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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

五反田団『新年工場見学会2016』

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『新年工場見学会2016』をアトリエヘリコプターで鑑賞。もはや慣例行事となっていて、これを観ないと新年を迎えた気がしない。五反田団とハイバイという二大人気劇団の周辺の面々で織りなす劇あり歌あり伝統芸能ありの一大娯楽イベント。未見の方が必ずやモヤっとするであろう「工場見学会」という名称ですが、主催地であるアトリエヘリコプター(前田司朗の実家でもある)が元工場だったからであって、実際に見学して回るわけではないのでご安心下さい。


五反田団の『スタア☆ウォーズのニセモノ』はタイトル通り『スター・ウォーズ』のパロディーでして、アナクロなアイデアや小道具が現実をバカバカしくSFに飛躍させていく。”ごっこ遊び”という演劇の本質が炙り出され、万能感に満ちておりました。やはり秀逸なのは“ローファイポップ”とでも評したい、あえて稚拙さを織り交ぜる脱臼した演技メソッド。発声の強弱、アドリブ感、誘い笑い演技など、崩れているようで、実は緻密に計算されたものなのだろう。そして、ハン・ソロとチューバッカ最高。木引レイア姫かわいい。しかし、気になってしまうのは、マイノリティーを笑いの題材に選んでしまう無邪気さで、悪意がないのはわかっていても、どうしてもノイズとして響いてしまい笑いづらかった。時代の空気には敏感でいて欲しい。


ハイバイごっちん娘』は昨年度の『RPG演劇「エンド・オブ・ワールド」』に続き傑作。田村健太郎は岩井作品のミューズだ。常識はずれに強靭な肉体に生まれついてしまった小学生の女の子のお話。複雑に絡まり合った自意識の葛藤を作劇として展開させる岩井秀人の手法が冴えわたっている。他愛のない恋心を巡る醜い嫉妬心やドロっとした性欲。「私は化け物なのではないか?」と怯えるあの思春期の苦しみが、笑いと涙の表裏をクルクルと回りながら描かれる。これは岩井版『町でうわさの天狗の子
hiko1985.hatenablog.com
ではありませんか。役者陣も素晴らしい。前述の田村健太郎は様々な声色で魅せまくるし、ダメな父親役をやらせると何故か抜群にセクシーな岩瀬亮の人たらし感も良い。五反田団宮本武蔵』や岩井秀人『ヒッキー・ソトニデテミターノ』でのあまりにキュートな好演にノックアウトされた岸井ゆきのも出演。最近では『SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜』『友だちのパパが好き』といった話題作への出演で飛ぶ鳥を落とす勢い。全身からオーラが出ている感じでした。


音楽担当はザ・プーチンズである。昨年リリースされた2ndアルバムからのリード曲「ナニコレ」の吹っ切れ方。
youtu.beyoutu.be
ネクストステージに突入している。マチオさんのソングライティングもマチコさんのテルミン奏法にしても、どこへ出しても恥ずかしくない一流のものであるにも関わらず、どこへ出しても恥ずかしい感じにその才能を出力しているのが、とてもかっこいいと思います。公演のラストを飾るのは、偉大なるマンネリ、反体制パンクソング「ポリスキル」です。やはりこれを聴く為にここに来ているのだ、と思わせてくれるブルースがあります。内田慈の声は本当に素晴らしい。しかし、15キロ減量してしまった黒田大輔はややパワーダウン。太っている方がいいのになー。


前田司朗も岩井秀人も岸田國士戯曲賞向田邦子賞をW受賞、映画や舞台などの大きな仕事が続く中で、この『新年工場見学会』を息抜きの場と捉え、原点を見つめ直しているらしい。有名作品のパロディーやアナクロな美術や装置といったチープさの中で、作家としての本質が浮かび上がる。休憩も含めて3時間半越えの長丁場、狭いし暑いし辛い。しかし、天才2人のそんなものが目撃できるというのであれば、どうしても毎年通ってしまう。それが『新年工場見学会』なのだ。