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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

Enjoy Music Club『FOREVER』

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こんなにもわかってしまっていいのだろうか、と戸惑ってしまう。Enjoy Music Clubの1stアルバム『FOREVER』の話である。例えば、トラックの大胆過ぎるネタ使い。特に、硬派なヒップホップリスナーの眉を一発でひそめてしまうであろう冒頭のシェリル・リンと松本伊代のサンプリング2連発は何度聞いても腰を抜かします。そのまま切って、貼っただけ。「センチメンタルジャーニー」に関しては筒美京平に許可を頂いているというから驚きだ。これがヒップホップの初期衝動ってやつでしょうか。もう、こうなってくると「ママ、これ面白いから聞いてみ?」とか言って伊代ちゃんと踊っているヒロミの様子まで浮かんできちゃったりして。凄くピースフルですね。話が逸れました。リリックもまた、あまりにわかってしまうのです。中央線界隈のスメルが香り立つ生活感、ポップカルチャーへの造詣に富んだ固有名詞やオマージュ、もしくはそこに漂うフィーリング。「わかる!わかるよ!Enjoy Music Club」という感じ。勿論、これがわかりすぎるほどにわかってしまうのはナード寄りのインドア型文化系というクラスタに属するものに限られるのかもしれませんが。とは言え、スチャダラパーの往年の名曲「サマージャム‘95」における

クラブだね 妥当な線として 夏!! クラブ!! ナンパ!! 思い出!!

の妥当性は理解できなくても、今作収録「エンジョイクラブソング」の「俺なんかがクラブに行っても、場違いなんじゃないだろうか」というフィーリングには思わずワーンと抱きつきたくなってしまう、なんて人は私も含め少なくないのでは。

youtu.be
パーっと遊びに出掛けたいのだけど、どうにも決心がつかず、気づいたらいつもの松屋で飯を済ませて(ビビン丼!)、TSUTAYAで新作のDVD4本借りちゃったんで、「こりゃ徹夜だな」てな感じの、冴えなくて愛おしい金曜日の夜をこれまで誰が描写してきただろうか。これはもう”僕の歌は君の歌”というやつで、その点だけでもEnjoy Music Clubは紛れもなくポップミュージックという事なのです。更に同曲での、気になる女の子からの「PUNPEE出るよ?」というお誘いのメールで、ついぞクラブに足を運ぶも、結局女の子には声をかけられず、その後悔をラップにしてSound Cloudに公開だ、なんて展開には2010年代のこの国のユースカルチャーのある側面を完璧に描き切っているのでは!という大袈裟な感嘆が思わず漏れてしまいます。いや、ほんとサリンジャーの短編1本読んだくらいの気持ちですよ。



仮にあなたがこういったフィーリングを一切理解できないとしても問題はありません。クラブ文化を理解しない私が「サマージャム‘95」を愛するように、Enjoy Music Clubを愛す事ができるでしょう。なぜならば、Enjoy Music Clubの本質はどこまでもグッドミュージックであるという所にあるからです。リズムや音色には何ら革新性もないが、底抜けにキャッチーなメロディーラインを有している。また、ポップミュージックファンにとっての何よりの発見は、そのメロディーを歌い上げるE(江本佑介)のボーカルではないだろうか。少し鼻にかかったような少年性を宿したあどけないボーカル。小沢健二、と言うよりは口ロロの三浦康嗣を想起した。なるほどたしかに、口ロロの『FANFARE』

FANFARE

FANFARE

のギュッと濃縮されたポップネスが、このEnjoy Music Club『FOREVER』の質感に近しいようにも想います。



中川理沙(ザ・なつやすみバンド)、Homecomings、森雄大neco眠る)、PR0P0SE、思い出野郎Aチームといったゲスト陣は、昨今の充実したこの国のインディーポップに対するラップでの回答、といった感じでいくらなんでも抜かりないのだが、計算高さを感じさせないのは、本当に好きな人達を呼んでいるからなのでしょう。ザ・なつやすみバンドの中川さんをゲストボーカルに招いて、夏の楽曲ではなく、アルバムにおいてとびきりセンチメンタルな「ナイトランデブー」に起用する感じが最高なのだ。Enjoy Music Clubは我々ポップカルチャー愛好家の代表であり、だからこそ圧倒的にオリジナルなクリエイターなのだ。オススメ。



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