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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ナカゴー『ベネディクトたち』

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超人ベネディクトとその周辺の人々との摩擦の話で60分。ちょっとどうかしているほどにおもしろい。物語の話法にしろ、ぶち込まれるギャグの発想・発話にしろ、他の何ものにも似ていない”笑い”がここにある。というよりも、あらゆる笑いの文法がパッチワークでまとめあげられている。鋭いセンスの言葉の応酬もあれば、フィジカルを使った一発ギャグもあるし、演劇の構造を逆手にとったようなメタ視線のギャグもある。更に、時事ネタ、芸能人ネタ、差別ネタ、あるあるネタに何でもござれだ。技のデパートである。鎌田順也は”人間のおもしろさ”の貪欲な観察者だ。


ただし、下品で粗野でノイジ―で、圧倒的にバカバカしい。そういうものに苦手意識がある方にはオススメしない。しかし、ナカゴー鎌田順也はそのくだらない笑いでもって、この現実に蔓延するダーティな側面を的確に作劇に落とし込む。小さなコミュニティの崩壊を描くことで、”社会”というものを見事に描き切っているし、神話というのはこういう風に成り立っていったんじゃないか、というようなハッタリ感もある。ナカゴーはバカ演劇、というイメージが強いが、私の中ではこれでもかというほどに社会派劇団だ。人と超人は、いや人と人は、どこまでもとことん、わかりあえない。その滑稽さを笑い飛ばそう。


ナカゴーは再演の多い劇団だが、その中でもこの『ベネディクトたち』は(おそらく)1番多く上演されている代表作だ。今回は2010年の初演時のメンバーが集結という事で、篠原正明、髙畑遊、日野早希子、鈴木潤子という劇団が誇るスター役者が揃い踏み。篠原正明が『ゴッドタン』やEテレ『シャキーン!』などで活躍目覚ましいわけですが、ナカゴーが凄いのは、彼のワンマン劇団じゃない所だろう。全員が全員同等の凄味がある。そして、コンラッド役は板橋駿谷(ロロ)だ。1枚画としての強烈さが増し増し。半裸ブリーフのマッチョ2人が、ファンタグレープとファンタオレンジの置かれたテーブルを囲んでいる、その導入の画力の強さ。絶対面白い演劇が始まるに決まっているのだ。ぜひとも劇場に駆けつけたし。