青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

スケラッコ『磯辺チクワちゃんのお話』

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かねてよりスケラッコ『しょうゆさしのなんとなクッキング』の大ファンなのですが、ついに自費出版のオリジナル漫画本をゲットする事ができました。これは大変うれしい事なのです。『しょうゆさしのなんとなクッキング』で紹介される料理はその絵の素晴らしさも相まってどれも本当に美味しそう。料理の技術が皆無の私も、「まるちゃん焼きそば」に天かすと卵と海苔を合えるといといった簡単レシピに挑戦して舌堤を打つなどしております。しかし、ただのグルメ漫画家ではないのだ。スケラッコ先生を知らないという方のために少々解説を。京都在住のイラストレーター&漫画家さん。その作品は超かわいくて、ハイセンス。シールやTシャツなどのグッズも大変な人気でして、特にUDONティシャツに天ぷらのブローチをトッピングするというコーディネイトのクールさたるや、「こういうのが似合う女子に生まれ変わりたい!」とハンケチを噛み締めてしまう事必至であります。とにもかくにも、知っている人からは「何を今さら」という感じでしょうが、声を大にしてオススメしたい、今、最も感度の高い注目アーティストなのです。ちなみに私の大好きなグルメ漫画『しょうゆさしのなんとなクッキング』はスケラッコ先生のHPもしくはブログ、Twitterなどで読めます。トーチwebで連載中の本格長編漫画『盆の国』も単行本発売のおりには新たな才能として称賛を浴びる事間違いなしの意欲作です。
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さて、今回購入したオリジナル漫画本は3冊。新聞連載の長寿漫画のようなクラシック感すら漂う『にぬき・ビール・デマエ おまちどう!!』、趣味に走りまくった『京都・大阪BONDANCE』も大変味わい深い作品でしたが、やはりまずは『磯辺チクワちゃんのお話』を推したい。これがもう、本当にすんんんんんばらしいのだ。ごく平凡な女の子である磯辺チクワちゃんの26歳までの半生を、四コマ、イラスト、2ページ漫画などのフォーマットを駆使しながら紡ぐ、自伝もしくはアルバム帳のような作品。本当に普通の出来事しか紡がれていないのですが、読後感は映画1本分に匹敵致します。少し内気な女の子の愛と冒険の日々。小学校の体育館で観た戦争映画のトラウマや、新社会人生活の直前に巻き起った3.11、といったエピソードの挿入が効いていて、どこにでもある当たり前の普通、それがいかに”かけがえのないもので”あるか。そういったシンプルな感想に尽きるわけだが、いやはや、言葉にしてしまうとなんと凡庸な事か。そんなありきたりの言葉でこの作品の豊かさを片づけてしまうのはもったいない。例えば、赤ちゃんの頃は物をギューっと握るのが好きだったこと、土曜日のお昼は焼きそばを食べることが多かったこと、初めての恋人に「自転車に乗るのが上手だね」と褒められたこと。
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もしくは「大学生ぽいな」と思いながら仲間と眺める星空(とラーメン)。こういった瞬間の切り取り方(もしくは貼り付け方)をセンスと呼ばすに何と呼ぼう。あえて呼ぶなら”優しさ”だろうか。日々と慈しむ優しいまなざしが、言葉にならない日々の連なりを肯定しれくれます。いやーもう本当に素晴らしい。一部書店、もしくはHPからの通販でも購入可能との事ですので、どうぞマストチェックでお願い致します。