なかなかのコンディションで、バッチリととのう。銭湯を出て、大きな通りで通行人にたびたび話しかけられているおじいさんがいて、おそらくだけども、小澤征爾だった。小柄で赤いフライトジャケットのようなものを崩して着ていて、しかも「僕はねぇ、イタリアのフィレンツェで」と喋っているのが聞こえたので、ほぼ間違いないだろう。道行く人はみな一様に「(日本に)いるんだ~」と言っていた。同感です。



月曜日。2日働いたら休みだと思うと仕事にも精が出る。はずもなく、「休みでいいじゃないか」という気持ちでパンパンになって弾けた。火曜日。井の頭公園でロロが野外演劇をやるというので駆け付けたかったのだけども、休み前の業務で忙しく断念。むちゃくちゃ観たかった!!そもそも、瀬田なつきの『PARKS パークス』を観ていない。予告編の限りだとあまり関心を抱けないというか、違和感すら覚えたのだけども、実際のところどうなのだろう。最近、映画館に行くのがとにかく億劫で困っている。『美女と野獣』も観たい。GW中に観た映画は、amazonプライムで『ドラえもん のび太とブリキの迷宮』の1本のみです。



火曜日。いざ、GW突入。朝のリアルタイムで『ひよっこ』が観られることに感激。お風呂に入りながら聞く『スチャダラ外伝』がご機嫌だった。

スチャダラ外伝

スチャダラ外伝

「手へんにガンダム」んーいいでしょう!昼前に東北沢に出掛けて、気になっていたインド料理屋でランチにチキンビリヤニを食べる。本格派だったが、やや旨味に欠ける印象。天気が凄く良いでの、下北沢まで散歩する。街を歩いていて、下北沢にタワーレコードができるらしいことを知る。ファッキューだなぁ。タワレコはもはやK-POPとかアイドルとか星野源のCDを売る場所でしかないので、そこいらの駅ビルとかに勝手にどんどん作っていけばいいと思うのだけども、下北沢であったり中野であったり、多少なりともカルチャーが根付いている街にはいらない。シェルターの前にある劇場でまんじゅう大帝国とXX CLUBの合同ライブを観た。タイタン所属の若手漫才師2組が3本ずつネタを披露して、合間に企画。初めて観たXX CLUBは発声が素敵だった。まんじゅう大帝国が2本目に披露したコント「風邪」がクラシック感のある新作落語みたいで感激。3本目の漫才「登山」がまた飛び跳ねるほど素晴らしい。「醤油の甘さで~」のくだりは、拍手が巻き起こるくらいの決まり方だったな。東大卒のXX CLUBは太田光代社長に激ハマりしているらしいが、まんじゅう大帝国は「私は獲りたくなかった」と深夜にツイートされるほどハマっていないらしい。渋谷に寄ってTSUTAYA山田太一のテレビドラマ『早春スケッチブック』を一気借りして帰宅。
早春スケッチブック DVD-BOX

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GW中に少しずつ観ていったのだけども、ほんとにもう感銘を受けてしまった。山崎努ももちろん素晴らしいが、何と言っても河原崎長一郎だ。あれぞ、小市民の良心。息子役の鶴見辰吾も抜群で、彼は『3年B組金八先生 第1シリーズ』『早春スケッチブック』『翔んだカップル』という大傑作を3つもものにしているのだから、もっと名優扱いされてもいいのでは。



さて、GWのすべての日を振り返るつもりだったが、完全にめんどうくさなってしまったので放棄します。埼玉県を中心にサウナを攻めていて、この休みは「新座温泉」と「草加健康センター」に訪れた。「草加健康センター」に関しては別エントリーでじっくり書いてあるので、そちらをお読みください。
hiko1985.hatenablog.com
「新座温泉」も温泉と水風呂がなかなか良くて、リピありです。ちなみに「リピありです」というのは、化粧品の口コミサイト『@cosme』において多用されている文法へのオマージュです。「新座温泉」のあたりは学生時代の思い出がいっぱいで、川越街道のファミレスとかショッピングセンターの佇まいを目にするだけでこみ上げてくるものがあった。久しぶりに、朝霞が日本に誇る名店「いち川」でとんかつを食べようと思ったのだけども、お休み。仕方ないので、近くで発見した「ホープ」という小汚いとんかつ屋に入ってみたら、これが意外にも(失礼)結構美味しかったので満足。
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衣剥がれるし、肉の旨味も僅かだけども、それでも"とんかつ"としての良さは失われていない。味噌汁とサラダが美味しいのも好感でした。


亀田興毅の1000万円のやつに途中で飽きてしまい、せっかくabemaTVをつけたので、開局1周年記念特番の『ロンドンハーツ』を観てみたら、モグライダーのともしげ君がドッキリにかかっていた。ライブでのおもしろさそのままにロンハーに染まっていて、すごくうれしくなってしまった。芝さんもかっこよかった。芝大輔という才能がこのままライブシーンの大将で終わっていくのは損失が大きすぎるので、早く発見されて欲しい。ナタリーに掲載されていたランジャタイ×マッハスピード剛速球の「戦略会議」で、馬鹿よ貴方の新道さんが紹介していたカズレーザーメイプル超合金)の挿話にグッときてしまった。

メイプル超合金カズレーザーが「俺らはモグライダーが売れるの待ちなんですよ」っていう名言を残してるんだよね。モグライダーの芝くんはめちゃくちゃMCできるし面白いしカッコいいし柔軟性もある。カズレーザー曰く「M-1の決勝に1回でも行ったらすぐレギュラー決まる。メイプル超合金が霞むくらいにめちゃくちゃ売れるだろう。だから今はモグライダー冠番組を持ってそれに呼ばれるのを待ってる状況」って。


最近聞いている2枚。

Pure Comedy

Pure Comedy

THIS OLD DOG

THIS OLD DOG

Mac DeMarcoは無条件で大好き。なんていい曲ばかり書くのだろう。
youtu.be
スーパーミラクルいいじゃないか。あと、シャムキャッツのニューアルバムのタイトルが『FRIENDS AGAIN』なの、すっごいグッときました!夏目くんが"ちなヤク"(ちなみにヤクルトファン)と聞いて、なおいっそう贔屓にしていきたいバンドになりました。