青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

Enjoy Music Club 『よろしくね』

youtu.be
Enjoy Music Clubが昨年リリースしたデビューアルバム『FOREVER』はすでにチェックして頂いている事かと思いますが、あのアルバムのトレイ下にボーナストラックをDLできるアドレスとコードが記載されているのをご存じでしたでしょうか。私は知りませんでした。リリースからもう半年もたっているというのに!そのあまりの気づかれなさに、EMC側もしびれをきらし、ついに一般公開されたその幻の楽曲「よろしくね」が↑の動画。この素晴らしさときたらどうだろう。「申し訳ありませんでした!」と叫びながら、慌ててトレイをこじ開け、DLする次第です(i-tunes等に落とすと、自動でアルバムの13曲目に収まる仕様。そのさりげない気遣いが最高だ)。リリックの内容は、結成からアルバム制作期を振り返る、『まんが道』ならぬ、汗と涙の「EMCのラップ道」である。

週末 たまに 集まって
ラップ 作った ここ3年
「なんかしよう」ってはじまった
素人だけで 見切り発車
向いてる 向いてない は二の次 三の次
冗談半分 で書く乱文
やらないよりか マシな3分
キック!スネア!乗せるラップ!

素晴らしい。暇を持て余した若者の「なんかしよう」というノリで始まったラップごっこが、これほどの強度を合わせ持ったポップソングとて実を結び、果てにはさまぁ~ずの番組のエンディングテーマとして茶の間に流れてしまう。

なんかやってりゃ なんかあるぽい

まさにポップカルチャードリーム。夢のような話ではあるけども、この緩さどこまでも等身大。聞く者全てが「とにかく”なんか”を始めよう」と心に熱いものを灯すに違いないのです。



さて、この「よろしくね」ですが、公式アカウントがTwitterでつぶやいた

EMCなりのSMAPテイスト若者たちです

という言葉に偽りなし。J-POPの黄金期、と断言してしまいたい90年代前半を彩ったSMAPの楽曲、あの思わず目を伏せてしまうような眩しさが見事にトレースされております。あの節回しとコード感。これを聞いて「うお、SMAP(涙)」となる人だけが友達なのだ。「若者たち」と言えば、ザ・ブロード・サイド・フォーGOING STEADYもありますが、やはりサニーデイ・サービスだろう。「若者たち」の

ぼくらはと言えば遠くを眺めていた
陽だまりに座り 若さをもてあそび ずっと泣いていた

もしくは「青春狂走曲」の

こっちはこうさ どうにもならんよ 
今んとこはまぁ そんな感じなんだ

といったラインは、寸分の狂いもなく若者の気分を捉えているように思えるが、EMCは大胆にもこう書き換える。

僕らと言えば 相も変わらず
コンビニ行って テレビ見てるよ
新しい曲も作るよ そのうちね
あの娘と言えば SNSも更新しなくて
何やってんだろう?
新しい曲が出来たら よろしくね

これぞ、インターネット以降の若者の気分なのでは。現代においてSNSとコンビニとテレビが出てこない青春ソングなんて全部ウソなんじゃ。「そのうちね」「よろしくね」なんて言い続けている内に、歳を重ねてしまう人もいるだろう(話私とか)。でも、「ENJOY 音楽は鳴り続ける」*1なのだ。



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*1:うれしいこと(?)にnobodyknows+はまだ活動を続けているらしい