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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ayU tokiO『新たなる解』

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大傑作です!!!2014年に発表されたEP『恋する団地』の衝撃を更新する、ayU tokiO待望の1stアルバム。ayU tokiOというアーティストのこれまでの来歴に関してはネットで検索するか、下記エントリーを参照下さい。
hiko1985.hatenablog.com
今回はこの『新たなる解』の素晴らしさに言葉を費やしたい。プログレッシブな展開を併せ持った類稀なるメロメディメイカーの資質に多彩なアイデアが混ざり合い、混沌としたままに洗練された捻くれポップミュージックが誕生した。
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そのパッチワークの手つきには小沢健二がハンカチを噛みくやしがる。レトロフューチャーとでも言おうかタイムレスな音響へのこだわり、大瀧詠一とカート・ベッチャ―、ブライアン・ウィルソン*1が空の上から笑みを投げるコーラスワークの充実、呼吸をするようにメロディに溶け込むストリングスアレンジと歌心に溢れるリズム隊の躍動。そして60年代A&Mレコードのソフトロックのような絢爛のメロディの後ろで、70~80年代邦楽のようなリバーブで、インディーロックなギターが鳴っているこのストレンジさ。


そして、ayU tokiOの音楽はたまらなくロマンティックなのだ。彼の音楽を聴いた際に抱く甘美な感情を言葉で説明するのであれば、本人の口からも度々発言されている「夕暮れ時のアニメの再放送」というのがどうにもピッタリふさわしいように思う。僕らはアニメのエンディングソングを聞きながら1日の終わりと恋や冒険を一緒くたに想い、甘く胸を痛めていたのだ。とにもかくにも、記憶に絡みつく強度を持った音楽という事である。音楽がファストフードのように使い捨て消費されるような現代において、ayU tokiOは生活と音楽の関係性に再びロマンティックな灯をともす。


優れたボーカルアルバムとしての側面、元winnersのやなぎさわまちこ(aka MAX)の奏でるピアノポップとしての側面、「夜を照らせ」のビックバンド風インストアレンジ(ayU tokiOの担当はlistenとHeartだ!!)などなど、言及すべきポイントは他にも尽きないわけだが、今回は”渋谷系”というタームからこのアルバムを紐解きたいと思う。前述の『恋する団地』リリース時の当ブログエントリーにおいて「ayU tokiOが参照としているのは”渋谷系”ではない」という風に書いているのだけど、どうやら訂正の必要がありそう。彼は引き受けようとしている、”渋谷系”と呼ばれた音楽がかつて持ち合わせていたインディペンデント精神を、そして、選択と編集の美学を。『新たなる解』リリースで形成されたayU tokiOのピープルツリーをザッと眺めてみるだけでもそれは明白だろう。コーラスで数曲、辻睦詞と中央電化ドクターが参加している。辻睦詞と言えば、1990年代に志半ばで解散したサンシャインポップバンド詩人の血もしくはoh!penelopeの中心人物。『新たなる解』のソフトロック基調の万華鏡ポップは彼が残した傑作アルバムのムードを継承していると言えるだろう。*2

花と夢

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Milk&Cookies

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現在、渋谷系という文脈を語る際に、必ずや無視される詩人の血を最大の隠し味にする抜群の嗅覚。現在、ayU tokiOは辻睦詞と中央電化ドクターのライブに参加したり、自身のライブで詩人の血の楽曲をカバーするなどして親交を深めているようだ。更に、目を見張るのはカジヒデキとの対談やライブ共演、更にカジヒデキと元ピチカート・ファイヴ野宮真貴による『渋谷のラジオの渋谷系』へNEIL&IRAIZA堀江博久と共にゲスト出演。MVも制作されたリード楽曲「米農家の娘」
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では松田岳二NEIL&IRAIZACUBISMO GRAFICO)の寵愛を受ける、櫛引彩香やKONCOSがボーカルで参加。また、今作の全てのドラムを担当しているのはNORTHERN BRIGHTの原"GEN"秀樹である。書いていても驚いてしまうほどにどこまでも渋谷系だ。渋谷系・・・その言葉にアレルギーを持つ人も少なくはないだろう。ブーム終息後もなお、高品質な国産ポップミュージックを評する名称として威厳を放っていたワードですが、2005年の若杉公徳デトロイト・メタル・シティ』あたりを契機に、その”オシャレさ”が揶揄の対象に成り下がった印象がある。*3ここ数年では食傷気味になるまでにアイドルや声優の音楽がこぞってポスト渋谷系と称され(勿論、名作は多々ある)、果てには「渋谷系は過大評価だった」と評されるようにまでなってしまった。一方で、野宮真貴による『渋谷系スタンダード化計画』など、地位復権の動きも見られる。『渋谷系スタンダード化計画』のライブでは渋谷系楽曲、そのルーツであるバート・バカラックロジャー・ニコルズ、更にははっぴいえんど関連として松田聖子などのアイドル歌謡も取り上げているらしい。なるほど、点で観た際の渋谷系は確かにささやかなムーブメントであったかもしれないが、線で観測した場合、古今東西のポップミュージックを接続させたという、その功績はあまりに大きい。音楽のジャンルや時代をクロスオーバーさせるDJ感覚を、日本語ポップスの歴史に持ち込んだ。『渋谷系スタンダード化計画』は正直、回顧主義のようにしか感じられないが、ayU tokiOはそのクロスオーバー感覚に最大の敬意を表し、現在進行形の表現として渋谷系を鳴らす。そこでayU tokiOが『新たなる解』のレコーディングエンジニアに起用したのが森達彦だ。
Mike Always Diary

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Cherish Our Love

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カヒミ・カリィラヴ・タンバリンズのエンジニアを担当したTRUMPET TRUMPET Label(ESCALATOR RECORDSの前身)やCRUE-L RECORDSを支えた宇田川町の生き字引。そして、面白いのが森氏のもう1つの側面、シンセサイザープログラマーとしての実績だろう。おニャン子クラブ渡辺満里奈、斎藤由貴、南野陽子松本伊代薬師丸ひろ子など、80年代アイドルソングがズラリ(更にはKANや安全地帯、CHAGE and ASKAそれも「SAY YES」だ!!!なども森達彦ワークスには名を連ねている)。まさにayU tokiOがかねてより指標していた音像と一致しており、その両側面をして、今作のエンジニアにこの上ない適任と言える。ayU tokiO渋谷系が育てた選択と編集の美学を受け継ぎ、連綿と続く音楽の歴史を爪弾きながら、新たなる”J-POP”をリクリエーションしようとしているのかもしれない。

*1:生きています、2016初夏

*2:oh!penelopeの1stアルバムはレアの為、価格が高騰しており残念ながら未聴。

*3:元々揶揄の意図を込められた呼称という説もある。